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コンパクトで、ステキな本だ。ミロコマチコさんの挿絵が、とってもいい!
絵本みたいにゆったりした装丁だ。そして内容も豊かで、いい時間をくれた。

収録作品は「よいことわるいことって、なに?」「きもちって、なに?」「知るって、なに?」「あの町で 春、夏、秋、冬」「いっしょにいきるって、なに?」「自分って、なに?」「自由って、なに?」「人生って、なに?」「あの町で」という、東北の被災地のことを描いた作品以外の7編は「こども哲学」というシリーズの付録として書かれたという。


大半が、子供たちの交友や暮らしの中の一コマの優しい物語が綴られている。

そんな中で「自由って、なに?」という一編は、他とは異なるトーンで書かれて、特に印象深い。
ここには、重松さんの「個人的で、たいせつなお話」として、親友の自死のことが書かれている。
切なく哀しい。けれども、生きなきゃなぁと、心を押してくれる。

そして、重松作品の根っこに託し続けているものとし「不自由もあんがい気持ちいいものだよ、ということばかり書いている…」。「哲学というのは、生きることを好きになるためのヒントなんだ」と彼自身の作品や哲学への思いが、綴られている。

読み終えたあと、自分の中に、今流れている生命のことを思う。
人間という、自由で不自由な生き物のことを思う。
待ってたんだ!こんな一冊。


「きみの町で」重松清著 2013.5 朝日出版社)


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(物語)
中学二年のよっちゃんが手伝っている「峠うどん」は、70歳半ばの父の祖父母が営んでいるうどん屋だ。
14年前まで、祖父が暖簾分けされた「長寿庵」という屋号だったが、道路向かいに斎場が建ったため、屋号を「峠うどん」に変更して、お通夜や葬式に来た人たちの店になった。
学校帰りに手伝いにくる「峠うどん」でよっちゃんは、いろんな人に会い、命のことを考えていく…。


「序章」「かけ、のち月見」「二丁目時代」「おくる言葉」「トクさんの花道」「メメモン」(上巻)
「柿八年」「本年も又、喪中につき」「わびすけ」「立春大吉」「アメイジング・グレイス」(下巻)

(思った)
◆こんなふうに一篇ずつの題名を書いて内容を思い出すと、一篇ずつが鮮烈な命の水みたいだった。読んで本当によかった。一見、暗くて威勢が悪そうなうどん屋に、本当の意味の明るさと希望がいっぱいあるんだなぁと思った。
「峠うどん」のうどんを食べに行きたい!さッちゃんや駒子さんと話してみたい!

◆40代半ばの人情深い父・和也や、まじめな母・佐智子のおいたちもでてくる。寡黙で頑固な職人の祖父・修吉のこと。
一言多いけど、外交的で機知あふれる祖母・駒子。
父の悪ガキだった教え子のボーズ。
さっちやんの同級生の大友や、祖父の親友・わびすけなど作品に登場する人物たちが、どの人も印象深い。

◆「かけ、のち月見」「二丁目時代」「おくる言葉」などが特に好きな作品だ。
人が学ぶことの意味。人が「本気」をだすときの思いや多彩なあり方が感動的だ。

人が最後に行きつく「死」のことが描かれている。
それは「生」への問いを、さまざまに投げかけてくれる。
豊かな問いと思いがギュッとつまった傑作!

(重松清著「峠うどん」上巻2011.8下巻2011.9講談社)


◆(おはなし)
再婚して生まれた由紀也が、一歳になったばかりの時、突然なくなる。
その死に折り合いをつけようとする私と妻・洋子。
私は旅に、季節ごとに出かけながら、由紀也との折り合いの付け方をさがす。
十年ぶりに連絡がきて会った先妻・美恵子との子供・明日香は15歳になっていた。
高校生だが不登校の彼女と、私は旅をする。旅先での様々な人との出会い。
美恵子は、癌で告知を受け、最後はホスピスでの日々を選ぶ…。

