2009 / 11
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(物語)
◆ 横柄で高飛車な神(ジン)こと「カミサマ」が立ち上げた、本気で空を飛ぶことをめざす
中学生の部活動「飛行クラブ」。
異質で突飛にみえるクラブ。
一年生の海月は、幼馴染の樹絵里の恋の邪心につきあって、怪しげな部活動に
足を踏み入れることに…。
そこに集まってくる癖のある面々…。
さてさて、空を飛べる日は来るのか?

(感想)
◆ 「ささら さや」「レイン・レインボウ」など印象的な作品で楽しませてくれる
大好きで、いつも気になる作家・加納さんの新作。

幸せな読書体験だった。
こんな作品を書きたかった作家と、こんな作品を読みたかった読者のボクのタイミングがぴったり!
とにかく笑える青春ドラマだった。
解説しないけれど、こんなセリフがあって大笑いだった。

「ゴキブリとか、油断しているといきなり飛んだりして、びっくりするよね」(P269)

◆ 制約の多い中学生が、突飛にも「空を飛ぶ」クラブ活動に取り組む。
その、ままならない日々を手さぐりで歩く彼ら。
その行動の中に…
「自由の道のりは遠いかもしれないけど、あきらめないで一歩ずつ歩けば、何かが見えてくるさ!」
とか
「はみ出してもいいじゃん!孤独や壁を恐れず行こうぜ!」
っていう思いが、こめられているなぁと思った。

部員たちの、奇天烈な言動や行動に笑い転げながら、元気が湧いてくるおススメの一冊!

(加納 朋子著「少年少女飛行倶楽部」文藝春秋 2009.4)


紅葉ほのか

◆ 映画も、芝居も本も、二回同じものを、見たり読んだりすることは少ない。

二回観た芝居の唯一の例外は、森繁久弥さんたちが演じた「屋根の上のバイオリン弾き」。
「子供だ子供だと言っているうちに、子供を作っちまうよっ!」って誰かのセリフがあったっけ。

細部は忘れたけど、古いしきたりに拘って娘の生き方に一度は反対するものの、最後は娘の幸せを願って、娘の生き方を受け入れる父親役を、彼は演じていた。

なんという、血のかよった歌と演技だっただろう。

二回とも、本当に楽しい時間だった。
森繁さんには、まったく色あせない存在感があった。 

逢えてよかった!サンキュ!



イチョウ桜2

◆ 写真は「四季さくら」とイチョウの共演。

柿桜

今朝 薄暗い時間に家を出た。

早朝の空に広がる うろこ雲。
薄暗い闇の世界から、
刻々とオレンジの輝きが変って明るさが増していく 秋の日の始り。
春と秋に咲く「四季桜」に逢おうと近くの里へむかう。

「四季桜」には ソメイヨシノのような艶やかさはない。
でも、イチョウやモミジなどの、秋の色たちと共演することで
個性を放って咲く桜だ。


イチョウと四季桜。
柿と四季桜。
秋の中に 溶けて 咲いていた。.

今年も 逢えた 秋のさくら。

◆ 写真は、柿の実と四季さくらの共演。


(おはなし)
◆ 中小企業「赤松運送」の社員が、運転していた、トレーラーのタイヤが外れて
歩行者の母子を直撃、母親が死亡。
その車の名門大企業のメーカー「ホープ自動車」は「赤松運送」の「整備不良」が事故の原因と結論する。
納得できない社長・赤松徳郎は真相を調べようとするが、取引銀行からの資本打ち切りなどの会社経営の危機。
刑事の捜査。事故を原因とする自分の子供へのいじめ。
亡くなった柚木妙子の遺族からの訴訟など。
大きな絶望感におそわれる。
ホープ自動車の「リコール隠し」を疑う赤松。
彼は、真相にせまれるか…。

(感想など)
◆ 全編を通して、登場する人物たちが丁寧に描かれ、人間のあり方を問いかけてくる。
大企業「ホープ自動車」の人間像。刑事・高幡の捜査に取り組む姿。
子供の通う学校の父兄の反応。週刊誌の記者・榎本の取材。
支援を打ち切る銀行、赤松を信じて新たに支援を始める別の銀行。
それぞれの銀行員の仕事への姿勢。
従来の得意先からの仕事の打ち切りと、別の会社からの仕事の依頼。
赤松の家族や会社の同僚たちの姿。
それぞれの人生観も、苦悩も、闘う姿も、傲慢さも優しさもでてくる…。

登場人物の一人ひとりの姿が、感動をいくつもくれる。
読みだしたらとまらない息をつかせない面白さがある。

◆ いろんなことを感じた。
「世の中の常識という聖域」という言葉があった。
「常識」とか「先入観」に囚われて真実を見落とさないように、自分の頭で考えなきゃ。…とか。
苦しい時に、「自分の力」と本当の意味で向き合って生きるって、どういうことだろう。…とか。
最初はたった一人だけの誰かの頑固なまでの「真実への思い」とか情熱とかが、
まわりの人の心に、新しい灯をともすんだなぁ。…とか。

考えさせて、感動させて、ワクワクさせる
今年一番の収穫。
本当に読んでよかった!


