2007 / 10
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「NO.6」は、あさのさんの作品の中で一番好きな作品だ。
この巻では、聖都市NO.6が抱える闇の場所である矯正施設。その地の底にやってきた紫苑・ネズミが、その創世にかかわった一人である長老の口から、NO.6が生まれてきたいきさつを聞かされる。理想都市を目指したはずだったものが軍備を備え、虐殺さえも侵してきたその歴史とは…そして、謎に満ちたネズミの過去…。

物語に出てくる印象的な言葉たち。それも魅力だ。 
例えば紫苑の思い…「自分に言い聞かす。信じろ。ぼくはぼくなりに力を蓄えている。自分を信じきれ。自己嫌悪に陥ることも、挫折感に浸ることも、容易くはあるけれど意味はない。自分を信じることは力だ。その力を糧として、武器として、乗り越えられる困難は数多ある。」(P14)
「自分で答えを探す。掴む。読み解く。たとえネズミであろうとも、他者は他者。他者の言葉に寄りかかっていては、真実は捉えられない。想像を超える現実と対峙できない…。自分で捉えるのだ。」(p17)。

ネズミの激しさ厳しさの中に流れる優しさ。強靱な精神力と行動力。彼はかっこいい!
 ネズミにあこがれ、未知の世界を知りたいと思い、狭い自分を乗り越えようともがく紫苑。共感し、応援したくなる。持ち味は違っても、NO.6に戦いを挑む、彼らの気合いが元気をくれる。悪態をつきながらも、彼らを応援するイヌカシも粋だ…。

新刊を読んだばかりなのに、続編が楽しみだっ。



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エッセイストでロシア語の通訳者だった著者の、言葉とコミュニケーションを中心にした話が、下ネタやジョークを交えつつ、面白く語られている。

 同時通訳の限界と可能性の話。
表面的な言葉を、そのまま記号として伝えても、意味が理解されない。
それでは「言葉が持っている真の意味」が伝わらず、通訳の用を成さないと。
実際の演説をどのように通訳したかという実践例をひいて話している。
そこでは大胆に元の演説を加除し、大事なところを通訳している。
シンプルに演説のハートを取り出している。主旨がとても明快に伝わる。

また、依頼された専門的な会議で、通訳するときは、そのテーマにまつわる言葉を、あらかじめ頭に詰め込んで出席するとも。広い好奇心がある。通訳の対象者の言いたいことを、掴みとって伝えてやるぞ、という著者の構えが感じられる。

世界には1500から6000も言語がある、という話に驚いた。自分は視野が狭いなぁと思った。
「英語」を知ることで、世界を知る事が出来るなどと思いこまずに、英語以外に、もう一つ別の外国語を学ぶことで、複眼的に世界が見えてくるとも言っている。

「人間というのは他者とのコミュニケーションを求めてやまない動物」(P160)。
だから、みんなが一緒に笑え・感動できる事をめざして通訳をしているんだと、
自身の思いを語っている。
若くして旅立ってしまったが、ナマで講演を聴いてみたかった。
心通わせる言葉とか、文章の表現とかを考えさせられた。

四つの講演を収録。「愛の法則」「国際化とグローバリゼーションのあいだ」
「理解と誤解のあいだ」「通訳と翻訳の違い」。
     (集英社新書2007,8)




垣根涼介著「君たちに明日はない」を読んだ。 
「ジャニーズ系のアイドルを、一晩糠漬けにしたような顔」の33歳の男・村上真介の物語。なんと彼は、リストラの面接などを請け負う首切り専門の会社の社員だ。彼自身もかつては、以前の勤務していた会社でリストラの対象となった経験があった。そのときの面接を今の会社の社長から受けて、ひょんな事から、この会社で働くようになる。

◆後に恋人となる・芹沢陽子という8歳年上の女性が、会社のリストラ候補として、彼と面接してきっぱりとした、芯の強い面を見せる「怒り狂う女」。

◆玩具メーカーで面接した、おもちゃ開発が大好きな緒方の姿に、かつてバイクのプロライダーを目指した自分を思う「オモチャの男」。

◆都銀の依頼で面接した池田昌男は、北海道足払(あしふつ)高校時代の同級生だった…「旧友」。

◆親近感とともに大笑いした、名古屋の町並みや風俗・食文化・名古屋弁が次々に登場してくる、飯塚日出子が「トヨハツ自動車(株)」のコンパニオンで登場する「八方ふさがりの女」。

◆数字的な実績が、ほぼ同じ二人の音楽プロデューサーの一方を解雇する資料を、音楽プロダクションから依頼される「去りゆく者」。(この物語には、過去のもう一人の真介の恋人らしき女性も登場)。
の五つの物語。

