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2008 / 01
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◆  中学生二年の沢村幸彦は、友だちと思っていた綾瀬涼平に、突然、急斜面にけり落とされて重傷を負い、右足の後遺症が残って、大好きだったバスケットボールが出来ない身体になってしまう。
そして、死ぬ程の重症を負わせながら、加害した涼平からは、その説明も無く、会うことも出来ない。
突然の不合理な事件に、周囲に心配をかけまいと、家族やクラスメートに、元気いっぱいな姿を振舞って来たが、心の中は周囲の幸せそうな姿に嫌悪感を抱いていた。
家族の励ましに、重荷を感じていた。
療養後、一学年遅れで復学した学校で、化学オタクの中川京一や、同じクラスに寡黙で片目に眼帯をした中川かごめに会う…。

◆ 不合理な突然の出来事にあったとき、人がどんな思いを抱いて生きるのかという大切なことを描いている。周囲に合わせて元気を装ったり、怒りをぶつけたり、死を考えたり…。
辛くて落ち込んだとき、中川の励ましの言葉を使わずに、さりげなく彼を支えてくれる態度。
寡黙だと思っていた、かごめの多弁な別の姿に触れる…。

◆ 人は生きている中でいろいろなものを失って「穴が開いていく」「だけどぼくには新しい何かが違う場所に付け加えられていくだろう」(153)彼は逞しく生きていこうと決める。
綾瀬の兄と合い、涼平は「大事なものを壊す悪癖」があったということを知る。
父親が母と別れて家を出て行ったとき「いつか」なんてないんだと、大事だった父が作ってくれたおもちゃを壊した涼平の思い。
幸彦は、もやもやと生きるのではなく、綾瀬涼平に会って自分が直面する問題と真っすぐ向き合うことを決める。
「この世に大切で頑丈なものはある。必ずある。」(231)と伝えたいと思いながら…。

◆ 物語の中に登場する「やつら」とか「さかなたち」の意味が伝わってこない。
大切なテーマを描いていることは感じたが、家族・クラスメート、そして中川やかごめの人物描写を、もっと整理して深めて欲しかった。
今後は、本物の「でかい月」を見るような、大きな面白い物語を書いていって欲しい。

(水島サトリ著「でかい月だな」集英社 2007,1)



本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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