大切な人との別れは哀しい。突然で、理不尽にも思えるような別れ。その痛みと哀しみ。
一歳で亡くなる由紀也。癌で宣告を受ける美恵子。二章の奥尻島の旅には地震と津波で亡くなった人たちのこと。三章では、私が旅先であった老夫婦から聞く息子のこと。やりたかった演劇の、初演出を手掛ける準備中に、肺炎をこじらせて23歳で亡くなったという。「自分をひっくり返してくれるような風景にであった」と言っていた旅帰りの息子の言葉。その足跡をたどって、流氷を見に来た老夫婦…。

全9章からなる連作。
雑誌発表の初出時には「きみ去りしのち」「嫌いだった青空に」「冬の歌曲」「虹の向こう岸」「風の中の火のように」「まほろば」「砂の暦」「瑠璃色のハイドゥナン」「風のはじまるところ」の題名がある。

◆(思ったこと)
とんがって生きているように見える、15歳の明日香のユーモアや感受性に、瑞々しさを感じた。

死を書きながら、幸福のこと。思い出のこと。生きる意味のこと。
旅と人生のことなどを、描いている。
いろいろなことを、考えさせてくれる。

二度読んだ。
最初は、暗くて、ねちねち・くよくよの、私と洋子夫婦の暗さが、痛くて、はなについて読んでいて疲れた。
二度目は、人が亡くなって別れる哀しみは、ねちねち・くよくよの、心情になって当然だよなぁと思った。
それを、体験することを、人は避けられない。
この暗さ、痛み、哀しみと向き合う逡巡の日々を経て、本当の明るさを育てられたらいいなぁ。

六章に「優しさは」悲しさや寂しさが、じょうずに育ったものかもしれないという会話がある。
とても、印象に残った。


(重松清著「きみ去りしのち」2010.2文藝春秋)


若き紫陽花


◆ 私(田島)の妻・圭子は、中学校教師としてこれからという40歳を前にして、ガンで亡くなる。
彼女が小学5から中学生五年間を過ごし、ふるさとのように思っている「希望ヶ丘」という街に、
天真爛漫な小5の亮太と、クールながら家族思いの中三になる美嘉と、三人で引っ越して、
塾の教室長としてのスタートをきる。
子供たちの学校生活。
現代の塾や学校を取り巻く教育事情。
家族が知らなかった圭子の多感な季節の足跡。
(彼女を好きだった元生徒会長で、今は、学校クレイマーの妻の尻に敷かれている「チクリ宮嶋」。
彼女があこがれていた「エーちゃん」と、その娘マリア。
彼女が習字を習っていた瑞雲先生。
親友のフーセンこと香織。その夫でギター好きの藤村さん。などの人間模様がからみあって、
飽きのこないオモシロさ。)

とにかく出てくる人物が魅力的で、グイグイ惹きつける。
これまで読んだ重松さんの作品の中で好きな作品。

◆ 思ったこと。
あらためて思う、人の出会いの不思議。
この物語で言えば、初めて知る中学時代の多感な圭子の姿。
それがいきいきと、今も彼女を知る人の中で生きている。
時ってもの。思い出ってもの。が、人に残す意味の大きさを思った。

◆ もうひとつ。「希望」のこと。
つまりは「希望」は人のことだ。
その歩き方だ。
圭子が憧れていたエーちゃんがいい。
歳を重ねて、髪が薄くなっても、体に肉がついても、やっぱり、かっこいい!

「希望」は、額に入れて飾ってありがたがるものじゃなくて、陽と風と雨にもまれてさらされて、ぼろぼろになっても消えないものが、そう呼ぶに値する。
「希望」はりスクを、背負いながら求めていくものなんだ。

このドラマに、笑いや優しい涙と共に、中心を流れているのは、そんなことなのかも…。

印象的な登場人物・エーちゃんは、名セリフを連発する。
彼は中学の屋上で子供たちに言う。
屋上には、人生と同じで屋根がない。
「人生は吹きっさらしだ!」
めんどうで苦労も多いけど「ときどき気持ちのいい風が吹くんだ!」(477)


キマッタ!
厚い本。でも、読む価値ありの一冊。
気持ちのいい風 吹くかも。(笑)

(重松清著「希望ヶ丘の人びと」2009.1小学館)



