2009 / 12
≪ 2009 / 11   - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 - -  2010 / 01 ≫

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


(物語)
◆斜視で「ロンパリ」と呼ばれて、日常的にいじめを受けている中学生の「僕」。
ある日、ふで箱の中に「わたしたちは仲間です」と書かれた紙が入っていた。
それをきっかけにはじまる、コジマとの交流。
彼女も「汚い臭い気持ち悪い」と言われて、いじめを受けていた…。

凄まじい、いじめの描写がでてくる。

人の共感や善意を拒絶する、いじめる側の一員・百瀬の論理。
そして意思的に、いじめを受容しているコジマ。
意思的にいじめに向き合うことは「美しい弱さ」なんだと彼女は「僕」に言う…。

(感想)
◆読み終えた後、痛みと哀しみで、心がいっぱいになる。
それでも、目をそむけてはいけない、今の世界に存在している人の姿が描かれている。
いじめる側の強者のむき出しの論理。崇高だけど哀しいコジマの意思。
その論理や意思にゆれる「僕」。

読んでいて、生き方をグラグラと、ゆさぶられる。
傍観者の一読者ではすまない、重さと大切な問題提起が含まれている。
答えは、日々の歩みの中で、探していくしかない。

作品の最後に示唆されている、かすかな光のようなものがある…。
作品そのものには、光より痛みの要素が圧倒的だった。

でも、読み終えて思った。
閉塞の時代や精神を超えて「世界の奥行きや向こう側」を見る意志をあきらめないゾ。…と。

(川上 未映子著「ヘヴン」2009.9 講談社)



スポンサーサイト

(物語)
◆ 人類の理想を実現したという未来都市《NO.6》。
しかし、それは、虚飾の都市だった。
ネズミと出会って、運命が大きく変化していく紫苑(しおん)。
表と裏の顔を持つ都市の奥深く潜入し、ネズミが仕掛けた爆弾に炎上する都市の矯正施設。
愛していた沙布と紫苑の別れの哀しみ…。
炎上する施設からの脱出をはかる二人。
《NO.6》の中枢は、激しく炎上し崩壊へとむかって揺れる。
二人は無事脱出できるか。
本にくぎづけの、クライマックスへ…。

(感想)
◆ あさのさんの作品で、一番好きで読み続けているのが、この「NO.6」シリーズ
「バッテリー」もいいけど、こちらも素晴らしい。
次回が待ち遠しい盛り上がりだ。
手に汗握る、ワクワクするストーリーも大好きだ。
そして、知恵と力のギリギリで生きようとする、様々な登場人物たち。
その生きざまから、紡ぎだされる言葉たちが新鮮で活きていて、印象に残る。

例えば、紫苑の無事と帰還を信じている母・火藍の言葉。
隣人・恋香は、帰宅しない夫を思って、心細さに大きく動揺する。
その娘・莉莉。二人のことを気遣って、その身を守りたいと火藍は思う。

「わたしには何ほどの力も備わっていない。この世界を変える力も、降りかかる災いを祓う(はらう)力も、大切な者を救い出す力も、持ってはいない。
わたしは微力だ。でも、無力じゃない…」(P67)

◆ この言葉を、読みながら思った。
自分の力が、たとえ微力でも尽くしたいと思う構えを持つ。
それを、積みかさねて一歩ずつ歩くこと。
そんな日々が「虚無」をこえて、人としての知恵と力を、生んでいく源になるのかもしれない。


(あさのあつこ 著「NO.6(ナンバーシックス)#8」講談社 2009.7)


 ずっと読み続けている、かれんとショーリ(勝利くん)の恋の物語。
「おいコー(おいしいコーヒーのいれ方)」シリーズの第13冊目。
(Second SeasonⅢ)。今回から挿絵が変わった。

(物語)
◆今回は、アパートの大家の森下さんの弟、秀人さんがオーストラリアから一時帰国する。
大家さんの奥さん・裕恵さんに誘われて、夕食をともにしたショーリ(主人公の一人)は、
秀人の人柄に好感を持つ。
その夜、酔って帰宅した兄と秀人は口論となり、ショーリは思わぬ災難に巻き込まれる…。

(感想)
◆かれんとショーリの、恋のあま~い物語。
「恋」することで誰かを思う、繊細なワクワク感がいい。
それとともに、二人が人生に真摯につきあおうとする構えが、ステキで大きな魅力だ。


今回は、異国で先住民・アボリジニの研究をしていて、一時帰国した秀人とショーリの関わりと、
恋話&生き方話が、興味深かった。

 兄の妻・裕恵に恋していることを、認める形になる秀人が、ショーリに問いかける
「この世に、好きになっちゃいけない人っていると思う?それとも、いないと思う?」
そう言いながら、好きであることは認めても、行動はぐっと抑える秀人の切ない思い。
ショーリは、それに、同じ部活の女性・星野からの告白を思いおこす。
そして、秀人と星野の思いを、重ねる。
どんな強い思いも、成就しない哀しみのことや、「恋」する思いや、人間同士が思いを伝えあう
ままならなさ、を思う。

大学生で、進路が決まらないショーリは、会社勤めじゃなく、好きなアボリジニの研究をしている秀人から
こんな言葉を聞く。
「自分で選べるってことは、責任まで自分が引き受けなきゃいけないってことだから。」
好きなことを選んで生きることは、楽しいだけでなく責任を引き受けること。

兄の妻・裕恵に、恋をしていることを家族の前で認めてしまった秀人。
それが 「消せない記憶」。
 
こじつけ読書をすれば、
ただ一回だけの生で、人生に本気の責任を引き受けて生きること。
その「リハーサル」じゃない「本番」を生きる心の構えや行動自身が、心に焼きついてくる
「消せない記憶」なんだと思った。


村山さんのあとがきを読みながら、人生の幸せって何だろうね?
とも、思ったのでした。

(村山 由佳 著 「消せない記憶」 集英社 2009.5)

久々の伊坂さん。
難しかったぁ~。読み終えてどっと疲労感。(笑)

◆ でもね、主人公の一人・二郎さんの思いやキャラクターには、興味を覚えた。

それは、例えば、救急車を見ると
「どこかで誰かが痛い痛い、って泣いているのかな」と心が痛む。
いろんな場面で、困っている人を見ると、何とか助けてあげたいと思う。
なのに、何もできない自分の無力感に、くよくよする。

こんなふうな登場人物や問題意識は魅力的だ。
でも、作品としてスッキリ結晶していると思えなかったのが、残念だった。
スカッとする、深くて面白い作品を、期待してまっせ~!大好きだよ!伊坂さん!


◆ 読み終えて感じた、あれこれ。
個人が出会う「苦悩」を、ちっちゃな世界に閉じ込めちゃだめなんだ。
それは、もっと大きくて生きているみんなに共通している「苦悩」だってことを意識する
ことが必要なんだ。

人が「苦悩」に対峙するとき、生きる力をくれるのが「物語」「音楽」だということが語られる。
普遍的な人間共通の「物語」として、作品に「西遊記」が登場してくる。
また、国籍を超えて知らない人同士が、無意識にみんなが共有できる「音楽」のことを
「星の音楽」と表現している。いい言葉!

人間共通の、音や物語を感じとる日常へのささやかなアンテナを、コツコツとちびちびと
育てていくんだ。
くよくよしたり、悩んだりすることを避けるんじゃなくて、
程よい付き合い方を探しながら歩くしかないなぁ。
ふぅ~~。(笑)

(伊坂 幸太郎 著 「SOSの猿」 中央公論新社 2009.11)



本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

11 | 2009/12 | 01
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。