2007 / 12
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ネットの本好きさんたちと、その年に読んだお気に入り本を交歓しあっている。
(興味のある方は、トマさんのところの「本の♪大雑談」にどうぞ!)

今年も、2007年の大好き本を決める時期が来た、が、なかなか決まらない。
個人的な今年の収穫は、上橋菜穂子さん「精霊の守り人」などの「守り人」シリーズで外せない。
彼女の本では、年末のこの時期に入手した「獣の奏者」にも期待している。読みたくてワックワクだ。
前から好きな、川上健一さんの「渾身」も印象に残る。
エッセイや対談では、鎌田實さんの本をかなり読んだ。
小路幸也さん「東京バンドワゴン」の二冊もしみじみと心を暖めてくれた。
山本幸久さんや豊島ミホさんの本も印象深い。
考え出すと、あれもこれもと出てくる。

今年の本たちとのことを、振り返るのは、悩ましくも楽しい時間だ。
あなたのお気に入りの本のことも。
「本の♪大雑談」で、ぜひ!ぜひ!

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◆ 中学二年生の遠藤は離婚した母と二人暮らし。
ある日、朝礼で倒れて眼鏡が壊れる。
修繕したくても、逼迫した家計を知る彼は困惑する。
それを察した、友人・宇崎の紹介で、中学生だけで運営する、秘密のアルバイトに加わる。
仕事の責任者・三上ハルヒコの秘書兼ボディガードとなる。
安く買い高く売って、儲けるトレーディングカードなどのネット販売をするというのが、その会の仕事だ。
ある夜、三上と居たとき、顔を隠した男の襲撃をうけあやうく難を逃れる。同じ夜、バイトの宇崎も、男たちの襲撃をうけて、大けがを負う…。
そして、同級生・吉川ミチル。放送室から大音響でヘビメタを流し、朝礼の時、屋上にマスクで現れ、ビラをまいたり…。数々の奇行癖を持つ彼女の素顔とは…。

◆◆ 中学生の主人公・遠藤が人間の中にある「魔物」と出会う話だ。
つまりは、人間について、新たな目を開いて、この世界を見つめていく話。
誰かの中の「魔物」を見つけるだけでなく、自分の中にも棲んでいることに気づく。そこから、人間は「魔物」で、どうしようもない生き物だと、悲観的でニヒルな色だけに、世界を塗りつぶしたりしない。この世界には(つまりは「人間」という生き物には)「魔物」が生息している。それを、知って生きようと言っている。人が持っている悪だくみや、暴力性という「魔物」。それに、蓋をしたり、自分は関係ないと思ったり、長いものには巻かれろと擦り寄ってみたり、訳もなく恐れをなしたりすんじゃなく…。もっと心や命の「筋トレ」に励もうぜっ!と言っている。

◆◆ この言葉がいい。
「闇を嫌って光を求める人の心はもろくて弱い。醜いものや不愉快なものに恐れおののく人々は、自分自身の醜さや愚かさを知ることもない。吉川はそれを知ったのだ…目をそむけたくなるものたちから目をそらしてはいけない、と。」
(172)

(笹生陽子著「バラ色の怪物」講談社文庫2007,7)


東京に来て、大学生活をおくる男女の、笑いと、ほろっと、むむっ!な日々。
読み出したら、これは、ドタバタの軽薄学生ドラマかなと思った。
もっと、自分の軽薄さに磨きがかかると、ヤバイなぁと思いつつ、恐る恐るページをめくる…。
読みすすむほどに、心をほぐす、オモシロドラマの世界が…。

◆三年生になるまで、何にもして来なかった反省として原田の突然の呼びかけで、
部屋に入り浸っていた同級生二人と彼は「童貞メガネーズ」を結成する。
そして、誰も振り返らないキャンパスで、お笑いライヴを始める
「デブ、しゃくれ、若ハゲ」の陸奥男、仁田、原田の三人。
この小説の他の作品にも出てくる、彼らのお笑いライヴの場面にちゅうも~く。
(見ろ、空は白む)

◆田舎町から「世の中をよくする」自分を夢見て大学にきた道子。
入学式の喧騒の中で、優しく毅然とした先輩・及川緑にジャンヌダルクの
面影を感じて惹かれる。「正しく賢いやり方じゃない」とクラスメートから
評されるサークル「不戦をうったえる会」に入って、自分の無力を感じながら
、緑と共に歩き出す道子。
(いちごに朝露、映るは空)

