2008 / 04
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 いつも側に置きたい本。
乳がんの再発患者・松村尚美さんと、諏訪中央病院の医師・鎌田さんとの往復書簡。
「中学生がペンフレンドに手紙を書いているようなリズム」で
「ぼくのなかの少年が戻ってきているのかもしれません。」(P94)
と自身で形容している、鎌田さんのみずみずしい文面。

 そして、直美さんの詩的で深い文面。
「怖さと向き合うことで、やっと今をしのいでいます。向き合っているからこそ、周りのあたたかさを受け止めることができます。自分の足で立っていること、両手をひろげていること、そうでなければ何も受け止められません」(P19)と、時に凛として、時に辛い心情をかたる手紙に、何度も胸が熱くなる。

◆ 逢ったこともなく、離れたところで暮らしている直美さんや読者に元気を出して欲しいと
自分の医師としての知識のほかに、免疫学や栄養学などの専門家との対談も載せている。
形式的でも難解でもない「命の味方」といえる内容だ。

イラクの難民キャンプで、子どもたちの診察をしていたとき、電話で尚美さんの訃報をきく。
その無念の思い…。
 どんな人にも、命の終幕の時はくる。
尚美さんは逝ったけど、命とまっすぐ向き合って、自分らしい生き方をもとめ続けた
彼女の視線…。
面識のない一読者のボクに、忘れられない深い印象を残した。

◆ 題名が示すように、がんに負けないコツが書かれている。
同時に、病気の有無にかかわらず
「生きる力を、心の深みのところで呼び覚ます本」
だと感じた。
いつも側にいてくれる命のパートナー。
超のつく、オススメ本。


(鎌田實著 「がんに負けない、あきらめないコツ」 朝日新聞社 2006.3)

◆ 《鎌田さんの公開生放送》
◎5月5日(月) 9:05~11:50 NHKラジオ第一 公開生放送(京都府長岡京)
「鎌田實・いのちの対話」 テーマ「生き方の作法」
   ゲストと鎌田さんがテーマをめぐって対話をし、ゲストの音楽を楽しむ番組。
過去のここでの対話は
「いのちの対話」(さだまさし・小椋佳など。)
「いのちとユーモア」(永六輔・西村由紀江など。)集英社から刊行されています。



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本屋大賞が発表された。
過去四回のこの賞に作品がノミネートされたことのある伊坂幸太郎さんが
「ゴールデンスランバー」で受賞した。
最終候補10冊のうち、読んでいなかった桜庭さんの2作以外の作品で、自分なりに
8位までの順位をつけて、遊んでみた。
本屋でなく、読者の立場だから「読者大賞」かな(笑)。

   ワタクシ的「読者(本屋)大賞」()は本屋大賞作品。
1. 「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎著 (「ゴールデンスランバー」)
2. 「悪人」吉田修一著        (「サクリファイス」近藤史恵著)
3. 「八日目の蝉」角田光代著      (「有頂天家族」森見登美彦著)
4. 「カシオペアの丘で」重松清著        (「悪人」吉田修一著)
5. 「映画篇」金城一紀著           (「映画篇」金城一紀著)
6. 「鹿男あをによし」万城目学著     (「八日目の蝉」角田光代著)
7. 「有頂天家族」森見登美彦著   (「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹著)
8. 「サクリファイス」近藤史恵著   (「鹿男あをによし」万城目学著)
9.                      (「私の男」桜庭一樹著)
10.                  (「カシオペアの丘で」重松清著)


本は好みだなぁ~。
一位と五位以外、大賞と違っているのが面白い。(笑)
この10冊を、最終作品にするかどうかも意見がわかれる。
たとえば、重松さんなら「青い鳥」をここに入れたい。

本好きな方は、読者としてはどんな作品がお気に入り?