◆ 秋をテーマにした、四季の連作集の三巻目。
いつもながら、心地いい、しみじみと人生に向き合わせてくれる重松エッセンスがた~っぷり。
「思い出」の歓びやほろ苦さのこと。
「人のかっこよさってなんだ?」「幸せって?」いうテーマが、物語の底をじんわり流れている。
紅葉や秋の味覚を味わいつつ読むのに、この時期にピッタリだよ。

特に印象的だった二話をあげれば。

◆「第二話 サンマの煙」

 引越で転校を前に、以前の学校の思い出に浸っている四年の娘・真希に、かつて、同じ年頃に海辺の田舎町に転校したママ・玲子が語る引越し体験談。
 前の学校の友だちの思い出と、理不尽に転勤させられた父を応援したい心情もあって「なじまない、無愛想ないやな奴」を転校先で演じて通そうとするが、玲子にニコニコと話しかけてくる同級生・エッちゃんがいた。その哀しみ。時化で帰らない漁船に乗っいて、帰船が遅れている兄の無事を祈る思い…。
最後に出てくるサンマが絶妙。そして美味そう(笑)。
「風の又三郎」にでてくる歌も効果的。

人の心の奥深さや、友だちの存在を思う。

◆「八話 ウイニングボール」
 試合中の、大人の草野球チームパイレーツにバックネットの裏から松葉杖をついた少年・ヨウヘイが「へたくそっ!」の猛烈なヤジ。特にチーム唯一の独身の27歳の三塁手のツルに辛らつな…。

草野球チームのメンバーたちと、ヨウヘイとの交流に胸がキュッとする。連戦連敗をものともせず、試合後の飲み会を楽しみに集まっているパイレーツのメンバーたちだったが、難しい手術にむかうヨウヘイに、初の一勝目のウイニングボールを渡したいと全力を尽くす。ツルがヨウヘイから受け止める「必死のタネ」もいろいろなことを、感じさせる。

他に「オニババと三人の盗賊」「風速四十米」「ヨコヅナ大ちゃん」「少しだけ欠けた月」「キンモクセイ」「よーい、どん!」「おばあちゃんのギンナン」「秘密基地に午後七時」「水飲み鳥、羽ばたく」「田中さんの休日」

(重松清著 「季節風・秋 少しだけ欠けた月」 文芸春秋 2008.9)




 夏にまつわる人生模様を描いた12編。
印象に強く残った作品二編。

 「僕たちのミシシッピ・リバー」

小学五年生のトオルとカズヤは、一学期の卒業式を終えた翌日の夏休み初日。
そして、トオルが転居する前の最後の日をカズヤと過ごす。自転車で、遠く離れた海を見にいく。
読んだ冒険小説の二人のお気に入りの「ミシシッピ川を筏で下る場面」。
遠い海を目指してペダルを漕ぐ、「冒険」のような一日。

二人の友情の瑞々しさ。別れていく二人の寂しさ。
苦く哀しい一日。その日の思い出を胸に、新しい日へと命を漕ぎ出そうとする
初々しさ、眩しさも感じさせる。


 「終わりの後の始まりの前に」

高校野球予選の最後のバッターとなったテルは、強豪S学園・横山投手が投げた一球を
「ボール」と見送るが、審判の判定は「ストライク」。三振となり、最後の打者となる。
高校野球の夏は終わったと思いながらも、最後の一球を「ボールだった」と、心に引っかかっている。テルが塁に出ていれば、公式戦初のバッターの予定だった三年間補欠選手・渡瀬に、打順がまわった。渡瀬の悔しさ、収まりのつかなさ。
 
 テルは「ストライク」の判定を下した主審と再会。
異論を伝えるが、「ストライク」だった。
納得も、諦めも出来ないかもしれないがと、彼は、さとすようにいう。
そして、二十年近い審判生活で、勝敗に関わらず、何の悔いも、後悔も、やりきれなさもない試合はなかったと告げる。選手も審判も。
強豪S高校のエースながら、大事なところで体に故障を抱えてマウンドに上がる横山の姿が、最後に、二人の前で展開される。

