2017 / 06
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◆(物語)

一般診療から救急医療まで24時間365日をこなす、信州松本の本庄病院の内科医師、栗原一止の、病院や日々に起こった出来事を綴るシリーズ3作目。

夏祭り・秋時雨・冬銀河・大晦日・宴からなる。
作品を重ねる毎に、ますます味わい深く面白くなってきたシリーズ。

新たに病院に赴任してきた小幡奈美医師。経験もあり優秀で仕事熱心なベテランの赴任、当初は歓迎していたが、ある当直日に、酒を飲んで救急通院してきた患者を診察せずに帰すという病院の理念に反する出来事が起こり、看護師や一止たちと軋轢がうまれる。なぜそんな対応をしたのか?小幡医師の生き様や真意が徐々に見えてくる…。

日々、休みなく診療を続ける医師になって6年目、30歳の一止に、大きな転機が訪れる…。


◆(思った)

毎度ながら、命を預かる病院現場。そこで働く医師の過酷な労働条件に驚き、仕事にふさわしい余裕ある医療体制であって欲しいと思う。本庄病院は、医師や看護師などのスタッフの犠牲的精神に支えられている。一止も忙殺される日々だ。生死が交錯する病院。多忙なのに、妻のハル、同僚や友人たちと交わされる会話は楽しい。
その病院に、小幡医師が赴任してくる。彼女の生き様や哲学から、一止は自分に足りないものを学んでいく。


夏目漱石の大ファンで、いつも彼の文庫本を持っている一止。
今回の作品に、繰り返し登場する漱石が書簡に書いたという次の言葉が印象的。「あせってはいけません。ただ牛のように、図々しく進んでいくのが大事」。希望を諦めない、ゆっくりだけど確かな歩みを始めようとする主人公が、輝いていた。

凄まじい現場の話なのに、作品全体に漂うゆったり感が病みつきになる独特の文体。
希望を諦めない一止の生き様に、込められた作者のメッセージがとっても元気をくれる。

(夏川草介著「神様のカルテ3」2012.8 小学館)



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◆(おはなし)
「24時間365日診療」を掲げる本庄病院はいつも満員。
主人公・栗原一止(いちと)は、ここで働きだして5年目の医師。
「変人だが、仕事熱心な医師」といわれながら働いている。

一止の、現実は厳しい。
睡眠を削り、食事もまともにとれず、休みの日もPHSで呼び出されて治療にあたる。
アパート住人との別れ。患者の死。
尊敬していた先輩医師の不治の病の発見と死など…。

◆(おもったこと)
この痛い現実にもかかわらず、明るく温かな空気が、作品全体を流れている。
漱石の「草枕」に心酔する一止の、年齢に不似合いな古めかしい語り口や、人間的な情熱とまっすぐな人柄、
そして、妻・ハルさんや先輩・同僚医師・アパート住人との交歓。患者の言葉。
人とのキラキラしたつきあいが、苦しくて哀しみが多い現実を、温かいものにしている。
読み終えるのが惜しいと思いながら、ページを繰る手が止まらなかった。

○魅力的な登場人物たちもいい。
同僚看護婦の東西。アパートの飲み仲間男爵。妻のハルさん。
尊敬する先輩医師の大狸先生。
大学時代の将棋相手で恋敵だった、東京から本庄病院に赴任してくるタツ…
いっぱいだ。

○居酒屋や飲み仲間と飲む酒の銘柄がいろいろ出てくるのも楽しい。
大好きな信州が舞台で親近感を感じる。

○印象的な「名場面」もいっぱいでてくる!
二巻目のP280のあたりなんざぁ…。
哀しくて、美しくて、切なくて…大好きな場面だ。

この場面の、こんなフレーズ。
「一瞬の奇蹟も刹那の感動も、巨大な時の大河のなかでは無に等しい…(中略)
時の大河の中では、人間の命すら尺寸の夢にすぎない。
だがその刹那にすべてを傾注するからこそ、人は人たることが可能なのである」


人生の、哀しさ、痛さ、温かさ、それに笑い。
それらが溶け合ってつくりだす豊かな物語。
「生きていること」が愛おしいって感じになる。

一止が愛読する「草枕」の冒頭のフレーズ
「とかくに人の世は住みにくい」
と思うとき、お勧めの一冊。

(夏川草介著 「神様のカルテ」2009.9 「神様のカルテ2」 2010.10小学館)

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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