◆  お父さんネズミと息子のタータとチッチの三匹が、住み慣れた川のほとりの住家を
河川工事によって追われ、新天地を求めて川の上流に旅をする冒険ファンタジー。

猫のブルー、ドブネズミ軍団、軍団の恐怖政治を改めようとするグレン、元気なモグラのお母さんと子供たち、田中動物病院の夫婦、動物好きな圭一くん、レトリーバー犬のタミー、スズメの夫婦、爺さんネズミなど。
様々な出会い。助けられたり家族の離散・命の危機に遭いながら旅をする。
さて三匹の運命は…。

◆ 自然や川のほとりの描写が心地よく、気楽に読める。
三匹が助け合って、旅する姿は読んでいて優しい気持ちにさせてくれる。

心に残るフレーズ。
「生きるというのは、たとえば走ることだ」(P268)から始まるフレーズは、
走ることは、運動として足を動かすだけではなく、生きる実感を全身で感じることが
大切な中身だという主旨のこと。

彼らが好きな場所「川のほとり」。
止まることなく変わり続ける川の流れにたとえて、新しい自分自身になって生きることへの
思いが述べられるところ。(P380)など。

◆ でも、物足りなさも残る。
ファンタジーだからこそ、深く現実に寄り添う、リアルな物語のハートが欲しい。
その点で、不自然な形で、三匹が助かる場面があって気になった。
それでも、残虐なだけの作品よりはるかに、気持ちがいい。
「川の光」とは、希望の象徴だろう。
「川の光」の美しさや輝きを、感じて磨いて歩くことを、忘れないでくれぃと語りかけてくる。

(松浦寿輝著 「川の光」中央公論新社2007.7)


小学校のとき、その日の授業が終わって、先生と生徒が交わすシメのような挨拶言葉。
それが「せんせい、さようなら!」
「みなさん、さようなら」だったのを思い出す。

◆ 看護師の母親・ヒーさんと二人暮らしの、主人公・渡会悟は、
小学校の卒業式で同級生が目の前で刺殺される事件に遭遇し、
自分の住んでいる団地から外へ出られなくなる。
団地の外の中学校にも通わず、コミュニティセンターで、崇拝する武道家・大山倍達と
同じようなトレーニングに挑んだり、センターの本を読んだりして過ごす。
そして、団地を毎日パトロールして同級生の動静に目を凝らす。
団地内で友だちをつくり、ケーキ店で働き、緒方早紀との恋や婚約もする。
そして失恋の痛み。勤め先の師匠との別れもある。
時は流れて、小学校の同級生たちは毎年のように団地を出て行く。
老朽化し、空き部屋がでて、そこに忍び込んでの乱痴気騒ぎや外国人の入居者の増加。
単身の孤独死など悟の過ごす年月と団地の変容して行く姿。

そして、心の傷に縛られるように団地からでられなかった悟が、
母が残した言葉に導かれるように、30歳で団地を出て行くまで…。

◆ 局地的引きこもりというべき、悟を描きながら「心の痛み」を超えて、
本気で人が自立していく過程を描いた話として面白く読んだ。
特にこの話を面白くするのは、後半に登場する「堀田」だ。
当初は善良でやさしげな人当たりを装って悟に接するが途中から、善意をあざ笑い、
人の気持ちを、殺意と暴力で玩ぶ本音をむき出しにする。
悟は団地の屋上で、堀田と子分二人と向き合う。
堀田は、家族として同居している11歳のマリアを、子分たちと一緒に性的な暴力の
対象にする意志と、悟への殺意を叫んで脅す。
包丁にも触れないほどの悟は、三人から突きつけられた刃物と殺意に怯えるが、
自分の弱さと闘いながらマリアを助けようとして、三人と闘う。
その場面は手に汗握る。

そして、突然やってくる母「ヒーさん」との死別。

◆ 大切な人や守りたいものへの強い意欲が「本気」の力を呼ぶ。
命を、深く広く育てるために試行錯誤する人の姿が、面白くファンタジーとして描かれている。
「みなさん、さようなら」 と儀礼的・反射的に繰り返していた小学生の頃の幼い言葉。

そして今、30歳の悟が団地を出て行く時の「みなさん、さようなら」。
それは、別れと背中あわせにある新しい出会いへ歩き出す、進化し深化した言葉なのでは。


おすすめ。

(久保寺健彦 著 「みなさん、さようなら」 幻冬舎2007,11)




