2008 / 07
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 少し前に「トトロ」を放映していた。
「夢だけど夢じゃなかった」っていうセリフがあったと思う。
リアルに、人の思いをすくいとるようなファンタジーが、観たい 読みたい。
これは、そんな一冊。

 誰もがいつか遭遇する、大好きな人との「死」という別れ。
そんなつらいとき、どうすればいい?
そんな、重いテーマを、おもしろく読ませるのは、さすが絵都さん。

◆(お話)
 ヒロイン・環(たまき)は、13歳の時に、両親と弟を交通事故で失い。
その後、一緒に暮らした奈々美おばさんも、20歳の時に、病気で亡くなる。

自転車を買ったことで、親しく出入りするようになった「サイクルショップ」の
紺野さんも、奥さんを亡くして、男手一つで育ててきた一人息子も、10年ほど前に
亡くして、一人で暮らしている。
紺野さんの家にいた、猫の「こよみ」が老衰で亡くなって、紺野さんは、唯一の身内の
母親のいる山形ヘ帰る事を決める。
別れの時、息子に贈る予定だった手作りのロードバイク
「モナミ1号」を、環にプレゼントする。
この自転車はレーン越え(レーンは死者と生者の世界を結ぶ連絡通路)する力を持っていて
ある日、環は死者の世界に行き、こよみや両親と弟、奈々美おばさんと再会する…。

「モナミ1号」の事情を知った環は、自力で40キロを走りぬく必要に迫られ、
自分の足で走り始める…。
 ある日、一人でランニングをしていると、もみ上げ男・ドコロさんから
「磨けば光るその才能、この俺に預けてみちゃどうだ?」
「イージーランナーズ」というゆる~いランニングチームに、スカウトされる。
さ~て、どうなる、どうなる…。

◆(思ったこと)
一番の印象は「磨けば光る」というドコロさんの文句に笑ったり、心をピンしたりだった。
なんとメンバー全員が、彼にスカウトされ、殺し文句は「磨けば光る」。

早期退職のおじさん 走り始めたばかりのウェイター ダイエットを目指す太った大学生 
ビール好きな水商売の中年美女 ひきこもりの虚弱体質の細い女の子 環が寄生ババアと呼ぶ同じ職場のおばさんなど、ランニングチームらしからぬメンバー。
ドコロさんのスカウトの目的は、同好雑誌の「あなたのチーム訪問」のコーナーに載ることだという…。

このメンバーたち。
無謀にもマラソンに挑戦することになっていく。
運動音痴の環たちが、完走を目指して着々とトレーニングを積んでいく。
この本をよみながら、現実は、そんなに甘くないよって事よりも、
「磨いて光ろう」とする一人一人の心のありようを、楽しんじゃうと面白い。
自立して走るとか「磨く」ってことは、特別にハードでも、派手なことでもなく、
曇りそうになる自分の日常に抗って、心を磨く意思を積み重ねることかもしれない。


最後。
環と奈々美の会話。
「離れていても一緒」という、平凡な言葉に込められた深い思いが沁みた。
オススメ。

 サイゴに「磨けば光る」と言われたいあなた!
あなたも「イージーランナーズ」に入れます(笑)。

(森 絵都著 「ラン」 理論社 2008.6)


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初めて聴いた、笑点の司会をしている歌丸さんの落語。
端正な語り口の、はなし方でいい感じだ。

「おすわどん」は、演じられる機会の少ない埋もれた噺だとか。

「思い込みは怖い」という噺。
大店の呉服屋の仲良しのご夫婦があったとさ。
ところが非情にも病で妻は先立ってしまう。
月日は流れ、後添えとして「おすわさん」を迎える。
死んだ妻に劣らず、夫に優しく奉公人たちにも気配りができる
素晴らしい人なのだ。
ところが、ある深夜から毎夜の同じ頃、今の妻の名前を呼ぶ声が聞こえる。
店の外で、パタパタと戸を叩いた後で
「おすわど~ん」と…。

さては、嫉妬した先妻が、今の妻を恨んで
夜な夜な「おすわど~ん」と化けて出てきたのではないか。
奉公人は怯え、おすわさんは寝込んでしまう。


主の徳三郎は剣の達人・野牛の流れを汲む(柳生ではない。)
荒木またずれ先生(荒木又衛門ではない。)に、幽霊退治を依頼する。

ところが正体は、同時刻の夜に屋台をひく「うどん屋」。
「おすわど~ん」と聞こえたのは「おそばうど~ん」というながしの声だった。

荒木は、手ぶらで帰れないので、たとえ聞き違いでも「証に、お前のクビをもらう」という。
クビは渡せないけど、私の息子を身代わりに立てます。
出たのは「そば粉」。
「蕎麦屋の「こ」だから息子です。」
「して、これをなんとするっ!」とまたずれ。
うどん屋すかさず
「手打ちになさいませ!」