◆高校時代の失恋のトラウマに懲りて、大学に行ったら「サクッと賢く生きよう」
と、勢いだけで付き合いだして、かわいいみゆちゃんとデートをするが、しっくりしない。
やがて、軽くなりきれない自分に気づいて、みゆちゃんと別れて歩きだす長浜。
(雨にとびこめ)

◆映画サークルの会議で「女性向けピンク映画」を撮りたいと、所属していた
サークルの脱会宣言をする継代、まるちゃん、香純。
脱会して、意気揚々と、映画の男優スカウトを始めるが…。
(どこまで行けるか言わないで)

◆いつも「ほどほど」でガマンして、地道に生きる四年生の貴理子。
人とのかかわりを避け、成績・優を目指してきた大学生活。
それが自分にお似合いだと思う一方で、飽き足りなさも感じていた。
四年生で始めて参加した、クラスコンパで思いのたけをぶちまける。
(リベンジ・リトル・ガール)

◆学生作家として、大手出版社の文学新人賞を受けたが、自分の今後に自信がもてず、
就職活動をする三島だったが、迷いながら、やはり文学の道を歩こうと決意して言う。
「…やっと一輪の花を咲かせることができた時、それを誰かに拾ってもらえればいいなと思う。」(275)と。
(花束になんかなりたくない)

以上六編を収録。
他にも印象に残るキャラ。「目だけ柴犬の暴力団員」のような顔の角田。
サークルのピンク映画の男優になるアズマ。
「童貞メガネーズ」のファンクラブから始まって、あれこれ変転のある星子など。

■読んでいて、自分の学生時代を思い出した。
当時のクラスメートたちを、思い出した。

印象的だったのは、角田が「童貞メガネーズ」たちのことを語る場面。
何もして来なかった、自分たちを変えたいと、彼らがキャンパスで始めたお笑いライヴは、
(聴衆に)十人居て九人が笑わず、無視されても、彼らは続けたんだなぁ…と。
新しいことを始めて、続けた彼らのことを語る、この場面がいい。

この物語に出てくる、冷笑や劣等感などは、学生時代に限らず
、生きている様々な場面に顔を出す。
何かを始めること。続けていくこと。
軽やかさと気合のミックス。大事だなぁ。

(豊島 ミホ著 「神田川デイズ」 角川書店 2007,5)

大事件も、ヒーローの活躍もないけれど、進行役のかあさんの語り口のゆったり感。
穏やかで温かい空気が物語の全編を流れる。
作品の中に「人が好きだ」という強靱な芯がある。
源泉かけ流しの良質温泉のような作品(笑)。
その源泉は「生きていることのステキさ」の湯。
物語のなかで、こんこんとこんこんと湧いてくる。

正月に読むと、いい年が始まるかもの一冊。

◆ 古書店「東京バンドワゴン」に持ち込まれた貴重な本「古事類苑」の中身のページが
くり抜かれていた…なぜ?
 隣接する喫茶店に、置き去りにされた赤ん坊は…?
「冬百科事典は赤ちゃんと共に」

◆ 自分で売りに来た本を、なぜか毎日一冊ずつ、変装をして買いにくるおじいさん?
小学六年生の花陽が、古書店のなじみ客・藤島へよせる淡い想い。
堀田家の未婚の母・藍子をめぐって、藤島が、同じく藍子を好きなマードックに恋の宣戦布告?
そして、順調なIT企業の社長の立場を捨てても果たしたい過去の事件とある決意。彼の哀しみや想いとは?藤島の危機に堀田家の男たちは立ち上がる、その行方は…?
堀田家の過去と現在が明かされる。「春、恋の沙汰も神頼み」


◆ 花陽が遊びに行った旅先で、見知らぬおばあさんから家への土産に託された本。
それは戦時中の幽霊のようなコピー本。
その本に、若き日の勘一の写真、裏には英文の記載が…それを見て勘一は、その老人に会いにいく。
時代・人の別れと再会。79歳の古書店主・勘一の、ほとばしる言葉が切なく熱く心に沁みる。
この本で一番好きな作品。「夏 幽霊の正体見たり夏休み」.

