2009 / 07
≪ 2009 / 06   - - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 -  2009 / 08 ≫

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


◆ いつもおやつを持っていて、食べることが大好きな無量こと「ムリョ」。
気持ちよくなると、場所を問わずに眠りこける千穂こと「チーホ」。
離婚した酒びたりの父と、厳しい祖父や優しい祖母とくらしていて、貧乏でも気にしない。
自分のまわりの、生徒も教師も他の人も虜にするカリスマ性をもっている
新太こと「テンちゃん」。
小学二年に転居してきて裏山を探検中に、新太と会い、相手を気遣う気持ちに魅せられる仁美こと「フトミ」。
小学二年、小学五年、中学二年、高校二年の四つの世代の時の四人(四人から距離を置きつつ、ムリョとの付き合いから、四人と知り合う素子も加えると五人)の少年少女たちの性と生と死。


◆ 最後まで読んで、もう一度最初の場面を読み直してみると、
そこに、また新鮮な驚きがあった。


四つの話の冒頭や文末などに四人+小学五年生のとき、ムリョにラブレター渡した本好きで大人びている少女・素子を加えたの五人の訃報が載っている。死と生。
その中での生と性の軌跡が、生命の成長と共に、瑞々しく描かれている。

◆ 印象的で好きな場面。
テンちゃんとフトミが、蓮華畑の中で摘んだ蓮華草をつないで作ったひもで
両端を持って、繋がりながら歩く場面。
物語のラストの場面。


小説を堪能させてくれた。

(山田詠美著「学問」新潮社2009.6)



スポンサーサイト

ひまわり

46年ぶりの皆既日食の日。職場のある名古屋はあいにくの曇り空。
後でニュースで見たら、晴天だったら、最大80%の日食が見られたという。
少しだけ陽がさした時間があった。
外の清掃をしている人が、黒いごみ袋をかざして「これで、日食が見えないかなぁ」と、
笑いながら言っていた。

夜のTVで、日食の映像を見た。
この宇宙に太陽があること。
月があること。
少し前、その月から「お地球見」の映像が地球に送られて、その美しさに見惚れた。

偶然が重なって、地球の一部の帯の地帯で日食が観測された。

本当に不思議だ。

今命があって、泣いたり笑ったりして生きていることも。

今朝見た、手が届くところに咲いている ひまわりの花の明快さ も。

6つの短編物語からなる「肉体労働男性たち」の恋の短編集って感じの独特の視点のある一冊。
それは、肉体を持った、どっしりとした人の姿だ。
「間食」「夕餉」「風味絶佳」「海の庭」「アトリエ」「春眠」。
登場する男性は、「鳶職」「清掃作業員」「ガソリンスタンドのアルバイト」「引っ越し作業員」「汚水槽の清掃作業員」「火葬場の職員」など、いずれも肉体を使って働く人たちの描写が見事。

◆献身的な15歳年上の加代と暮らす一方で鳶職・雄太は、加代と対象的な花とも付き合っている。彼女は、可愛がられることに慣れている大学生の女の子だ。
個性的なの鳶の同僚・寺内の謎めた言動も興味深かった。 (「間食」)

◆清掃員の紘に、よりをかけて料理をふるまう美々ちゃん。
空腹を満たすという、彼のすべての始まりを独占したいと思う…。 (「夕餉」)

◆年齢と関係なく、ボーイフレンドと一緒に、孫が働いているガソリンスタンドに車を乗りつけるグランマ(祖母)の不二ちゃんのことが、スタンド働く仲間たちの評判になる。その不二ちゃんの影響を色濃く受けながらも、照れくさい孫・志郎と、同じガソリンスタンドで働く乃里子との恋の行方…。 (「風味絶佳」)

◆四十半ばで離婚した母と娘が、引っ越しを依頼。
やってきた業者は、母の幼馴染の作並くんだった。
幼い頃、哲ちゃん小夜ちゃんと呼び合いった二人が、実家の庭で遊ばなくなって30年以上が立っていた。娘・日向子は、頻繁に来るようになる作並くんと、彼に好意を持っている母の進展しない関係に、やきもきする…。 (「海の庭」)

◆ 裕二は、麻子が働くビルの汚水槽の清掃作業員として、やってきて彼女と出会う。
世間知らずで、暗い印象の麻子に惹かれて、やがて結婚する…。  (「アトリエ」)

◆大学の同級生でサークル仲間で、憧れていた弥生。その彼女と、自分の父・梅太郎が結婚することになる。 呆然とする息子・章造…。 (「春眠」)


◆一番印象的だったのは「海の庭」。
ああっ!こんな幼いころの思い出。あったなぁ~。
こんなふうに、誰かのことを思って胸がいっぱいになること。
誰かのことを思うって…。いいなぁ(笑)。

物語の中で「いい歳をして」と言われる男女が、自由に生きている姿がでてくる。
「風味絶佳」の不二ちゃんとか。「春眠」の息子の同級生と結婚する梅太郎とか。
「いい歳をして」という吟味されていない、世間で飛び交っている人間の見方に、
作品の中に、人のドラマを豊かに描き出して、人のいろんな姿を見せてくれる。
それを読んでいると、人間て、けっこう奥行きがある生き物かも、と思ったりする。

 まさに 美味しい一冊!


