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(ものがたり)

「君たちに明日はない」シリーズの第四弾。
「日本ヒューマンリアクト㈱」というリストラ専門の会社員8年目のリストラ請負人・村上真介が主人公。
リストラは、白か黒かを決めて、バッサリと人を切る非情な仕事。でも、彼は非情に徹しきれずに相手の将来を思い、自分のあり方に迷い続ける主人公。今回のリストラの対象はCA(キャビンアテンダント・客室乗務員、以前はスチュワーデスと呼んだ)・楽器メーカー社員・外食産業社員たち、社長の高橋が昔仕事に関わった元証券会社員たちも登場。

以下四話からなる。

「勝ち逃げの女王」

航空会社が舞台。浅野貴和子42歳のCAが登場人物。IT会社の重役の夫と二子の家庭。憧れて就いた仕事、その結論は?

「ノー・エクスキューズ」

真介が面接二課長に昇格。社長高橋に誘われ、年配の二人の男と飲む。二人はかつての山三証券の社員だった。
高橋の、会社設立の経緯が出てくる。

「永遠のディーバ」

楽器メーカー「ハヤマ」に務める46歳の飯塚正樹。元「ハヤマ」主催コンテスト準優勝の経歴をもつ会社員の彼が最後に下す決断は?

「リブ・フォー・トゥデイ」

外食産業「ハイラークグループ」に務める森山透。リストラだが特Aランクの彼を、会社は転籍誘導してグループの中の人材として残したい。さて、本人の真意と決断は?

(おもった)

◆ 様々な仕事が登場する。CAは合コン回数が多いとか。その内情がみえて面白い。個々の人間の逡巡や生きる道の選択。つまりは人間の生き方に、読後、新鮮な刺激がある。真介のアシスタントの川田美代子のホンワカとしたやさしさもいい。この巻では、社長の高橋が、なぜこの会社を興したかが第二話で語られ、会社創立の背景も出てきて物語に厚みを加えている。

◆ リストラを描きながら、美化していない。
会社や経済の非情に、真介やリストラの対象になる人たちが、人としてどう向き合って、どう本当の人生に歩きだすか。企業に操られるだけの人生じゃない、自分の生を求める姿にうるっとくる。リストラという重苦しいステージを扱いながら、読後感は爽快!

◆ リストラは重くて人生を左右する出来事、だから大きな痛みがある。でも、心のしなやかさや、開き直った勇気が大切。登場人物たちの歩みが教えてくれる。
悩みや逡巡の末に、本当に大事だと思うものに向かってリストラを受けた人たちが歩きだす、そして真介も、そんな人生に共感し励まされる。
これは、面白さ抜群の、人の自立を考える物語でもある。


(垣根諒介著「勝ち逃げの女王」2012.5新潮社)

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(お話)
◆ 恋人・陽子に「罰当たりな仕事」と言われながら、リストラ代行業「日本ヒューマンリアクト㈱」で、
リストラ請負人として働く真介が、様々な職種の人たちと関わるシリーズ第三弾。

今回は、英会話学校を舞台に、根無し草のように見える講師の武田優子のリストラに関わる
「ビューティフル・ドリーマー」。

旅行会社で、高い能力をフルに使わない、割り切った仕事ぶりにみえる、古屋陽太郎が登場する「やどかりの人生」。

自動車ディーラーに務め、実直で仕事に誇りを持つゆえに、会社の合理化方針に悩む整備士・宅間幹夫の決断。その彼に開けてくる新たな世界を描く「みんなの力」。

最初は、文学を志して入社した真潮社で、アウトロー的な写真週刊誌の編集に配属されて6年目。
突然、雑誌が廃刊宣告を受ける。今後の生き方に揺れる、日野恵の決断を描く「張り込み姫」。
四編を収録。

(思ったこと)
◆ 待ってましたの、シリーズ3冊目。
読みやすい。心地いい。

恋人・陽子との会話が楽しく笑える。時にしんみりし考えさせる。
はたから見える人の姿と、本人の真実や真意が徐々に見えてくるのも面白い。
「罰当たりな仕事」と恋人に言われたり、自分はなぜ、こんな嫌われる仕事を続けているんだろう
と時々考える真介。
陽子や親友の山下との会話の中に、彼が求めているものが語られる。

彼は言う。
歓迎されない仕事だけれど
おれはたぶん色んな人間の真実をみたい人間なんだと思う」
「どうせ誰かがやる仕事なら、おれでもいいんじゃないかって…。
その局面で相手を手助けできれば、なおいい」
 (141)
「普段はこの世間の表層には出てこない真実」がでてくる仕事だと思っている。

読んでいて、笑いつつ、人間の本質や仕事って何かなとちらっと思う。
彼の温かさや眼差し。
時にノーテンキにみえる、恋人や親友とのひと時も楽しい。

このシリーズ大好きっ!