(池井戸 潤著「空飛ぶタイヤ」2009.9 講談社文庫)


鎌田 實著「ちょい太で だいじょうぶ」(集英社文庫)は、
痩せることに必死で、痩せているほうが健康だと思い込んでいる人に、
ホントはちょい太っているくらいが、実は長寿で健康になんだと教えてくれる。
メタボリックシンドロームを、健康を脅かす生活習慣病としてどうつきあうかを書いている。
とっても、わかりやすい。
これは同時に、哲学の本でもあると思った。何度も読み返したくなる。

生活習慣を変えて、健康になることは、実は生き方を変えること。
「生き方を変える」などと言うと、とてつもないことをするみたいだけど、
実はちょっとした積み重ねなんだってことを「健康な生き方をつくる」
という視点から語ってくれる。

そこには、哲学がある。

画期的衝撃的な方法は、出てこない。
暮らしの中に、小さな何気ない習慣をつくること。
積み重ねる。日常生活と仲良くすること。

でも実は、それが大事だってことがわかってくる。

いいなぁと思ったのは、肩に「力コブ」を作らないで
「がんばらないけど、あきらめない」で、ゆったりした気分で
「行動変容」に招待してくれること。

静かなのに、こんこんと湧き出してくる泉みたいだ。

◆ 沖縄返還に伴う、密約事件を扱った小説の最終巻。
「沖縄 チビチリガマ 鉄の暴風 OKINAWA 
土地闘争 少女事件 ヌチドゥ宝 米国立公文書館 大海原」 の9章からなる。

◆ 最高裁の上告棄却で有罪となった、元毎朝新聞政治部記者・弓成。
その後、父が一代で築いた青果会社を再建しようとするが廃業に追い込まれ、
ギャンブルにのめり込む。それを変えたいと、故郷・小倉を離れるが、孤独と絶望から、死に場所を探すような旅になる。
那覇行きの船の中、海に身を投げようとする彼を、読谷に住む渡久山朝友に止められ命を救われる。

彼との出会い。住み始める沖縄。
記者生命を断たれるきっかけになった事件の現場で暮らしながら、弓成は何を見聞きして生きるのか…。

◆ 絶望と孤独の時、人はどう生きるのか。とても考えさせられた。
内容・事情・レベルはさまざま。でも、誰もが直面する可能性のある運命のうねり。
心ならずも流されていく境遇。
いや、むしろ、いつも思った通りに歩める人生のほうが、稀なのかもしれない。
渡久山をはじめとして、弓成が出会う人たち。
その出会いが、新しい目を開かせてくれる。

◆ 最後の場面が特に好き。
漏洩事件の経緯以降、15年も音信を交わさなかった妻・由里子が、渡久山の手紙を読んで、沖縄の彼を訪ねてくる。そして、互いの思いを受け止めていく。
二人の夕餉の場面。彼が三線を引きながら沖縄民謡を歌う。
「わたしたちも曇ることのない光を持ちながら百歳の年まで光っていこうよ」
という趣旨の歌。
歌詞に込められた、弓成の決意と、妻への思いがとてもこもった場面だ。

◆ 一番思ったことは、彼が深く学んだであろう(と、本を読みながら思った)
「血を通わせて、もっと深く知って生きる」ってこと。弓成は、改めて沖縄戦の証言集や体験者の肉声を聞く。
そこで、流されてきた血や、引き裂かれた人生の哀しみに深く触れていく。
狂信のような戦争教育で洗脳された人間が、地上戦で竹やりで機関銃にむかう。
洞窟内で泣き叫ぶ子供たちと自決する人々。
そして、今の沖縄。
大学構内という民間地に、墜落したヘリコプターの現場検証も許さない米軍が存在する。

◆ 絶望の運命に翻弄されるだけの人生から、運命に立ち向かう人生に舵を切る。
容易じゃないけど、素敵だと思う。

締めくくりの弓成の思い。
「自らの意思で選んだ道程ではなかったが、そのように運命づけられているのなら、使命を果そう。書く時間はそれほど長く残っていないが、遅くはない。」。(265)

山崎さんいいなぁ!
封切られる映画「沈まぬ太陽」の原作も、超おススメ!

(山崎 豊子著「運命の人(四」)2009.6.30文藝春秋)


本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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