2008 081234567891011121314151617181920212223242526272829302008 10
上橋菜穂子著「隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民」を読んだ。
小説家であり、文化人類学の研究者でもある上橋さんが、国を訪ね、当事者や白人の話を聞ききながら、
町の中で暮らしているオーストラリアの先住民・アボリジニの実像を考える一冊。

この本で、白人たちが入植し、先住民だった・アボリジニたちの文化や生活が資本主義社会の波のなかで激変し、その固有の世界や文化が、抑圧と差別をうけ翻弄される歴史があったことを知った。そして、どんな荒波の中にあっても変わらない、先住民としてのもう一つの世界を彼らが今も、もっていることも。

そんな歴史を振り返りながら、「自然淘汰される運命にある劣等人種」「高貴なる自然の民」などのステレオタイプの評ではなく、彼らの歴史の源流をたどり、その人たちと係わり肉声を聴き、生の感触を得ながら本当の姿に近づこうとする。(地味で地道な歩みだ。)
そして、矛盾を抱えながら町で暮らしている最近のアボリジニの実像を探っていく。

この本はファンタジーではないので、血が騒ぎ肉踊るワクワクはない。
でも、表層のイメージにとらわれないで、物事の源流を訪ねて「あたりまえ」の出来事の深部に流れている「なぜ」を解き明かそうとする粘りと逞しさがある。そんな上橋さんの本。
そこに、バルサの強さとルーツを見た。
何気なく手にした一冊の本「精霊の守り人」
これがすさまじく面白い。ぶっちぎりだっ!

短槍の達人にして女用心棒・バルサが活躍するこのシリーズ
は外伝の「旅人編」と合わせると全10冊。文庫化されたのは、新潮社から二冊。
バルサがかっこいい!脇役陣が魅力的だ!自然描写、心理描写が豊かでワクワクする。
ゆえあって、刺客に狙われる皇子チャグム。それをバルサが助けつつの逃避行のすごさ…。

小説はすごい、おもしろいっ!と、改めて思った今年の大収穫「守り人」シリーズ。

「ダ・ビィンチ10月号」の対談の中で上橋さんが
「残酷や絶望を書けばリアルにはなるけれど、そういう描き方じゃなくて、ハッピーをリアルに描くんだ」という主旨のことを言っている。
半ばまで読んだ「守り人」シリーズには、彼女のそんな思いを感じる。

上橋菜穂子さんっ!…。あんたはいいっ!