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◆(物語)

32歳の山守未紀は、3年つきって、結婚を夢見ていた男から別れを告げられる。

会社では顧客に、思いっきり本音でキレて退職する。

彼女は、経験はないけど勢いで借金をして、カフェをひらく。

ところがやってみると、さまざまな問題が…。

心で描く店の理想と、経営の困難の板挟みのなかで揺れながら、店を盛り上げようとするが…。


◆(おもった)

物語の中に、ボブ・ディランの「コーヒーもう一杯」の歌が出てくる。
旅の無事を祈る一杯、という意味の慣用句をもじった歌の話だ。
題名も、ここからつけられたのかもしれない。

夢見た結婚は果たせず、会社を辞め、店もうまくいかない。
まさに「なんにもうまくいかないわ」(彼女の他の著書)という状況。
人生は、思いがけないつらい出来事や、うまくいかないことの連続攻撃なのかも。

でも「…にもかかわらず」明日への旅に歩きだす。
「失敗をかさねながら、人生が豊かになっていくのさっ!」てなぁ心持で歩かなきゃね。

そんな、思いをくれる一冊。

(平安寿子著「コーヒーもう一杯」新潮社2011.10)


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◆ 野依仁恵(48歳)の、夫・卓己は53歳でガンで亡くなる前に、仁恵に、五年続いている愛人・原口志生子(45歳)の存在と連絡先を告げる。
志生子には、放蕩の限りを尽くし、離婚し、遍歴を重ね、最後に孫ほど歳のちがう女性と同棲した父親がいる。
その父は今、入院して意識なくベッドに横たわっている。
いらだちと愛おしさの入り混じった思いで、志生子は、時々病院を訪れている。
卓己は、父のことを話し、都合のよいとき会ってきた関係だ。

突然・志生子の元に、卓己の妻と名乗る仁恵から、電話がかかってきた。
彼女は「仲良くなりたい」というが、志生子は、愛人としての後ろめたさや、妻へのこだわりがある。
あけすけで強引な仁恵に、これは、妻からの自分への復讐かと、接触を避けたいと思うが、
仁恵は、家に来たり、一緒に旅をしようという…。

◆ 卓己の死から始まる物語。
でも、シリアスなだけの物語にならない。
仁恵と志生子の会話が面白い。
志生子の立場からは苦い思いも、どこか笑いを誘う。
妻と愛人だった二人のことが描かれ、生と死のことが描かれている。
切なさや哀しみを帯びながら、哀しさだけで終わらない平節が、あたたかい読後感を残す一冊。


(平 安寿子著 「さよならの扉」中央公論新社 2009.3)


菖蒲2

◆ ゼネコンではなく、一戸建ての家を建てる小さな「鍵山工務店」で働く二人の女性を描く。
その二人とは、成り行き上、父が起こした工務店の社長になる47歳の郷子。
求人情報誌の副編集長を辞め恋人とも別れて、この工務店で働き始める30歳の梨央。
面白いのは二人とも男との縁が、この道で働くことにつながる。
(梨央は、トビの親方・徹男に助けられた出会いから、彼にあこがれてこの仕事に近づく。)
二人とも、外から眺めていた頃と大違い。
建設業界の中で、働いてみると、施主からのクレームや職人の手配に四苦八苦する梨央。
会社の責任者になったものの、働けど一向に経営は楽にならず、他会社との合併を専門家から勧められる程で、会社経営にジタバタする郷子。
さてさて、どうなる…。

◆ 本の題名は、落語「寿限無」の中に出てくる一節。
そして、家を象徴する言葉。
彼女の描くヒロインは、しんどいことがあっても、シャンと背筋を伸ばして生きている。
既成の生き方に飽き足らない。かっこつけるのも似合わない。
どこか抜けているているけど、憎めない。

この作品のヒロインたちも。
熱情的な梨央と、醒めた経営者の視点を持つ郷子で交わされる二人の会話も楽しい。
読んでいて、気持ちがいい。

◆二人が交わす「家」談義も楽しい。
梨央は、雨風をしのぐだけでなく、家族の思い出が宿り、「心の入れ物」が家で、
そんな家を作る「やり甲斐」や「喜び」が、生きるエンジンになると言う。
梨央を見ていると、人生を悲観一色に塗りつぶすのは、つまらないと思う。
こんなセリフもある。
「現実はシビアに決まってますよ。でも、そのシビアさに踏みにじられてばっかじゃ生きてけないでしょう。九八パーセントはシビアでも、二パーセントは夢が叶ったとか、やり甲斐を感じる瞬間があるはずですよ。そうじゃなかったら、誰もこんなくそったれな人生を生きてませんて。」(226~227)

