2017 / 05
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小学校のとき、その日の授業が終わって、先生と生徒が交わすシメのような挨拶言葉。
それが「せんせい、さようなら!」
「みなさん、さようなら」だったのを思い出す。

◆ 看護師の母親・ヒーさんと二人暮らしの、主人公・渡会悟は、
小学校の卒業式で同級生が目の前で刺殺される事件に遭遇し、
自分の住んでいる団地から外へ出られなくなる。
団地の外の中学校にも通わず、コミュニティセンターで、崇拝する武道家・大山倍達と
同じようなトレーニングに挑んだり、センターの本を読んだりして過ごす。
そして、団地を毎日パトロールして同級生の動静に目を凝らす。
団地内で友だちをつくり、ケーキ店で働き、緒方早紀との恋や婚約もする。
そして失恋の痛み。勤め先の師匠との別れもある。
時は流れて、小学校の同級生たちは毎年のように団地を出て行く。
老朽化し、空き部屋がでて、そこに忍び込んでの乱痴気騒ぎや外国人の入居者の増加。
単身の孤独死など悟の過ごす年月と団地の変容して行く姿。

そして、心の傷に縛られるように団地からでられなかった悟が、
母が残した言葉に導かれるように、30歳で団地を出て行くまで…。

◆ 局地的引きこもりというべき、悟を描きながら「心の痛み」を超えて、
本気で人が自立していく過程を描いた話として面白く読んだ。
特にこの話を面白くするのは、後半に登場する「堀田」だ。
当初は善良でやさしげな人当たりを装って悟に接するが途中から、善意をあざ笑い、
人の気持ちを、殺意と暴力で玩ぶ本音をむき出しにする。
悟は団地の屋上で、堀田と子分二人と向き合う。
堀田は、家族として同居している11歳のマリアを、子分たちと一緒に性的な暴力の
対象にする意志と、悟への殺意を叫んで脅す。
包丁にも触れないほどの悟は、三人から突きつけられた刃物と殺意に怯えるが、
自分の弱さと闘いながらマリアを助けようとして、三人と闘う。
その場面は手に汗握る。

そして、突然やってくる母「ヒーさん」との死別。

◆ 大切な人や守りたいものへの強い意欲が「本気」の力を呼ぶ。
命を、深く広く育てるために試行錯誤する人の姿が、面白くファンタジーとして描かれている。
「みなさん、さようなら」 と儀礼的・反射的に繰り返していた小学生の頃の幼い言葉。

そして今、30歳の悟が団地を出て行く時の「みなさん、さようなら」。
それは、別れと背中あわせにある新しい出会いへ歩き出す、進化し深化した言葉なのでは。


おすすめ。

(久保寺健彦 著 「みなさん、さようなら」 幻冬舎2007,11)




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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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