◆ 今では底抜けに明るい堀田家の過去。
60歳にして現役ロッカーの我南人の妻で、堀田家の太陽のような存在だった秋実が病没して、家族が危機に。どんなふうにして、堀田家は生まれ変わってきたのかが見えてくる一編。それにしても、4話の結末。我南人LOVEだねぇ~。「秋 SHE LOVES YOU」
以上の四篇を収録。

☆★「傷は消えないけど、人間は服を着る動物じゃないか。着る服は自分で選べるんだぜ」(143)は、二編目で、大切な肉親の死の悲しみを思い出して、やりきれない藤島の哀しみに堀田家の男たちが、総動員で語りかける。彼に語りかけられる言葉。
そして、三篇目で、勘一が怒りながら泣いて、大切な人に話しかける言葉がある。じ~んときた。(ここまで書いた以上に、ネタばれになるので書かないけど大好きな言葉。)
又、読み返したくなる、しみじ~みといい作品だった~。★☆

(小路幸也著「シー・ラブズ・ユー 東京バンドワゴン」集英社2007,5)


 岡山で暮らしていた12歳の朋子が、父を亡くし母と別れて、神戸の芦屋の伯父たちの一家と一緒に暮らす、一年あまりの日々のこと。
芦屋の家は17部屋もある洋館で、ドイツから日本に嫁いだ83歳のローザおばあさん、印刷物の誤植を探す伯母さん、ダンディな伯父(エーリッヒ健)さん、通いのお手伝いの小林さん、おばあさんと仲良しで56年住み込んで家をしきる米田さん、コビトカバのポチ子、朋子の一つ年下でマッチを集める従妹のミーナ(美奈子)が暮らしていた…。

◆ 多色刷りの挿し絵が美しい。新しい家は、昔、敷地内に動物園があったほど広い。初めて駅に迎えに来た伯父さんの車はベンツ。金持ち暮らしの夢がかなう物語という感想があるもしれない。
芦屋での暮らしから、30年を経た朋子が回想する過去を懐かしむ物語でもある。
暖かくほのぼのとした物語の空気の中に、老いのこと、病のこと、戦争がもたらす愚かしさと悲惨、伯父夫婦の影、いろいろなテーマがあって、物語の多彩な楽しみ方がある。
確かに、懐かしむ物語ではある。でもそれだけじゃない。
ポチ子のしぐさと、それに乗って通学するミーナにユーモアがある。でもそれだけでもない…。
喜びも哀しみも含んだ、ふくよかな作品。

◆ 一番印象的なのは、ミーナという少女のこと。
マッチ箱のラベルにまつわる豊かな物語を紡いで、箱に書き付ける想像のチカラの豊かさだ。病弱な自分の限界を越えようとする心の「遠出」はステキだ。

そして、見逃しがちな誰かの生の場面を、ミーナは見ている。
ミーナと朋子のバレーボール談義は楽しい。 
中で、ミュンヘン五輪の日本の男子バレーボールチームの猫田選手がミーナのお気に入りだ。
試合の華・スパイクで得点を決めるごとに注目し歓声をおくる観客。その影でトスをする場面は見落とされがちだ。たんたんとトスを上げる猫田選手。
ミーナは彼へのファンレターに書いた。
「その静けさの中には、次の瞬間に起こる爆発の準備が、もう整っています。」(P227)と。
そのミーナから猫田への手紙を、朋子は「一筋の光のようなパスだった」と表現した。

◆ そしてもう一つの感想。
誰にでも存在している「時間と日常」を個人がどんな風に受け止めて歩くのかということ。
病弱だったミーナが歳月を経て変化していく姿。
それが「ミーナの行進」でもある。
それは、世界を読みとって自分の世界を広げていく歩みなんだなぁと思いながら読んだ。

(小川洋子著「ミーナの行進」中央公論新社2006,4)


◆ 仙台で、凱旋パレード最中の金田首相が、ヘリコプター型ラジコンによる爆弾で暗殺される。当日一緒だった、大学時代のサークル仲間・森田から、ケネディ暗殺事件で葬られた容疑者・オズワルドのように、大きな力に陥れられるぞ、逃げろ!と青柳は告げられる。
突然降りかかる首相暗殺犯の容疑。
青柳の穏やかだった日常が、命を懸けた、逃走と緊張の日々に変わっていく…。

◆ 全編に散りばめられた笑い。
恐怖と息詰まる緊迫感。
マスコミや権力への辛辣な批評。
気の利いた言葉たち。
読書の楽しさを堪能させてくれる傑作。

◆ 笑いあり、サスペンスありのハラハラワクワクの物語の芯に
「個人の日常と世界との繋がり」というテーマが流れている。
「個人的な生活と、世界、って完全に別物になってるよね。本当は繋がってるのに」という会話が出てくる。全く無関係なはずの首相暗殺の容疑が、ある日、市井の個人にふりかかり、周りの友人・知人・家族を巻き込こんで、日常を一変させていく。

