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登山体験が豊かで、文章も面白い!
「日本人初の8000m14座完全登頂」した高所登山家が語る、山登りの体験と哲学。


知人たちと登頂中に意識不明になったり、別の山で雪崩に巻き込まれて九死に一生を得たりと、よくぞ生きてこんな面白い本が出来たものだと思った。

本書のプロローグは、大雪崩の記憶から。45度以上の雪の急斜面の登頂中、標高差300mを転げ落ちて、雪に埋まった。スイスの登山隊に救出されるが、同じ登山チーム4人のうち、一人は今も所在が知れず、一人は救出後死亡。高所を無事下山するのは、救出する側にとっても命がけ。この経験は彼に「こうして生きているのは、命が助かったのではなく、助けてくれた人たちに新しい命をもらったということなのだ」(P19)と思ったという。


【高所登山の体験エピソードは、知らないことばかりでどれも面白い。】

例えば…

◆安全な登頂をさせて下さいと山にお祈りする「プジャの儀式」を登頂前に行う。

◆コーヒー好きな彼が、高所で飲むのはエスプレッソコーヒー。気圧が低く低温な高所では、エスプレッソは必需品だとか。

◆インターネット電話やパソコンの最新デジタル機材を駆使して、気象のプロフェッショナルの日本の知人に、山の天候を予想してもらい、わずかな「登山日和」の判断して登頂の計画を立てている。

【山と哲学が、語られているところも面白い。】

登山は計画から登頂、下山までの「一つの輪」だという。「頂上に立つ瞬間」は「登山のハイライトでもピーク」でもなく、辛く苦しいばかりで、一刻も早く立ち去りたい場所というのが現実。でも、「苦しいことも含めた長いプロセスを、いかにおもしろがれるか。その一つの輪の中で記憶に刻まれた印象のすべてが、登った者だけが知り得るその山の個性」(P43)

他のスポーツより「死」が身近に感じられるからこそ、登る前に自分でコントロールできることは必ず100%の準備をする。現代人の危険に対する感覚は、他者からの管理で危険の察知や、回避の力が使われなくなってしまうこともあるのではと、自立した生き物としての意識と感覚を持つことの大事さ。本当にそうだなぁと思う。

一番面白く興味を引かれたのは、高所登山は「肉体のスポーツ」ではなく、『想像のスポーツ』というところ。登るのが困難な山という自然だから、道具やルートの開拓など、他方向に多重に想像出来るかの競争が「山に登る」行為にスポーツの要素をもたらしたと書いている。

山は、毎回が初回。登頂に、経験はあまり役立たないと。
「何が起こるかわからないから、何が起こっても対処できるように想像して山に登る」
(P197)

大自然が相手の一回性の行為が高所登山。生きることそのものも、繰り返しのない一度だけの時間。長い日常の中で忘れがちだけど、いつも「死」は近くにある。
「経験に頼るのではなく、想像を広げながら登るからこそ、新しいことも見えてくる。」(P198
)この文の「登る」を「生きる」と読み替えながら、想像することって大切なことだと改めて思った。

高所登山の面白さと、人間も自然の一部なんだなぁと、思い起こさせてくれる一冊。


( 「登山の哲学~標高8000mを生き抜く~」 竹内洋岳 著 NHK出版新書 2013.5)


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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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