2009/05/17 11:01:39
図書館で借りたけど、手元に置きたくなった。
いいなぁ~この本。
◆ 鎌倉の谷戸に暮らす、辰巳さんの庭のこと。
季節ごとに咲く花々・畠で、野で育つ野菜・薬味にまつわる写真・エッセイ・料理レシピが、収められている、見る読む、作る食べると、いろいろ楽しめる一冊。
料理研究家・随筆家の辰巳さんは「西の魔女が死んだ」の魔女をイメージさせる人だ。
一つ一つの丁寧な暮らし方に、彼女のどっしりとした、生の構えをを感じる。
2月の文章で「待つ」という心情は「人間の深淵に属する埋み火」だといっている。
待つのも、人の技、心の技だ。
待つことは、ただの受身の、退屈な時間じゃないんだね。
7月に「梅仕事」という、梅にまつわる仕事のことが出てくる。
梅を育てて、剪定し、施肥する、そして、梅肉エキス・梅煮・梅酒・梅シロップ・梅干し・梅ジャム・梅ふきんなど、多彩な味や用途にする辰巳さんの仕事ぶり。梅という自然に寄り添う姿勢。
そんな仕事には、そのものが求める「先手、段取り、用意周到、念入り」があると彼女は言っている。
この本には、命の根源としての「食」、人の生を気持ちよくするための「食」という思いがたっぷりだ。
ゆったりとした料理、命に注ぐ眼差しの豊かさには、背筋をピンとさせてくれるものがある。
そして、読み進むにつれ、大きな安心感が、胸に広がってくる。
のびのびと、命を感じながら歩くことの平凡がいいんだ、と感じさせてくれる。
(辰巳芳子著「庭の時間」2009.3文化出版局)
◆写真は昨日、雨の中のバラ。
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