「首切り専門の会社」に勤める真介の物語なので、シリアスで重たいドラマを想像するが、軽快なテンポの文章。興味津々で惹きつける内容。とっても楽しめる作品。

主人公・真介。かつて、彼もリストラの候補になった。そんな過去があり、リストラされる人の痛みを知っている。だから上からの目線で人を見ない。自分が相手に辞職勧告する事への嫌悪も、今の仕事の魅力も抱えながら生きている。何より「世間の手垢」にまみれない意志を、からっとした人柄の中に包み込んでいる。
 …ってことで、本の題名にかかわらず、この本は「君たちにゃ明日がある」。
そんな読み心地だった。面白い。


垣根涼介著「君たちに明日はない」(新潮社 2005.3)






 じんわりふんわり加納節。つい読んじゃう人です。本の題名もいい。子供の頃も今も、暮らしの中に不可解な出来事や人の様子がある。そんな事件の謎を解いていくことに憧れるのはいいなぁと思う。子供でも大人でも。話の筋はおくとして、いろんな子供たちが出てくる。森(しん)、十時(ととき)あや、ココちゃん、竹ちゃん、勝、そしてパック。

特にミステリアスなパックの存在。ある時は、実体のない五年二組の鈴木君だったり、野良犬を自認したり、学校に行かないのに勉強ができたりする。読んでいて、どんなヤツかとっても気になる。
彼は、世界に存在しないことになっていて、親兄弟のない天涯孤独のはず…。まわりの子供たちの助けが必要だけど、それ以上に子供たちはパックを必要としている。そんなヤツだ。そつなく、子供たちの家を泊まり歩いたり、親友同士を引き裂くことになったバカオヤジに、ひとあわふかすという知恵と行動力も持っている…。

「名探偵にあこがれて生きるっちゃ!」(と加納さんは、ボクに言っているんじゃないかなと思った。)
パックを登場させることで、例え孤独で苦しいときでも、「恐怖や不可解の理由」を解き明かして、心の荷物を軽くするような歩みをしよう、と言っている。
「友だちと知恵」を持って、新鮮な目と、耳を持とうと言っている。
生きていることの日々の謎を解いて、本当の絵を完成させる、そんな探偵のハートを持とうぜと言ってる。


加納朋子「ぐるぐる猿と歌う鳥」(講談社 2007/7)





上橋菜穂子著「隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民」を読んだ。
小説家であり、文化人類学の研究者でもある上橋さんが、国を訪ね、当事者や白人の話を聞ききながら、
町の中で暮らしているオーストラリアの先住民・アボリジニの実像を考える一冊。

この本で、白人たちが入植し、先住民だった・アボリジニたちの文化や生活が資本主義社会の波のなかで激変し、その固有の世界や文化が、抑圧と差別をうけ翻弄される歴史があったことを知った。そして、どんな荒波の中にあっても変わらない、先住民としてのもう一つの世界を彼らが今も、もっていることも。

そんな歴史を振り返りながら、「自然淘汰される運命にある劣等人種」「高貴なる自然の民」などのステレオタイプの評ではなく、彼らの歴史の源流をたどり、その人たちと係わり肉声を聴き、生の感触を得ながら本当の姿に近づこうとする。(地味で地道な歩みだ。)
そして、矛盾を抱えながら町で暮らしている最近のアボリジニの実像を探っていく。

この本はファンタジーではないので、血が騒ぎ肉踊るワクワクはない。
でも、表層のイメージにとらわれないで、物事の源流を訪ねて「あたりまえ」の出来事の深部に流れている「なぜ」を解き明かそうとする粘りと逞しさがある。そんな上橋さんの本。
そこに、バルサの強さとルーツを見た。


 隠岐島(おきのしま)の相撲大会の取組の一日。特に英明と田中敏夫の両大関の決勝戦を描いている。二人が壮絶な闘いを繰り広げる描写は、手に汗握る迫力があって印象的だった。

日常のボクラの日々の中で、苦しい時の例えで「今、土俵際に立たされている」と表現したりする。
この小説では英明が、不眠や不安と闘いながら決勝戦の土俵で相撲に臨む姿が描かれている。そこには「どうせ無駄だ」という諦めの心を超えようとする姿がある。苦境のとき踏ん張って全身のエネルギーを集中する「渾身」で生きる彼がいる。

 「渾身」とは、実は自分を諦めない心のあり方や、生き方と強く繋がっていて、そこから発散される力のこと。そんな生き方が、自分も、家族も人との絆もイキイキとさせるんだなぁ。そんなことを思った一冊。

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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