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  前作「死神の精度」は6つの人生を描いた短編集。今回は長編で楽しめる。
主人公の千葉は死神の調査員。担当する人間を一週間調査して、その人物が、死ぬべき時期にあるかを報告する


「可」なら八日目に死ぬ。今回の相手は35歳の作家山野辺遼
妻は34歳の美樹

一度は逮捕された山野辺夫妻の一人娘・菜摘を殺した27歳の真犯人・本城崇(彼にも別の死神・香川がついている。)は、裁判で無罪になった。
去年の夏、小学校に通う菜摘が殺された。
裁判では無罪の本城だが、菜摘を殺す場面を写した動画をわざわざ夫妻に、送り付けてくる真犯人だった。
(夫妻が見たあと、動画は削除され証拠は残らなかった)
彼は良心を持たない、他人を苦しめて全く気にならない「サイコパス」と呼ばれる人間だった。

憤りと哀しみを持ちながら、夫妻は裁判には期待せず、娘の仇を討とうと計画するが、冷酷で知恵を持った本城から、逆に、菜摘殺しの冤罪をきせられそうになる。
千葉は、調査委員として、七日間、二人と行動を共にする。
さて顛末は…。


 菜摘の殺人。夫妻に繰り出される本城の手口。
でも「凄惨一辺倒の物語」にはならず、グイグイ引きつけて飽きさせない。

例えば、千年間も死神の調査委員で「参勤交代」をリアルに見ている千葉が、周りの人間と交わす会話が珍妙でずれていて大笑いした。そんな箇所がいっぱいある。
その一方で、夫婦が娘をなくした喪失感や心の痛みも伝わってくる。
思想家・カントや渡辺一夫の言葉も出てきて、面白い。
他者に「無力感や罪悪感を植え付け、人生を台無しにさせること」(P379)を目的に行動する本城が、これでもかと、次々に繰り出す手口に、ハラハラした。
娘の仇討ちを志すものの、人がよくて回転や決断に欠ける山野辺夫妻を、死神・千葉は成り行き上助ける。
奇妙な彼の言動が、二人を暗い気持ちから救ったりする。

「つらいことや怖いことの連続が、生きていることだからね。死ぬってことは、その最たるものでしょ」(P406)という言葉のあとで、母が遼に言う場面がある。父が命の最後に遼に教えたかったのは、死は決して怖いことじゃないことだ、と。

作品を読みながら「死」のことを考えた。
「良く生きるってどういうことだ?」って考えた。

編集者の箕輪が、作家の遼に言ったセリフを、回想する場面。 
「殺伐とした世の中に、殺伐とした話では、芸がないですよ」(P366)

笑った。心がしんとした。考えた。
まさに「芸のある一冊」だったよ。
サンキュ 伊坂さん!


( 「死神の浮力」 伊坂幸太郎 著 2013.7 文芸春秋)





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◆ (物語)

ある時は、車の当たり屋、あるときは女性の身柄の拘束、誰かを脅して口止めしたりと「悪事の下請け」「犯罪の派遣社員」のような裏稼業の溝口岡田。その二人のことを描いた5章。
「第一章残り全部バケーション」「第二章タキオン作戦」「第三章検問」「第四章小さな兵隊」「第五章飛べても8分」

◆(思った)

…ったく、どうなってるんだこの世の中!
放射能の処理能力もないのに原発推進する神経とか、
憲法変えて、人を殺傷できる国づくりをすると言ってる、命への想像力のない哀しい人たちとか、
地震・隕石の恐怖とか、
イジメ・リストラとか、自殺者3万以上の国とか、
「無縁社会」の冷たい空気・病気や老後の不安いっぱいの政治とか…。
不安と不信と汚濁が日々巻き散らかされて、まっとうに生きたいというささやかな思いを、ギリギリ締め付ける空気が社会に蔓延してる。

おっと、本の話だった! …で、この楽しげな本の名前に惹かれるネェ。
人間って、もっと楽しく伸びやかに、平穏に平和に信頼しあって生きられるはずなのにと思う。
こんな時代だから、本当の意味で楽しい日々を過ごしたい。

伊坂さんには、ギャングとか死神とかの、悪人や忌み嫌われる存在を描いた作品が以前もあった。でもそこに出てくる人物たち面白いんだよなぁ、憎めないのさ。読んでスカッとしたり笑ったり。今回の裏稼業の二人もそんな感じ。

主人公の一人の岡田は、早々に「仕事の相手が泣きそうな顔になる、どうせなら喜ばれる仕事をしようかと思う」ことを溝口に告げて裏稼業を抜けたいと告げる、その責任で岡田は、元締めのボスの毒島に消されたのか?と思いきや…。

最終章を読むまで、岡田の直接の先輩・溝口は自分勝手で嫌な小悪人だと思ってた。
ところが、ところが なのだ…。

岡田の小学生時代を描いた四章に出てくる弓子先生の姿。この物語の深部にも「ゴールデンスランバー」に出てきたキーワード「信頼」は日常を支え超えていく力なんだという作者の思いが流れている。


そして、全編、茶々を入れたくなるセリフのオンパレード。

「子供作るより、友達作るほうがはるかに難しい」ってセリフに笑っちゃったけど、本当の友達って、深い信頼の構築がないと出来ないもんなぁ…。ウン、ホント、難しいかも。

…ってことで、もっと、楽しくユタカに生きたいと思いつつ読んだのさ。
岡田くんたちの明日に、サチあれ!