(CD音源 桂歌丸「おすわどん」 1994.11.6放送「日本の話芸」)


声が強い。
陽水は、アコースティックギターに、あうと思う。
彼を聴いたのは、ずいぶん前だ。
洋楽好きな、友人のIが聴かせてくれた。
彼と、ギターを弾きながら陽水を歌った。
田舎住まいで騒音のような声も、ものともせず…。

◆ 井上陽水のアルバム「弾き語りパッション」は、
シンプルな、アコギの演奏で歌っている。

 以前よりも奔放に歌っている 「断絶」

 リードギターの旋律が、不思議で妖しい「なぜか上海」は、詩も面白い。
  ♪ いいからまそ、まそ、ま、まそっとおいで
        ころがる程に丸いお月さん見に
          ギターをホロ、ホロ、ホ、ホロッとひいて
              そしらぬ顔の船乗りさん  ♪
  (なぜか上海)

 「シングル盤にしたくなかった」と紹介して歌いだす 「心もよう」

夏の夜に聴く 「夏まつり」は、時間を逆戻りさせる。
   ♪ 十年はひと昔 暑い夏
        おまつりはふた昔 セミの声 ♪
   (夏まつり)

話はとぶが、本を読んだ。
何度も書店で手にして、迷いに迷って、買ってしまった森絵都著「ラン」だ。
そこには、愛しい人たちとの、別れのことが出て来る。(感想は、別に書くつもり。)

「夏まつり」の歌じゃないけど、Iと歌ったのは「ひと昔」以上前。
今年の「暑い夏」に、流れてくる陽水の歌声。

一足先に、ずらかりゃがって…。

…それにしても、お互いに下手だったなぁ~ …陽水。

でも、覚えてる。
面白かったこと。


(「闇夜の国から」はじめ16曲。CD音源2007.4~10. 12会場のライブを収録。)

  数ある落語の名人の中で、別格の面白落語家・志ん生。
その昔、酔っぱらって、仕事の寄席の高座の上で寝てしまったという逸話がある。
もう一人の名人・桂文楽が、言葉も時間も正確に刻んで笑わせれば
古今亭志ん生は、型破りの豪快さで、爆笑をさそう。
ボクは一時期、この人の落語ばかり聴いていた時があるが
志ん生の「たがや」は、初めて聴いた。
甲高く、軽い口調に惹きつけられる。
これぞ爆笑名人の芸。

 この噺「たがや」は、江戸の夏の風物詩、両国の川開きの花火でごった返す
両国橋の上で起こった「士農工商」の身分差別が激しかった頃の噺。


 混み合う橋の上、押された弾みで、たがや(桶の修繕屋)が馬上の武士の笠を跳ね飛ばす。
「無礼者っ!屋敷まで来い!」と高飛車に言う武士。しかし、行けば命はない。
年老いた親の世話もあるし勘弁してくれと謝るが、武士は勘弁できないという。

力を背景に、町人に無理を言う武士。
たがやは、人の気持ちがわからない武士に啖呵をきる。
「丸太ん棒!」

 見ている町人たちは、たがやを応援する。
必死に抵抗するたがや。
武士から奪った刀を払えば、武士の首が、宙に飛ぶ。
打ち上げられた花火への、ほめ言葉「玉屋ぁ~~!」にひっかけて
見ていた町人が叫ぶ。
「た~がやぁ~~!」


(CDの音源・昭和37年5月16日)

◆ 三遊亭圓楽の「たがや」もオススメ。


そうか、なるほどと思った。
大仏次郎の作品を読み解いて書かれた評論
「鞍馬天狗のゆくえ」(相川美恵子著 未知谷 刊2008.6)を読んでいたら
「弱いものに導かれていく先に幸福を見たいという大仏の姿勢」(P163)
という言葉があった。

それは、重松清 作品の真ん中を流れているものでもあるなぁと思った。
この季節風シリーズの最初の作品集に収められた「春」にまつわる12編も、その味が満載だ。

◆ 父親入院の借金におわれながら、働く母が、やっとの思いで私に買ってくれた
小さな「おひなさま」の想い出(めぐりびな)

