2010 / 07
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「みつばコーポラス」の裏階段をきっかけに、展開される三つのファンタジー。
「裏階段」と言えば、寂れていて人がめったに来ないとか、汚くてじめじめしている。
もう一方で、子供たちにとって、独り占めできる秘密の場所でもある。そんな作中の表現もある。
秘密めいた場所から生まれてくる不思議な出来事。

◆ 玉ねぎを食べて、姿かたちが玉ねぎのようになって、身体を洗うたびに小さくなって、最後は消えてしまう(後で復活)人間の言葉を話す不思議な子猫と、小村学と妹くるみとその一家の話。(「タマネギねこ」)

◆ 裏階段にリコーダーの練習に来た小学四年生の一樹少年に、人の言葉で話しかけてきた、どくだみの茎でつくった「不運の笛」と、ひまわりでつくった「幸運の笛」を吹きわける不思議なクモの話。登場する、一樹たちが教わる音楽の先生のニックネームは「アリババ先生」。(「ラッキー・メロディー」)

◆ ものを開けるのが好きな、7歳の天野ナナと一家が出会った、いろんな煙を食べる「けむりおばけ・モクー」の話。(「モクーのひっこし」)


(感想のような…)
◆ 文句なく面白い三つの話。
どこか日陰者のような裏階段という場からうまれてくる、怪しく楽しい秘密のドラマたちはどれもいい。

二話目を読んでいると、嫌いな先生に密かにニックネームを命名していたことを、思い出す。
でもニックネームってどこかで親しみの気分もあって命名していたのかも。
こんな経験、自分にもあったなぁ。

リコーダーを吹くクモが演奏する、「幸運」や「不運」の笛で演奏する曲目がある、その命名も好きだ。
(「便所コオロギのお葬式に来た厠キリギリスとお手洗い松虫の悲しいすすり泣き」「ミノ虫の火あぶり」とか「モンシロチョウの初恋」とか。)どんな曲なんだと想像するだけで楽しい。

こんなかで「けむりおばけ・モクー」が一番好きだ。
熱望!モクーシリーズ。「モクーの大冒険」ってどう?(笑)

いたずら心とか好奇心とか、いつまでも新鮮でいたい感情(笑)
そんな思いが、ちくちくと刺激されて、頭をもたげてくる。
想像力や遊びの心のページを開くって、いくつになっても好きだ、いいぞっ!

(佐藤 多佳子著「ごきげんな裏階段」新潮文庫 2009.11)


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宮崎アニメを、映画館で久しぶりに観た。
療養生活という奴で、映画館に行けない日が長かった。
なので、映画館で、観られて嬉しかった。この前の月曜日の祝日のこと。
封切り三日目とあって大混雑。
初めて映画を、最前列の席で観た。
寝そべって、見上げるようにして観たのだ。
まるで、草の陰から巨大な人間を見上げる、アリエッティたちみたいな感じだった。(笑)

魂が、画面に棲みついている感じ。
キャラクターの顔。
自然の描写。宮崎アニメだなぁ~…。


心臓の病気で手術を控えて不安な気持ちの人間・翔。
体が小さくて借り暮らしながら、精一杯生きている小人のアリエッティたち一家。
その小人たちの生きる姿に、励まされる翔。
淡い恋心を抱きあう二人の、気持ちの交流と別れ…。

翔がベッドの上で読んでいる場面で出てくる一冊が、先回ここにUPした「秘密の花園」だった。
人の気持ちが触れあう大きさ豊かさ、この本からも翔は何を感じたんだろう?