テルが、後悔なく生きていくことの難しさを学ぶこの一編。
人は、スパッと割り切ってスマートには、生きられない。
丁寧に生きようとする程、後悔や、やりきれなさは、付いてまわるのかもしれない。
どうにもならないときには、開き直って(笑)生きることも必要なのかも。


◆ 他に、涙なくして読めない「タカシ丸」はじめ、
「親知らず」「あじさい、揺れて」「その次の雨の日のために」
「ささのは さらさら」「風鈴」「魔法使いの絵の具」「金魚」「べっぴんさん」「虹色メガネ」。

(重松清 著「季節風・夏 僕たちのミシシッピ・リバー」2008.6文藝春秋)



そうか、なるほどと思った。
大仏次郎の作品を読み解いて書かれた評論
「鞍馬天狗のゆくえ」(相川美恵子著 未知谷 刊2008.6)を読んでいたら
「弱いものに導かれていく先に幸福を見たいという大仏の姿勢」(P163)
という言葉があった。

それは、重松清 作品の真ん中を流れているものでもあるなぁと思った。
この季節風シリーズの最初の作品集に収められた「春」にまつわる12編も、その味が満載だ。

◆ 父親入院の借金におわれながら、働く母が、やっとの思いで私に買ってくれた
小さな「おひなさま」の想い出(めぐりびな)

◆ ドラフトで指名されプロ野球選手になった野球部の先輩、野口さんが、戦3年後、クビになって郷里に帰ってきた。中学三年生の川村は、コーチを依頼する手紙を、自宅に投函するが、本人に怒鳴り込まれる。
付き合っていた、ショコが川村に言う「がんばれば夢は必ずかなうって思ってるでしょ」(48)
「がんばってもどうにもならないことって、たくさんあるんだよ」(50)。
再就職をする野口や、プロに誘ったスカウト、走り高跳びに挑戦するショコたちとの
ふれあいのなかで、何かが少しわかってくる川村…。(球春)

◆ 時の流れの中で消えていくけれど,忘れられない想い出。(島小僧)

◆ 自分自身も苦しいのに、わがままいっぱいだった自分に注いでくれた母の優しい眼差し。
(よもぎ苦いか、しょっぱいか)

◆ 長距離便大型車の運転手、ナベさんが、一人息子を事故で亡くしたときつくった地蔵。
運転手たちが、全国から運んでくる桜の花びらを全身にかけられる、お地蔵さんの話。(さくら地蔵)

◆ 故郷を出て東京で暮らしていた河村健一が、酔ってホームから落ちて亡くなる。
自分とよく似た境遇と44年間を思い、自分自身の影を感じ、お墓参りのため実家を訪ねる
フリーライター。(霧を往け)

◆ 小学校のとき交通事故で両親を亡くし、容姿はパッとせず、人と会うのが苦手な、一人暮らしの36歳の和生の部屋に日曜日の朝、マガツオ一匹をもって、30歳の翠が訪ねてくる。結婚したいと強く望んでいる相手だが本音が言い出せない…。
「ひとり」と「ひとり」が、ゆるやかな「ふたり」になる。
「ずっと一緒に乗ろう」(284)という会話が印象的。(目には青葉)

など次の12篇。
「めぐりびな」「球春」「拝啓、ポンカンにて」「島小僧」「よもぎ苦いか、しょっぱいか」「ジーコロ」「さくら地蔵」「せいくらべ」「霧を往け」「お兄ちゃんの帰郷」「目には青葉」「ツバメ記念日」 
「めぐりびな」「目には青葉」が特に好き。

◆◆ この作品は、強者礼賛ではなく、哀しい結末を迎えた人への鎮魂だったり
失意の気持ちによりそう眼差しだったりする。社会的に成功者といえないかもしれない
親であったり、子供であったりする。
よく言う、強者でも勝ち組でもない人たちの人生が、読者のボクの心ををじんわりとさせたり、
元気をくれたり…。そこに、何かしら豊かなものが息づいているのかもしれない。
◆◆

(重松 清著「ツバメ記念日 季節風・春」2008.3) 





本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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