◆ 繰り返し出てくる、大学時代の仲間・森田の言葉。
「人間の最大の武器はなんだか知ってるか?習慣と信頼だ」。
という言葉が印象的だ。
「日常の決りきった行い」という意味の「習慣」は「第二の天性」ともいうそうだ。習慣が個人にいかに沁みついているかが、作品の落ちにも出てきて笑えた。青柳が真犯人ではないと知人たちに思わせるカギでもある。
もう一つの言葉「信頼」はとても重要な言葉だ。青柳を取り巻く友人・知人・両親たちの彼への信頼が、絶望して諦めそうになる彼を励まし、逃走の力になっている。
それは、日常を支える力であり、日常を越えていく力にもなる。
「習慣と信頼」は反復と持続の中で、意志を育てていくチカラなんだろう。


◆「習慣と信頼という武器」とは「日常と世界を繋いでいく武器」でもあるんだなぁとも思った。

♪アオヤギさんからお手紙ついた~♪

ってことでオススメ!

(伊坂幸太郎著「ゴールデンスランバー」新潮社2007,11)


◆ 時代小説は滅多に読まなかった。風俗などに違和感を感じて意欲がわかなかった。
でも読み始めたら、この作品には惹きつけられて読んだ。
派手じゃない、静かで澄んだ言葉たちの深い味があった。
 立ち止まって、自分の「生」を振り返らせるような物語があった。
機械化されない、されちゃいけない、体温を持って生きる人間が持っている、人としての香り。それらが、立ち上ってくる。静かな部屋で、命の鼓動をあらためて確認するような短編集。


◆ 旅籠を営んでいて、平穏だった家が火事をだして家族が壊れる。
かつ江は、母の言いつけで10歳で奉公に出された。年季明けの6年後、失意の時に拾われて、夜の世界へ。そんな暮らしの中で一生を保証すると身請けした男から別れ話を切り出される…。(「芥火」)

◆ 兄の急死によって、父の懇願をうけた由蔵は、魚油問屋家業を継ぐことになり、心ならずも小紋の型を彫って生きる道を捨て、好きだった女とも別れたが…。(「夜の小紋」)

◆ 家の没落で年季奉公に出された、いしは、見初められて20歳で表具師・要作に嫁ぐ。要作が亡くなり一人できままに質素な暮らしをする。娘・さよに自分との同居を勧められるが…(「嘘舟」)

◆ 戸田の家に養子にはいった新次郎は妻・多実、息子・兼太郎たちとの暮らしに充実を見いだせない。いつしか20年の時が過ぎ、偶然出逢った陶工から焼き物の深さと充実を知る。そこには、ふきとの出逢いもあった…。(「柴の家」)


◆ さのは、仕事で不在がちの仏具師の夫・柳吉と息子と共に移り住んだ土地になじめず暮らしていた。ある日、夫の浮気相手の女が、訪ねてくる…。(「妖花」)

新しい人生に、歩きだそうとする人間模様を描いた以上五編を収録。「柴の家」が一番好きだ。

(乙川優三郎著「芥火」講談社2004,9)




◆ 美晴さんは27歳で独身、古本屋でバイトをしている。
兄・学とその妻・宇美子・中学生・世宇子・小学四年生・翔の四人の兄たち一家と同居している。
(後に父の弟・勉の子・高校生の自由も同居)。
その一家を中心に美晴さんが巻き起こす、はちゃめちゃに見える日々(例えば母の葬儀の最中に行方をくらまして奈良や京都に行ってしまったり、風邪を引いて寝ている世宇子に、ジャックダニエルで玉子酒をつくって飲ませたり…)。
そんな彼女が、好きな人を見つけて家を出ていくまでの、笑えてほろりの物語。


◆ からっとしていて読後感がいい。破天荒な美晴さんの日々に笑えろ。ホロリとさせられる。読み終えて気分がいい。
登場人物たちに躍動感があって、あぁ、生きているんだなぁ~と感じさせてくれる。
ずれていて、はちゃめちゃに見える彼女の行動の奥に「あ~でもない。こ~でもない」と何かを探しているのを感じる。
人の気持ちの中に沁み込んでくる、微笑ましさ優しさがチラチラする。

突拍子のない行動の奥に、本当の日々を探す「求める思い」があったりする。
そして、嘘を拒む気持ちや、人の優しさが潜んでいる。それが見えやすいポジションにいる子供たち。彼女の行動に文句を言いながら、その言葉や仕草に、似てくる。笑ってしまう。


おもしろかった~。美晴さんが使う言葉が感想。
「おそれ入谷の鬼子母神」だぁ(笑)。

(山本幸久著「美晴さんランナウェイ」集英社2007.4)



本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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