志田未来始め、大竹しのぶなどの、声優陣も楽しかった。
ああ、今夜TV放映の「トトロ」観ないと(笑)。


米林宏昌監督 宮崎駿企画・脚本 「借りぐらしのアリエッティ」
メアリー・ノートン著「床下の小人たち」原作 岩波少年文庫 2010,7,19名古屋ミッドランドで鑑賞)


梨木さんの「秘密の花園ノート」を読んでから、バーネットの原作「秘密の花園」を読んだ。
この作品も含む「物語」のことを、彼女は、こんなふうに言っている。
「…物語というものは、きっと、さまざまな読みを排除することなく、それらを響き合わせる求心力を持つことによって、自らその奥行きを穿っていくものなのでしょう。」(「秘密の花園ノート」P4)
いろんな読み方ができる大きな鉱脈を持っているのが、豊かな物語。ホントにそう思う。
(…って言いつつ、ここの「こじつけ読書」を正当化しております。笑)

◆ 梨木さんが要約してくれた、物語のあらすじ。

「インドで孤児になった女の子・メアリは、叔父の所有する、英国・ヨークシャの
広壮な屋敷に引き取られ、そこで秘密の庭を見つける。病弱な従兄弟・コリンと
地元の農家の少年・ディコンの三人で、人に知られぬようその庭の手入れをする。
健康になったコリンは、それまで疎遠だった父親に、見違えるような姿を見せて感動させる。」(前掲書P2)

(思ったこと)
◆ わがまま放題、自分のことを中心にしか考えられなかった二人、メアリとコリンの視野が広がっていく、変わっていく。その言動や、様々なエピソードが楽しい。
ゆっくりと読んだ。

顧みられる事の無かった二つの魂が、命のきらめきに気づき、目覚めて行く。
自然の美しさ、誰かの命と触れあっていく体験が、自分の凝り固まった魂を柔らかくほぐしていく。
命を、肯定していく。

まだ気づいていなくても、ボクらは「秘密の花園」に、いつかは出会えるかもしれない。
輝きを発見できる。その輝きをもっと育てられるのかも。
そんな、もろもろの思いが溶け合っているんだと思える作中の「秘密の花園」の発見。

ボクら一人一人が、それぞれの「秘密の花園」をみつけられるかも…。
「秘密」って言葉。どこか、秘めやかで、甘くて、いたずらとたくらみがあって、心をワクワクさせる。

自分の「花園」を見つけること。
大変なだけじゃなくて、面白いことでもあるんだ、きっと。
面白がって「花園」を探そう。

淀んだ沈滞した命が、命らしく輝きだしていく。変わっていく。
二人の魂の軌跡や会話が、こちらの魂もリフレッシュしてくれる一冊。


梨木香歩著「秘密の花園ノート」岩波ブックレット2010.1
バーネット著「秘密の花園上・下」岩波少年文庫2005.3)


◆ 売れない物書きの綿貫征四郎が、亡くなった学生時代の親友・高堂の家の、家守を頼まれて
過ごす日々の中で、ぐるりの自然や不思議な出来事を綴った、少し前の物語。
「綺譚」の意味そのままに「世にも珍しく面白い物語」。
亡くなったはずの高堂が、掛け軸の向こうからやってきたり…、
小鬼、河童、四季の花々など…。
不思議に満ちた話のオンパレード。

「猿がサルスベリに座るなんて。」
中略「それではあの木の場合、サルスベラズと呼ぶべきでしょう」107

人に化けたカワウソに、同類と見込まれて
「取り憑かれたら、一生、カワウソ暮らしだ。」
115

などの、交わされる、かけあいも楽しい。


◆ 不思議でおもしろい28編が収められている。
爆笑の笑いでなく、クスッと嬉しい心持にさせてくれる笑いの作品。

安心して文章のゆりかごの中で揺られる気分を味あわせてくれる作家は珍しい。
彼女は貴重な一人。スピードを競い合って血眼になる現実とは逆にみえる物語。
ゆったりとした「命の気配」が全編を漂う。

後半に征四郎が、作中でこんな意味合いのことを言う。
「与えられる理想より、刻苦して自力で掴む理想を求めて」(185)
生きることが「精神を養うこと」になる。

自分はどうなんだろう?
ささいな言葉が、心に沁みてくる。

とっぷりと体も心も預けて、ひたりきって楽しむ一冊。

(梨木香歩 著「家守綺譚」新潮文庫2006.10)