(垣根諒介著「張り込み姫 ~君たちに明日はない3~」 2010.1新潮社)


◆ 安心して楽しめる。
リストラ請負会社「ヒューマンリアクト(株)」に勤める村上真介の仕事と恋を描いた、前作「君たちに明日はない」に続く連作シリーズとの繋がりを思い起こして読むと面白い。
こんな仕事をする真介という男。
冷血漢で、金と出世に凝り固まった奴かと思えば、全くちがう。
なんせ、彼自身、この会社の被面接者として前の会社のリストラ対象者だったし、今の恋人の陽子は、真介が今の仕事で面接した、リストラの対象者だった。
そんな訳で、真介は、面接相手の心の痛みにも気を配り、丁寧に処遇しようとする。
又、彼より8歳上の陽子(43歳)は「人のクビを切る仕事を、ビジネスにする」と、真介の仕事に批判的だ。恋人同士でも、思ったことを言い合う二人の会話は漫才のように笑える。
真介の会社の社長・高橋は、尊大さの無い、人間をよく観察する魅力的な人物として登場し、真介の面接補助者・川田美代子も一見「白痴美人」のようだが、その存在には魅力がある。

◆ 全5作品の内、「借金取りの王子」と「人にやさしく」が特に印象的だった。

真介は依頼されて、様々な業種の面接をする。
「二億円の女」(百貨店外商部)「女難の相」(大手生命保険会社総合職)
「山里の娘」(温泉旅館)など、仕事の内情や場面が描かれていて面白い。

 「借金取りの王子」の舞台は「消費者金融」だ。TVでは、ソフトなCMを放映しているが、仕事内容も新人研修も軍隊式だ。
ノルマを達成出来ない店長を、呼び出して人間性を貶めるような、激烈な脅しを含む「店長研修」の様子も描かれている。

「借金取りの王子」は、大学を出て、消費者金融「フレンド(株)」に採用された三浦宏明と、最初に赴任した小岩1号店の店長・池口美佐子との仕事と恋の物語だ。
 慶応卒でイケメンの三浦に、池口は「王子」の呼び名をつける。
当時彼女は四つ年上の26歳、中学時代から筋金入りのヤンキーで、単車の免許を取るとレディースを結成し、地元暴走族との乱闘で保護観察処分、夜間高校を中退する。故郷を出て、仕事さえ出来れば、学歴も男女差もないと考えて、今の仕事に就いたという経歴の持ち主だ。
 「王子」こと三浦は風貌などから、顧客に安心感をあたえ、貸付実績はトップだが、回収は苦手だった。優しすぎると池口から注意される。
池口は、一時間おきに上部から店長にかかってくる罵倒の電話にもめげず、部下への、口の悪さはあるが、プレッシャーは一身に受け、部下に一度も八つ当たりしない公平な上司だ。

三浦は、二年半後、昇進を断り続けた店長になるが、本部が求める実績は上がらず「店長研修」に呼び出される。
この場では「相互の意識改革」と称し店長同士が罵倒しあう。
ある時、珍しく池口が呼び出され、罵声を浴びせられる。
しかし、彼は罵声をかけることが出来ず、沈黙する。
なぜ声をかけない?と本部長から追求されるが「ぼくには、言えません」と言い切る。

部下の信頼が厚く、実績もある三浦への面接に、気分の重い真介の姿に、その会社の非情が透けて見える…。

三浦と池口は、その後結婚することになる。
そこに至る二人の姿と「本気」の愛情が心を揺さぶる。
これは彼女の口調を真似て言えば「安くない心の繋がりの物語」だ。
何が人生に大事なのかを描いていて絶品だ。


◆ 「人にやさしく」はブルーハーツの歌の題名。
この物語の最後に車の中で流れる歌だ。
リストラの仕事をしながら、真介が何を考えているかが、とても出ている。
「企業の一方的な都合だけでリストラされた社員も多くいる」と感じている
真介の行動とは? 興味深く読んだ。

◆ 真介のような仕事の主人公を描くのは難しい。
この物語は、リストラを美化する作品ではない。
恋の軽さではなく、思いの深さを描いている。
これからも、続編を描いて欲しいシリーズだ。

(「借金取りの王子」垣根涼介著2007,9)




垣根涼介著「君たちに明日はない」を読んだ。 
「ジャニーズ系のアイドルを、一晩糠漬けにしたような顔」の33歳の男・村上真介の物語。なんと彼は、リストラの面接などを請け負う首切り専門の会社の社員だ。彼自身もかつては、以前の勤務していた会社でリストラの対象となった経験があった。そのときの面接を今の会社の社長から受けて、ひょんな事から、この会社で働くようになる。

◆後に恋人となる・芹沢陽子という8歳年上の女性が、会社のリストラ候補として、彼と面接してきっぱりとした、芯の強い面を見せる「怒り狂う女」。

◆玩具メーカーで面接した、おもちゃ開発が大好きな緒方の姿に、かつてバイクのプロライダーを目指した自分を思う「オモチャの男」。

◆都銀の依頼で面接した池田昌男は、北海道足払(あしふつ)高校時代の同級生だった…「旧友」。

◆親近感とともに大笑いした、名古屋の町並みや風俗・食文化・名古屋弁が次々に登場してくる、飯塚日出子が「トヨハツ自動車(株)」のコンパニオンで登場する「八方ふさがりの女」。

◆数字的な実績が、ほぼ同じ二人の音楽プロデューサーの一方を解雇する資料を、音楽プロダクションから依頼される「去りゆく者」。(この物語には、過去のもう一人の真介の恋人らしき女性も登場)。
の五つの物語。

「首切り専門の会社」に勤める真介の物語なので、シリアスで重たいドラマを想像するが、軽快なテンポの文章。興味津々で惹きつける内容。とっても楽しめる作品。

主人公・真介。かつて、彼もリストラの候補になった。そんな過去があり、リストラされる人の痛みを知っている。だから上からの目線で人を見ない。自分が相手に辞職勧告する事への嫌悪も、今の仕事の魅力も抱えながら生きている。何より「世間の手垢」にまみれない意志を、からっとした人柄の中に包み込んでいる。
 …ってことで、本の題名にかかわらず、この本は「君たちにゃ明日がある」。
そんな読み心地だった。面白い。


垣根涼介著「君たちに明日はない」(新潮社 2005.3)






本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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