(「残り全部バケーション」伊坂幸太郎著2012・12集英社)



「こじつけ」で読書する、ここのページにピッタリの一冊。
「PK」「超人」「密使」の三話を収録。

(思った)

◆ 最初の「PK」に明快なメッセージがある。
「臆病は伝染する、そして、勇気も伝染する」
ってこと。

個人の場面で問われる、主義や信念を捨てる行動が、社会全体の暗さやイキイキとしない人の表情をつくる。それは個人の問題だけど、個人だけのことじゃない。

本文に出てくる「影に包まれていく」「疲労の陰りが見えていた。萎れた植物が行進している雰囲気」
「彼ら一人一人が、増殖していく黴のようでもあった」
という表現は、哀しい人の姿を象徴している。

一方で、勇気が伝染する場面も、描かれている。
貧困な母子家庭で育ち、体力的にも貧弱に見られ、いじめを受けた少年期の小津と宇野。
後に、二人は、サッカーの代表選手になり、伝説的なPKを演出する。
いじめられて、サッカーを辞めたいと思っていた失意の少年時代に、二人は、若き日の大臣が、乳児の危機を救う場面に遭遇し、励まされる。
その場面を見た他の人たちも「歓びの叫びが反響し、いく人かは抱き合った」と勇気の伝染の描写。

◆ それにしても、昨今の消費税をめぐる国会議員の行動。
負担だけじゃなくて、国民の元気も奪っているってわからない?
「おれおれ詐欺」にひっかけて「やるやらない詐欺」と呼ばれる人があるかも。(注・「やると言ってやらず、やらないと言って消費税を談合で決定した詐欺」の意味)。
脱線ゴメン。

さて、この本は、信念を貫く勇気の大切さを、問いかけている。


(ものがたり)

◆「PK」

サッカー選手・小津は「PKのチャンスが訪れたら、外す」ようにl監禁されて脅される。
就任したばかりの大臣は、幹事長から、嘘の証言を強要される。従わないと、破廉恥行為のレッテル貼りして、嘘を世間に信じさせるぞと脅される。
作家・三島。出版社から呼び出され未知な男から、小説の「改稿」を強要され、脅される。
信念の変更を強制的に迫られる三人。さて…。

◆「超人」

作家・三島宅に、営業で訪れた本田毬夫青年が悩みを告白「未来が分かります」と。その顛末は?

◆「密使」

僕(三上)と私(本田毬夫?)の話が交互に展開される。三島は他人と握手すると、一人当たり6秒を相手から奪える「時間スリ」。アトラクションの仕事中に、ある場所に一匹のゴキブリを届けることを依頼される。
「私」は、ある物流倉庫の地下室に呼び出され、世界の人を救うために、君は、ただ一人死んでもらう対象になったと告げられる。さてさて、どんな顛末に?

第一話に登場する男女の会話に、二、三話の内容につながる内容がある。


「信念を貫く勇気の大切さ」がテーマ。
イキイキとした、身体と心と表情で、生きたいぞっ!
っと思ったのでした。

(伊坂幸太郎 著「PK」2012.3 講談社)




◆(おはなし)
主人公・渡辺が仕事を終えてマンションに帰ってくると、妻・佳代子が雇ったという
ヒゲの男が待っていた。
妻は彼の浮気を疑っていて、彼女の依頼でヒゲの男から暴行を受け、椅子に縛り付けられて、浮気相手を白状しないと拷問すると脅される…。

ソフトウェア会社で働く渡辺の周りで、特定の「キーワード」を検索した
同僚や知人が、婦女暴行の冤罪にハメられたり、失踪したり…という様々な事件がおこる。

なぜ?

情報化社会の「新モダンタイムス」。

◆(おもったこと)
なんじゃこりゃあという本の出だしから、いつしか伊坂ワールドに引き込まれる。
漫画雑誌「モーニング」に連載された。
大好きな「ゴールデンスランバー」の二卵性双生児的作品だそうだ。

巨大な情報化社会の中で細分化、効率化が進んで「仕事だから」という言葉のもとに
「良心、罪悪感」が消えていくこと。
気づかなくなることに、警鐘をならしているんだと思った。

個人的関心としては、文中に出てくる
「勇気と想像力とちょっぴりのお金」があれば人生を楽しめるという
「ライムライト」にでてくるセリフや、別の作品のなかの
「宇宙の力は君にもある」という言葉が印象的だった。
人間は血や肉で出来ていて、いくら社会が巨大化しても、
あくまでも原点は「一個の人間」だよなぁと改めて思った。