この題名の響きが、なんかワクワクして、単純に嬉しい。

◆ ローンを抱えながら、二時間半の長時間通勤をする、風采の上がらない平凡なる43歳の会社員・鶴ケ崎に、
ある日、セクシーな悪魔・サターナが、鏡の中から現れて耳打ちする。
今日のあなたは、どんな願いも叶う素晴らしい一日「神さまのサービスデー」なのだと。
そこに、あたふたと、普通の会社員のような男・サービスデー管理課次席主任・第二級天使ガブリエルがやってくる。
本人に知られてはまずいその事実。
知ってしまったあなたの、よりよいサービスデーのために、私がそばでアドバイスしましょうと…。
つまりは、暴走させない見張りつきサービスデーが始まる。

鶴ケ崎は、やってみたかったことを始める。
仕事の時間中に「オレは遊んでくる。君らは働け。」と宣言して出かけたり。
とてつもない美人に声をかけて、一緒にお茶を飲んで好意を抱かれたり。
契約に行き詰った部下のSOSに、アポもとらずにいきなり得意先に乗り込み、
不可能とも言える条件で大きな契約に至ったり…。
順風にみえるサービスデーに、突然の波乱…。
さてさて、どんな結末に…。 「本日、サービスデー」
◆ この本の約半分を占める、中編の表題作「本日、サービスデー」は実に楽しい作品だ。
笑えて、ほろりとさせる。

何でもかなう、人生のサービスデーがあったらいいなぁと夢見る。
でも反面で、「何でもかなう日」があったら、人間の欲望や傲慢でいい気になって、とんでもない事態を
引き起こすかも。この話は、まさにそんな事が描かれている。
やっぱり、思うようにいかないことの連続でも、時々いい日があって、しみじみと嬉しい、稀な瞬間を味わうってのがいいのかも。

◆ 他に、犯罪や事件に関わるものをコレクションする人間の集まりを描いた「東京しあわせクラブ」。かなりブラックな話。人間には優しさと残酷が同居している。

◆ 日下部さんのアパートの部屋に住む、るり子という名の右手首だけの幽霊の話「あおぞら怪談」。


◆ ザリガニツリを通じて「気合」を感じとり、逃げない自分へと脱皮する話「気合入門」。

◆ 二十歳で自殺した早織が、三途の川の渡し場で、渡しの船頭男との会話から自分の人生を見つめ直す話。
「蒼い岸辺にて」。
表題作の次に、印象的だった。
「育てないと孵らない卵」が、未来の夢なんだと男が語る言葉は、なかなかだった。
もっともっと暖めて孵してくれぃ!と、自分の中の卵も、言っているかも…。

朱川さん! 旨いっ!


(朱川湊人「本日、サービスデー」2009.1光文社)


◆ 首相・武藤泰山が国会答弁中に、大学生の息子・翔が酒場で飲んでいるときに、
突然、相互の人格が入れ替わる。

予期せぬ出来事に、二人は不安を抱えながら、お互いの行動をチェンジすることに…。

泰山は息子の代わりに、就職試験にいき、人事面接で議論を吹っ掛けて、面接官を怒らせたり、
コンパに出かけたり…。

は秘書から渡された、国会答弁メモの漢字が読めずに、「直面」「ジカメン」。 「低迷」「テイマイ」と誤読答弁のオンパレード。漢字も読めない首相と馬鹿にされ、問題にされる。
なぜ、こんなことに? はたして顛末は?…。


◆ 親子間の世代や境遇・価値観のちがいからくる、二人の思いや行動のドタバタが楽しい。
秘書・貝原と泰山の会話が、かけあい漫才のようだった。
奇怪な出来事。飽きさせない波乱と笑いの仕掛けの数々。
入れ替わって行動するうち、お互いへの認識を深めていく二人。あるべき政治や仕事の理想に改めて気づいていく。
笑いの中に
「政治って?」「マスコミって?」
「夢を持って生きるって?」と、
ふと考えさせてくれる。

笑いをふんだんに盛り込みつつ、大勢に流されずに、夢や理想を求めて生きる人物を描きだして
心を温めてくれる、池井戸さんの魅力がつまっている最新作。


(池井戸 潤著 「民王」 2010.5 ポプラ社)



本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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