◆ ドラフトで指名されプロ野球選手になった野球部の先輩、野口さんが、戦3年後、クビになって郷里に帰ってきた。中学三年生の川村は、コーチを依頼する手紙を、自宅に投函するが、本人に怒鳴り込まれる。
付き合っていた、ショコが川村に言う「がんばれば夢は必ずかなうって思ってるでしょ」(48)
「がんばってもどうにもならないことって、たくさんあるんだよ」(50)。
再就職をする野口や、プロに誘ったスカウト、走り高跳びに挑戦するショコたちとの
ふれあいのなかで、何かが少しわかってくる川村…。(球春)

◆ 時の流れの中で消えていくけれど,忘れられない想い出。(島小僧)

◆ 自分自身も苦しいのに、わがままいっぱいだった自分に注いでくれた母の優しい眼差し。
(よもぎ苦いか、しょっぱいか)

◆ 長距離便大型車の運転手、ナベさんが、一人息子を事故で亡くしたときつくった地蔵。
運転手たちが、全国から運んでくる桜の花びらを全身にかけられる、お地蔵さんの話。(さくら地蔵)

◆ 故郷を出て東京で暮らしていた河村健一が、酔ってホームから落ちて亡くなる。
自分とよく似た境遇と44年間を思い、自分自身の影を感じ、お墓参りのため実家を訪ねる
フリーライター。(霧を往け)

◆ 小学校のとき交通事故で両親を亡くし、容姿はパッとせず、人と会うのが苦手な、一人暮らしの36歳の和生の部屋に日曜日の朝、マガツオ一匹をもって、30歳の翠が訪ねてくる。結婚したいと強く望んでいる相手だが本音が言い出せない…。
「ひとり」と「ひとり」が、ゆるやかな「ふたり」になる。
「ずっと一緒に乗ろう」(284)という会話が印象的。(目には青葉)

など次の12篇。
「めぐりびな」「球春」「拝啓、ポンカンにて」「島小僧」「よもぎ苦いか、しょっぱいか」「ジーコロ」「さくら地蔵」「せいくらべ」「霧を往け」「お兄ちゃんの帰郷」「目には青葉」「ツバメ記念日」 
「めぐりびな」「目には青葉」が特に好き。

◆◆ この作品は、強者礼賛ではなく、哀しい結末を迎えた人への鎮魂だったり
失意の気持ちによりそう眼差しだったりする。社会的に成功者といえないかもしれない
親であったり、子供であったりする。
よく言う、強者でも勝ち組でもない人たちの人生が、読者のボクの心ををじんわりとさせたり、
元気をくれたり…。そこに、何かしら豊かなものが息づいているのかもしれない。
◆◆

(重松 清著「ツバメ記念日 季節風・春」2008.3) 





◆ 上方では「禁酒関所」ともいう。
酒に酔って、城下の者同士がトラブルを起こした。
それを理由に、殿様が家中の禁酒を宣言。
屋敷に酒が持ち込まれないように
出入りの者たちの荷物調べのために「番屋」をもうける。

とはいっても飲みたい酒。
酒好きな侍・近藤氏が、屋敷に寝酒を届けるように酒屋に注文する。
酒屋は、どうやって、番屋の検査役の目をごまかそうかと考える。

最初は「カステラ」の箱の中に、徳利を二本隠して持ち込もうとする。
軽いはずの箱を「どっこいしょ!」と持ち上げて、ばれてしまう。
番屋の役人に酒を飲まれたうえ「この偽り者めっ!」と怒鳴られ、命からがら逃げ帰る。

次に、「油」を届けると一升瓶に入れて持ち込もうとするが、
またも役人に「役目だ!」と酒をがぶがぶと飲まれ
「この偽り者め!」と怒鳴られて、逃げ帰る。
大きな茶碗で酒を飲みすぎて、役人はべろべろの泥酔状態になる。

酒屋は、あまり悔しいと、最後に「小便」を瓶に詰めて持っていく。
べろべろに酔っている役人は、浅知恵の町人が、また酒を持ってきたと思う
屋敷の肥料に使う「小便」が入っていると言うのを「今回は燗までして、持ってきた」と
同僚と笑いながら、好きな酒が又飲めると、酒のつもりで飲むが…!!