(伊坂幸太郎著「モダンタイムス」2008.10講談社)


(お話)
◆ 負けることに慣れきったような、弱いプロ野球チーム「仙醍(せんだい)キングス」。
このチームの熱烈なファンだった両親から生まれた山田王求(おうく。)
このチームの選手になるように育てられた彼は、やがて天才的な選手になっていくが…。

(思ったこと)
◆ すらすらと読めた。漫画を読むみたいだった。
4割の打率に到達するのは稀な野球選手の世界。
彼は、なんとその倍の8割の打率をあげる天才選手。
小さいころから勝負されず、敬遠の四球が多い。
「野球」の世界に飛びぬけた天才を配し、父が殺人者というレッテルを背負いながら
堂々と王道を生きようとする彼はカッコよくもあり、悲劇的でもある。
シェイクスピアの「マクベス」や「ジュリアス・シーザー」を下敷きに
「三人の黒衣装の女たち」「人間が変形した四脚の緑色の獣」
を登場させ、鮮やかに時空が転換して物語がすすむ。
間延びも退屈もない伊坂ファンタジー。

◆ もひとつ、こじつけ読書感想を。
本の中に出てくる言葉で言うと、何かする前から恐れて挑戦しないってつまらない。
人生に、代打は送れないもんなぁ。
面白いことを探しながら歩きたい。

面白かった言葉。
弱小チームのオーナー・服部勘太郎のセリフ。
「…優雅に飛んでる鳥が落っこちたりするのを見て溜飲を下げるよりも、
絶対飛ばないような牛が空を飛ぶのを眺めて、爆笑するほうが好きなんだ。
面白味を感じるんだよ」(150)


(伊坂幸太郎 著「あるキング」2009.8 徳間書店)

◆ 別室・見聞にっきに「さくらんぼの花」UP!

久々の伊坂さん。
難しかったぁ~。読み終えてどっと疲労感。(笑)

◆ でもね、主人公の一人・二郎さんの思いやキャラクターには、興味を覚えた。

それは、例えば、救急車を見ると
「どこかで誰かが痛い痛い、って泣いているのかな」と心が痛む。
いろんな場面で、困っている人を見ると、何とか助けてあげたいと思う。
なのに、何もできない自分の無力感に、くよくよする。

こんなふうな登場人物や問題意識は魅力的だ。
でも、作品としてスッキリ結晶していると思えなかったのが、残念だった。
スカッとする、深くて面白い作品を、期待してまっせ~!大好きだよ!伊坂さん!


◆ 読み終えて感じた、あれこれ。
個人が出会う「苦悩」を、ちっちゃな世界に閉じ込めちゃだめなんだ。
それは、もっと大きくて生きているみんなに共通している「苦悩」だってことを意識する
ことが必要なんだ。

人が「苦悩」に対峙するとき、生きる力をくれるのが「物語」「音楽」だということが語られる。
普遍的な人間共通の「物語」として、作品に「西遊記」が登場してくる。
また、国籍を超えて知らない人同士が、無意識にみんなが共有できる「音楽」のことを
「星の音楽」と表現している。いい言葉!

人間共通の、音や物語を感じとる日常へのささやかなアンテナを、コツコツとちびちびと
育てていくんだ。
くよくよしたり、悩んだりすることを避けるんじゃなくて、
程よい付き合い方を探しながら歩くしかないなぁ。
ふぅ~~。(笑)

(伊坂 幸太郎 著 「SOSの猿」 中央公論新社 2009.11)



 物語に出てくる、北村たちと話したい、つるみたい。
「味気ない砂漠のような暮らしを、どうやって面白くする?」
な~んて話から、アホのてんこもり話まで、飽きることなくやれるかも。

◆ 東北の大学に入学して、出逢った5人。
物事に臆さないきまじめな西嶋、クールな美女東堂
冗談と女が好きな鳥井、スプーン曲げなど不思議な技を持ち麻雀の強い南
どこか醒めているように見える物語の語り手でもある北村。
その5人を軸に、春夏秋冬の出来事と卒業するまでの日々。
合コン、恋、ボーリング、強盗事件と鳥井の左腕切断とその心の彷徨と友人たちの関わり方
学園祭の出来事、将来の進路、社会の動きと自分の生き方なども…。

◆ 笑いと青春の物語に流れているハート。
それは「砂漠に雪を降らせる」という、一見突飛に
思えること。

暮らしの中にある不合理。
「ため息」「あきらめ」という心の在り方。

社会や暮らしの「砂漠」に対して、雪を降らせるような
人間の気概や誇りって何だろう?

「もしかするとあり得るかもしれない、もっと嬉しい現実。」
それを、人は作り出せるのかも…。

ゲラゲラ笑いの、物語にひたりながら
風味絶佳な水を飲む。
…うまい。


(伊坂幸太郎著 「砂漠」 実業之日本社 2005.12)




本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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