◆  名前は知っている。でも読んだことのないチェーホフ。その評伝劇。
本の帯には『「一生に一本でいい、うんとおもしろいボードビルが書きたいんです。」
このチェーホフの想いを、チェーホフの手法で解いた…』とある。
ボードビルとは「軽い喜劇、通俗音楽劇」の意味。
人を喜ばせるために、ボードビルに情熱を傾けたという、井上ひさしのチェーホフへの想いが
伝わってくる。この劇は、まさに歌と笑いのボードビルだ。

◆  一幕の七場にチェーホフのせりふがある。
人は苦しみをそなえて生まれて、生病老死という「成り行きそのものが、苦しみ」。
だから、苦しみはいくらでも転がっていると述べた後、
「けれども、笑いはちがいます。笑いというものは、ひとの内側に備わってはいない。だから外から…つまりひとが自分の手で自分の外側でつくり出して、たがいに分け合い、持ち合うしかありません。もともとないものをつくるんですから、たいへんです。」(P93)という。
そこには、人生の、成り行きに抗って、歓びをつくりだそうとする想いがある。

◆  一幕の八場の「なぜか…」の歌詞には、この想いが歌われる。
「人はさびしく、かなしく、ひとりぼっち。にげたくなる、くるしくなる、しにたくなる、」という主旨の詞に、次の歌詞が続く。

♪ やるせない世界を
   すくうものはなにか
   かれが その答えを 
    まさに 出したところ

  わらう わらい わらえ
   それが ひとをすくう
    かれは 前へすすむ
     ひとり きびしい道を  ♪


 この言葉を聞くと、チェーホフは「ボードビル」で人生を面白くしようとした。
それじゃあ、キミはどうする?というもう一つの声もきこえてくる。


◆ 毎月、演劇を観に行っていたことがあった。
リアルタイムに演じられる劇場空間には、演者の息遣いが聞こえた。
大竹しのぶが、妻で女優のオリガ役(他に老女役も)で、松たか子が妹マリヤを。段田安則の、壮年チェーホフ。生瀬勝久の青年時代役(他にコミカルなトルストイ役も)。井上芳雄の少年時代。晩年を演じる木場勝己。いいなぁ。
彼らが演じている42枚のカラーの舞台写真が、舞台の様子を見せて、想像を刺激する。
チェーホフを、読んでみたくなった。

(☆ 巻末の扇田昭彦氏の観劇記によれば
「劇中では、チャイコフスキー作曲のロマンス集など、多彩な劇中歌が俳優たちにより、
ピアノの伴奏で次々に歌われ、舞台を盛り上げた。」
…そうだ。
劇中の新たな歌詞は井上さん。劇が観たい。歌が聴きたいっ!)

(井上ひさし 著「ロマンス」集英社 2008.4)


◆ パンダの食性のいわれや、その姿に託して「美食」という面から
人間の持っている「光と闇」を描きたいのだろうか。
作者が料理店で働いた経験から、物語のなかの食の描写は詳しい。
人間には光も闇もあり、矛盾した生き物だとは思うが…。
それにしても、読後感が良くない。

◆  前半の展開が光なら、後半の展開は闇に満ちている。
ミステリーというより、ホラーという感じだ。
表紙のユーモラスな挿絵と、かけ離れた内容。
前半の青山と本多の刑事コンビや、「ビストロ・コウタ」の柴山幸太と綾香夫妻の描写など
ユーモアや温かさも感じたが、後半の陰惨・悲惨は読んでいて気分が悪くなるほど…。

グルメを詳しく描きだす目新しさではなく、「美食」を求めながらも
人が抱えている矛盾や葛藤を彫りこんで「人間の光と闇」を描き出して欲しかった。

◆  確かに現実に悲惨な出来事が、日々報道されている。
こういう作品が好きな人もいるだろう。
だが、この描き方では、現実の「闇」をデフォルメして追認している以上の、印象は残らない。
読んでいて哀しすぎる。

(拓未司 著「禁断のパンダ」 宝島社 2008.1)


本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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