役人は、最初から「小便」と聞いているから「偽り者めっ!」と言えない。
「この…正直者めっ!がぁ!」

◆ シンプルに笑える噺だ。
酒を持ち込むたびに、べろべろに酔っていく役人の口調の変化が楽しい。
酒好きで傲慢な役人と、町人の心もちが、鮮やかに描き出されている。

(CD音源・昭和55年10月16日東宝名人会)


「東京バンドワゴン」という古書店を舞台にした四季を描くシリーズ三作目。
懐かしく居心地のいい場所に帰ってきたような読み心地。
 藍子が結婚したり、二人の赤ちゃんが同じ日に産まれたり、以前同居していた人が
訪ねてきたりと一緒に暮らしたい人が増え続ける堀田家。
作品の中にゆったりと、時が流れているなぁと思う。
いつもながら大人数の家族の会話の賑やかなこと。
煩わしいだけじゃない、もう一つの人間のつきあい方が描き出されている。

矛盾や怒りに目を閉ざさずに、はっきりと相手と向き合う言葉に熱と力がある。
すずみや、勘一の江戸っ子の啖呵にスカッとする。

ゆったりと流れる堀田家の時。
その日常に現れる不思議な出来事が、読書にわくわく感をくれる。
これぞ小説!

◆ 秋 あなたのおなまえなんてぇの 
舞台になっている古本屋の棚の本が、来客によって不思議に並べ替えられているのはなぜ?
買い取った本の裏表紙に、子供の字で書き込まれていた言葉
「ほったこん ひとごろし」という堀田家の家族・紺に向けられた言葉の意味とは?

◆ 冬 冬に稲妻春遠からじ
知り合いの居ないはずの、アメリカから大量に堀田家に届いた本と、家の周りをうろつく
怪しげな男たちの正体とは?
堀田家行きつけの小料理居酒屋「はる」の真奈美が14歳年上の店の板前コウにプロポーズ。
コウの過去と二人の愛の行方は?

◆ 春 研人とメリーちゃんの羊が笑う
小学6年生の研人に恋する、クラスメートのメリーさん。
「羊が後をついてくるけど、バンドワゴンに行くと、消える」
というメリーさんの言葉の真実とは?
勘一の代理で、京都の古本屋の有志の懇親会「六波羅探書」に行って
そこの有力者に店主・勘一をけなされ、江戸っ子の啖呵を切って
希少本の目利きをすることになるすずみ。その結末は?

◆ 夏 スタンド・バイ・ミー
二人の子供が同じ日産まれ、以前に同居していた人が訪ねてきたりと
同居したい人が増え続ける堀田家の住宅問題の行方は?
我南人、青の周辺を興信所などが調べ回っているらしい。我南人と大女優とのゴシップ?

四季をえがいた四編。

◆ 気に入った言葉は多いけど、今回は、61歳にして伝説のロッカー。
堀田家の自由人・我南人のLOVE論。
★ 「世の中勝つか負けるかだって言ったけどぉ、違うよぉ、LOVEがあるかないかなんだねぇ」

★ 「LOVEを歌うんだよぉ。求めちゃいけない。欲しがっちゃいけない。
君の心の中にあるLOVEをぉ、与えるんだよ。出し惜しみしちゃいけない。
全部出して出して出し切るのさぁ。…」
(287)

使い古されたような「LOVE」が、この物語を読むと
改めて、とてもいい言葉だとおもう。

(小路幸也 著 「スタンド・バイ・ミー」 集英社2008,4)


トルコ料理店のアルバイトを終えて家に帰ると、一緒にいたインド人の恋人も家財道具も消えていた。
精神的なショックから、言葉が出なくなってしまうヒロイン倫子。
失意の中で、いなかに帰り、おかんの援助を得て、
一日一組だけ客をとる「食堂かたつむり」の営業を始める。
店にやってくる客たちの反応…。
もの心ついたときから、気が合わなかった、おかんの真実とは…。

◆ 可能性のある話なのに、物足りなかった。
料理の話にあわせて言えば、味わいが薄い平板な作品。
ファンタジーなのか?現実を深く描きたかったのか?
中途半端な内容だった。

◆ 食堂の開店にしても、料理のもてなしにしても
物語の起伏に欠けていて、読書のわくわく感がなかった。
作品の随所に出て来る、下ネタ的比喩の表現や多さは、場面になじんでいなかった。

◆ 人は、様々な動植物の命をいただいて、生きていることは事実だし
大事なことだが、エルメスという可愛がっているペットだった豚ちゃんの
こういう結末は、説得力もなく唐突で、後味が悪く嫌いだ。

期待して読んだが、残念としかいえない一冊。

(小川糸著 「食堂かたつむり」 ポプラ社 2008.1)


本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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