◆ 家を作る作業の中で使われる「養生する」という言葉や、トビの親方・徹男や設計者のセーノさんたちに共通する、職人気質の中に「家を生き物扱いする」精神を見る。

◆ カラカラになりそうな気分の時、彼女の作品を読むと元気がでる。
「必死で過ごした大混乱の日々が腐葉土になって、そこから何かが芽生えかけている」(254)
「大混乱の日々」も良い土をつくっていて、「芽」を育んでいる時だと考えようっ~と。
気分、ゆったりで、いこう!


読んでよかった「寿限無」な一冊。(笑)

(平 安寿子著 「くうねるところにすむところ」文庫2008.5文藝春秋)


◆ ランチタイムで知り合いになった、三人のランチメイト。
販売データ処理会社社員・二宮翔子26歳。
コンタクトレンズ販売店フロア主任・田之倉喜世美29歳。
スナック菓子メーカーベテランOL・矢代鈴枝35歳。
年齢も仕事も様々な、三人の恋愛模様。

翔子は「mogの一人で生きちゃ、ダメですか日記」というブログで語り合う、気の合う男と直接二人で会ったり、以前、専門学校が一緒で、今は「IT長者」を自称する園田と六年ぶりに再会し、彼からブランド攻勢をうける。欲望にもろい自分を振り返り、人が「付き合う」ことの意味を考える。

喜世美は、勤め先のコンタクト販売店に、客として現れた忘れられない男と再会したり、イケメンで医者の中谷との出会いがあるが…。

鈴枝は、贔屓にしているバー「ブルームーン」のバーテンダー小郡へのあこがれから、受け取るだけでなく、お互いを生かしあう関係のことを思ったりする。


◆ 不自然に血眼にならないで、自分を見つめる目があるカラッとした恋愛模様が面白い。
三人の生き様に笑いながら「恋愛嫌い」というより、不自然で、ニセモノくさい自分や相手の部分が気になるんだなぁと思った。
クールな脱力感が、物語に漂っていていいなぁ。好きだなぁこういうの。
「女の干物になっちゃいますよ」と、喜世美が言われる場面がある。
鮮魚には鮮魚の、干物には干物の味わいがあるぞと思った。

いいんだ、慌てなくても。
違うと思うものに、流されて生きなくても。

「自然体の脱力感で行こうぜ!干物だって味がある!小説」の決定版。
(笑)


(平 安寿子著「恋愛嫌い」 2008.10集英社)

 昨日60歳になったジュリーこと沢田研二が、ツアー最終日、東京ドームで7時間のコンサートをしている姿が放映された。
三万人以上がライブに酔いしれる姿に「元気に歌い続けているんだなぁ!」と感心した。
TVでの姿を見なくなって、歌やめちゃったのかなと思っていたが、おっとどっこいな浅はかな認識だった。
リハーサル風景では、着ているTシャツの背中に、向かえた年齢「60」をプリントしていた。
年齢を若く見せたがるのでなく、長く歌い続けていることを感謝し、年齢を受け入れて、あるがままの今の自分の思いや命を歌う姿が、印象的だった。

 平 安寿子さんの小説「あなたがパラダイス」には、「ジュリーマニア」で更年期を迎えた女性たちが登場する。
50歳クールな図書館員坂崎敦子。
西嶋まどか50歳。
43歳の千里は、少し時期が早いと思うのに更年期と診断される。

肉体や外見の衰え。育児・介護・夫婦・職場での立場への重圧。肉体的、心理的な閉塞感。
恋や介護や離婚問題にゆれる三人が、夫々にラストの場面でジュリーのライブを見に行く。
重なる歳を肯定して、生きていることを好きでいよう…。ジュリーの歌い続ける姿に、三人は思いを重ねる。
「更年期や老いってみんなやってくるジャン!受け止めて歩こうぜ小説」
の傑作。(そんな分野あったっけ?)


