2017 / 06
≪ 2017 / 05   - - - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 -  2017 / 07 ≫

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


◆(おはなし)

好きだった男に振られて、もう一度振り向いてもらいたいと、憧れのタレント・雪乃のようになりたいと夢見る女子大生・遠坂あきらが主人公。
雪乃が書いたエッセイに、山は「重要な私の充電スポット」とあって山に憧れた。紹介された山小屋のバイトに行くことになる。

登山経験ゼロの彼女は、標高2000メートルの山小屋に都会の軽装でいく。「暖炉のある部屋」「揺れるロッキングチェア」「おひさまの匂いのする干し草のベッド」「響き渡るアルプスホルン」「木につるされたブランコ」
などのイメージは長旅の格闘の末たどり着いたぼろ小屋の高山の山荘で覆される。最初に対面した、先輩の大学生バイトの・後藤大樹(ヒロ)は、彼女が軽装でトランクをもってきた姿をみて、バカ呼ばわりし「帰れ!」と怒鳴る。彼女は怒って帰ろうとするが、ふとしたことから山荘を手伝うことになる。
山猿のようなヒロに、事あるごとにバカ呼ばわりされ、カッときて言い返したりする。
品のある女性に生まれ変わるのを夢見てきたのに、これではいけないと思ったりする…。

小屋を取り巻く人々はといえば…。
対人関係が苦手で、マニュアルがないと物事が決められない気弱なヒロの同級生・曽我部。セクハラ発言とあそび好きな山荘の主人・武雄。いつも山伏の装束を身につけている、武雄の遊び仲間で山の診療所の医師・宮澤。二枚目なのに外見などに無頓着なプロの山岳カメラマン兼山荘ボランティアの福山など。

変人にかこまれた山荘の日々は、当初抱いた山荘のイメージがことごとく覆され、スマートさとはほど遠い我慢と肉体労働と、あきれ返る出来事の連続。
しかし、経験を重ねながら見えてくる人々・山荘・山の真実…。
あきらがつかむ明日はどっち?


◆(思ったこと)

コミカルで笑う場面満載なのに、人が生きるうえで、何が本当に大事なのか考えさせる。
山の変人たちにみえてくる、コミカルとシリアス。笑いと哀しみ。
繋がりあったり、バカをやったり、光をはなったりする人の奥行き。
人間って、もっともっと、素敵なものかもしれないと思った。

人間関係の分断、拝金主義、孤立の空気が蔓延しているような空気。毎年3万以上の人が自ら命を絶つ今の日本の哀しさが、物語の素敵な世界に触れていると、浮かび上がってくるような気がする。人ってほんとはもっとオモシロイんだと思う。

物語に「遭難」の場面がでてくる。生死が即問われるむき出しの出来事が経験の浅い二人に降りかかる。何とか被災者の命を救おうと切実につながって勇気を振り絞って動く、あきらと曽我部。死力を尽くす、その姿に感動した。

コンビニも大型店もない、山荘の様々な営みは、人の肉体と知恵で運営される。
例えば、食料品は人が身体で担いで麓から運ぶもの。ヒロイン・あきらが、山荘附近の清掃で、人の排せつ物を拾った後の食事がカレーで食べられないと嘆く場面がでてきて笑った。…が、後にラップされた冷えたカレーを食べる。山の食料が人の力で長い道のりを担ぎあげられて、そこには山荘を運営する人の力と思いがこもっていることを知るから。

あきらは知っていく。学んでいく。
「変わりたい」と願ったり悩んだりしているのは自分一人じゃないことを。
答えは簡単に見えてこないけど、歩くことをやめないこと。
小さな一歩でも未来を紡いでいくことを。


◆山の人たちが使う言葉が、あきらと福山の会話にでてくる。
それは「常歩無限」(ナミアシ ムゲン)「小さな歩みでも、歩き続ける限り前に進むことができるってこと。どんなに険しい山道も、人生も、あきらめない限りね」(129)と福山が言う。

読むと元気が出る。
読書の季節が楽しくなるおススメの一冊。


(浅葉なつ著「山がわたしを呼んでいる!」2011.8メディアワークス文庫)



スポンサーサイト

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。