(山田 詠美 著「風味絶佳」2005.5 文藝春秋)




◆ これという目標もなく、高校を卒業した平野勇気は、
担任教師と両親が申し合わせて就職先を決められる。
いやいやながら向かった先は、三重県の山奥にある神去(かむさり)村。
そこで彼は、夢にも思わなかった「林業」に取り組むことになる。

村人たちの使う神去弁は、のんびりとしている。
口癖は「なあなあ」だ。
意味は「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」
「のどかで過ごしやすい、いい天気ですね」
ひとことが、こんなに幅広い。

その村での暮らしを、勇気が回想する形で物語は進む。
彼は、慣れない仕事に戸惑い、面喰いながら、徐々に仕事に打ち込んでいく。
直樹さんという女性にも一目ぼれする…さてさて。

◆ 勇気が、住み慣れていた都会と大違いの、村の日常。
まったくなじみのなかった林業、なが~い目で自然に身を預けながら、
自分の肉体で自然に働きかける仕事や暮らし。
おおらかで、あくせくしない日常がなんともゆったりと流れる。
都会では信じられないような神事には、自然への畏敬や祈りが生きている。
戸惑いつつも、村の暮らしの中に溶け込んでいく、勇気の日々が楽しい。

(三浦しをん著 「神去なあなあ日常」 徳間書店 2009.5)


待ってましたっ!
この本「東京バンドワゴン」シリーズの4冊目だ!

◆ 第二次大戦後のどさくさの中で、子爵の令嬢だった咲智子さん(サチさん)が、
父から、国の未来にかかわる重要書類を託され、両親と別れて逃れる途中、
追手に捕えられそうになる。
そこに、勘一があらわれる…。

戦後の歴史に、ミステリーとサスペンスの味付けをして、はらはらしつつ、
ほんわかとあたたかな風も吹いてくるような、最後まで飽きさせない、痛快爽快な一冊。
「バンドワゴンマニア」が知りたかった(?)勘一とサチのなれ初め。
若き日の二人の姿が、画面いっぱいに(小説を読む心の画面さね!)動き回る。
そう!これは何より、勘一とサチの恋の物語なのだ。

◆ 「マイ・ブルー・ヘブン」はジャズの名曲。
サチはピアノを弾き、勘一はベースをこなしてジャズバンドで演奏するのだ。
文武両道で多彩な勘一の姿も出てくる。

この曲、日本語だと「私の青空」。
読みながら思ったのは「私の青空」って何だ?
どこにある?ってこと。

「魂の触れあう場所」のことを、「私の青空」って言っていると思う。
殺伐としたニュースが報じられる、今の世情。
だからこそ「私の青空」を信じたい。
大事に思いたい。
後半、二人の結婚式で、マリアが歌い始める歌詞。

♪ せまいながらも楽しい我が家
愛の灯影のさすところ
恋しい家こそ私の青空 ♪



小さな魂の触れあう場所を豊かにすること。
小さなものを守る束が、大きなものを守ることにつながる。
武力や腕力に、文化の知恵で抗する場面もでてくる。

書くことや、文化の力を信じていること。
戦争や武力では、人は幸せになれない。
小路さんの思い伝わってくる。いいっ!

読んでいると、幸せな気分になる。
心に青空を持ちたい。

「私の青空」…
思い描きながら、行こうぜっ!



(小路 幸也 著 「マイ・ブルー・ヘブン ~東京バンドワゴン~」 集英社2009.4)


多彩な噺家・春風亭小朝と大好きなジャズ・バイオリンの寺井尚子の音楽界が、名古屋・鶴舞公園の中の名古屋市公会堂であった。

最初に登場の小朝さんは、舞台中央に立って、音楽会に相応しい「越路吹雪物語」を、語りで聞かせた。
宝塚トップを退団した越路が、フランスでピアフのシャンソンに出会って衝撃を受け、本格的に歌の道に進む。年下で無名だった後の夫との出会い。彼女が舞台に出ていく前の岩谷時子の励ましのおまじないのこと。よどみない口調で、音楽にかけた越路の人生が語られた。
時々、芸能界や世相へのくすぐりを入れて、笑いの絶えない見事な口演だった。

次に登場の寺井尚子さんは、北島直樹(ピアノ)店網邦雄(ベース)中沢剛(ドラム)のカルテットで、ジャズやシャンソンの演奏をたっぷり。
いつみても、輝いている。
ある曲は、細やかで静かな水面のように澄んだ旋律。
ある曲は、大胆でエネルギッシュな激しい音楽が会場を包む。
形のなかった心の音が、音楽として結晶する。
それを、編曲して、磨いて練習の反復がある。それが演奏として届けられる。
それはすごいことだ。なぜ、人間は音楽するんだろう?

「JAZZ WALTZ」おなじみの「スターダスト」「Minor Swing」が印象的だった。

二部で出てきた、ゲストの加護亜依さん
加護ちゃんだ。
肩書きは「ジャズ・シンガー」だった。
今日がその第一歩の舞台だという。
「Blue Moon」「Someone To Watch Over Me」の二曲を披露。
これを機会に、本格的なシンガーを目指して、歌い続けていってほしい。

最後のアンコールでは、寺井カルテットの演奏で、小朝師匠が歌った。
歌もうまい。

いい口演と演奏。
心が、いい酔い心地になった午後。




本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

06 | 2009/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。