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エッセイストでロシア語の通訳者だった著者の、言葉とコミュニケーションを中心にした話が、下ネタやジョークを交えつつ、面白く語られている。

 同時通訳の限界と可能性の話。
表面的な言葉を、そのまま記号として伝えても、意味が理解されない。
それでは「言葉が持っている真の意味」が伝わらず、通訳の用を成さないと。
実際の演説をどのように通訳したかという実践例をひいて話している。
そこでは大胆に元の演説を加除し、大事なところを通訳している。
シンプルに演説のハートを取り出している。主旨がとても明快に伝わる。

また、依頼された専門的な会議で、通訳するときは、そのテーマにまつわる言葉を、あらかじめ頭に詰め込んで出席するとも。広い好奇心がある。通訳の対象者の言いたいことを、掴みとって伝えてやるぞ、という著者の構えが感じられる。

世界には1500から6000も言語がある、という話に驚いた。自分は視野が狭いなぁと思った。
「英語」を知ることで、世界を知る事が出来るなどと思いこまずに、英語以外に、もう一つ別の外国語を学ぶことで、複眼的に世界が見えてくるとも言っている。

「人間というのは他者とのコミュニケーションを求めてやまない動物」(P160)。
だから、みんなが一緒に笑え・感動できる事をめざして通訳をしているんだと、
自身の思いを語っている。
若くして旅立ってしまったが、ナマで講演を聴いてみたかった。
心通わせる言葉とか、文章の表現とかを考えさせられた。

四つの講演を収録。「愛の法則」「国際化とグローバリゼーションのあいだ」
「理解と誤解のあいだ」「通訳と翻訳の違い」。
     (集英社新書2007,8)