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「奇跡のリンゴ」を読む前に、書店で見つけて読んだ。
これは、常識を覆した人の実践の記録だ。
これは、経済や農業の本というだけでなく、文学でもあり、哲学の本でもある。

◆ 彼が覆したもの。
「リンゴは、農薬と肥料なしに作れない」という常識。

リンゴの樹が、真っ白になるほど、散布する農薬。
皮膚がむけ、最盛期には、妻の美千子さんが一ヶ月も寝込むほどのかぶれ。
そんなことから農薬に疑問を持ち、リンゴを、無農薬・無肥料でつくろうと歩きだす。

そして、10年ちかい歳月を経て、花が咲き実をつけるようになるが、その間の暮らしの凄まじさ。
一向に成果が出ない木村さんの試みに、村八分や近所からの怒声。
「かまど消し」という厳しい声。二人の子供たちの学費にも困る暮らし。
キャバレーや出稼ぎでの日々。
万策尽きたと悩んで、自殺するつもりで踏み込んだ山奥で見たどんぐりの樹から、自然の土や環境が、リンゴにも必要なんだと啓示を得て、次の日から新たな実践を重ねる。
畑の土を山の土に近づけよう。樹に自然に近い環境を作ろうとする。
大豆を植えたり、樹の周りに雑草を茂らせたり…。
害虫といわれる虫たちの被害のリアルな観察と、農薬の効能の真の姿。雑草の役割とリンゴの生育のこと。当たり前と思っていた常識が「観察と実験の事実を通して、自分の頭で考える」木村さんによって覆されていく。

自殺の場で、木村さんが啓示を受けたことは、偶然じゃない。
諦めきれない、一見不可能に見える農業の理想への執着が、木村さんを
生のエネルギーに向かわせる。それまでの木村さんの本気の実践が、生への反転を
後押ししていると思う。

木村さんの観察と実験が、自然という書物の扉を開ける。
それまで、繰り返された、膨大な、実践と失敗の長い歳月の中から開かれたぺージ。
だから、自分と同じ失敗を繰り返して欲しくないと「自然栽培」を志す全国の人たちを訪ねている。「主人公は人間ではなくてリンゴの木やイネ」で「人間はそのお手伝いをしているだけ」だと伝えながら。

◆ 読んでいて思った。本気で学ぶ人ほど謙虚だ。
失敗がだめなんじゃない。失敗に負ける心のあり方が哀しいのだ。
自殺の誘惑から起き上がって、もう一度歩きだす木村さん。
そして、無農薬・無肥料で糖度が高くて、安全なリンゴを実らせる。
このことが、いかにすごいことかと思う。農業界のガリレオみたいだ。
自然とか農業を思うほど、大げさでなく、そんなことを感じる。
そして、かしこい消費者が、豊かな農業をそだてるのだと読んでいて感じた。
有機農法の看板がすべて、安全な食物を育てている訳じゃないこともわかった。

農業の本という世界を超えて、文字通り「実り多い」人生に美味しい一冊だった。味噌汁みたいに、飽きの来ない味わい。
サンキュ!の一冊。

(木村 秋則著 「リンゴが教えてくれたこと」 2009.5 日本経済新聞社・新書)

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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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