(平 安寿子著「あなたがパラダイス」2007.2朝日新聞社)


著者の本じゃないけど「もっとわたしを」と思っても
「なんにもうまくいかないわ」と思ってしまう日が、ごろごろある。
「どうしてくれるんだぁ~」って思うのは、ボクだけじゃないみたいだ。

◆ この本は、平安寿子さんが26歳(1979年)の時、コピ-ライターや
OL生活に行き詰まり、貯金を使って、ホームスティをしながら、パリの
語学学校(三ヶ月コース)で過ごしたおもしろ哀しい留学物語だ。

笑えるところもある。
でも、惨めで長い間、語れない想い出だったようだ。
「手ぶらで帰ってきてしまった。何も見つけられなかった」と
自分のバイタリティのなさに涙が止まらなかったと語っている。
あの平さんが だ…。

◆ 印象的な言葉。
「生きるとは、想い出すこと。人は、想い出すために生きる。
なんにもならなかった、なにもできなかったと涙にくれたパリでの日々が、
今のわたしの足元を支える土台になっている。
想い出とは、そういうものだ。想い出こそ、わたしなのだ。
五十を過ぎて、それがわかった。」(162)
苦かったパリでの想い出が四半世紀を越えて、ようやく言えた現在形の言葉。
「セ・シ・ボン。そりゃもう、素敵。」(165)

 この本を読んで思うのは、空しく涙する「空ぶりな日々」にも
ほんとは味があるんじゃないかということ。
それを、みつける気持ちで、生きるってのは
『そりゃもう、ステキ』
 と 思いたい。


(平 安寿子著「セ・シ・ボン」 筑摩書房 2008,1)



はい!本好きな、そこのあんさん!
そうっ!あんさんです。
遠路はるばる よ~くきてくださった。
まぁ お茶でもいっぱい…。
ワシ この本の話 しとうてなぁ~
聞いてくれるか?

 読んだんは 「こっちへお入り」 といって 落語のお話ですわ。
平さんいうヒト。知ってるかい?
この前の「風に顔をあげて」ちゅうのも ようでけた話やったけど、
これ!この本も ようでけてて感心したわぁ。
なにしろ ワシも落語が
好きで 好きで 好きで 好きで 好きで 好きで

…なに! くどい…。
言ってみたかったんや。


◆ さて、この話。33歳の独身OLの吉田江利がヒロイン。
友だちの友美が、はいっているサークルの落語発表会を見に行って、
ひょんなことから、自分もサークルに入会する。
まったく知識も経験もない「落語」を
高座名「秋風亭小よし」を名乗って、演じることになる。
小よしが落語に、のめり込む姿が楽しい。
演者の立場で、空き時間を見つけてはブツブツと落語を練習し、
あれこれ落語を聴き、サークルのメンバーたちと語り合ったり
考えたりと悪戦苦闘の日々…。
自分の暮らしと、落語の登場人物たちの生き様がクロスしたり、
語りかけてきたり…さて…。


◆ 題名の「こっちへお入り」は落語「寿限無」の中で、
訪ねてくる熊さんを迎える、ご隠居さんの言葉。
一つは、オープンな「落語」への入り口を象徴している。
同時に、対立した性分を一人で演じわける落語。
そこから、異なる人たちの心が見えてくる。
江利も落語の世界に触れて演じようとしながら、新しい気持ちが芽生えてくる。
「ちがった性分の人の心持ち」を聞いたり、考えたりする。
平さんの言葉で言えば「落語頭」にいざなう言葉でもあるんだなぁ と思った。


この本を読むと落語が聴きたくなる。
手元の落語CDを聴いて、また読む。
またCDを聴く…。という繰り返しの、ゆっくり読書だった。
滑稽な笑い。ホロッとする人情噺の味。
よく出来た落語の一席のような
味のふか~い一冊。

◆ 8編からなる。
その1 ポンポコピ-のポンポコナー
その2 孝女の遊女は掃除が好きで
その3 タコの頭、あんにゃもんにゃ
その4 あっしんとこね、くっつき合いなんすよ
その5 俺のほうじゃあ、誰も死なねぇ
その6 与太さんは、それでいいんだよ
その7 あたい、泣いてないよ
その8 さぁさ、こっちへお入り 

※話の合間に挿入されている
「江利の知ったかぶり落語用語解説」もわかりやすい。

(平 安寿子著「こっちへお入り」祥伝社2008,3)


本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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