2011 / 06
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◆バドミントン部の中学三年生の水嶋亮が、強豪の横浜湊高校にスカウトされて進学し、部の仲間やライバルと競い合いながらインターハイを目指す、手が汗でベチャベチャになるような、バドミントン小説の傑作。
山あり谷ありという作品じゃないけど、気分爽快な一冊。


◆ボクもバドミントンを中学・高校とやっていたので、わかるな~これという感じだった。
朝も、放課後も、夜家に帰った後も素振りをしたっけなぁ。
そんな季節の、熱い血が蘇ったのでした。

この作品は、何より試合場面がとてもリアルだ。
目の前に、一進一退の熱闘が浮かんでくるのだ。
本の題名「ラブオールプレー」は、試合の時に審判が対戦する選手に告げる開始の言葉。
ゼロのことを「ラブ」とバドミントンでは言う。

この時代、まるで、歯が浮くような、色あせてしまったかのような言葉たち…。
でも、この物語を読み、彼らの日々を追っていくと、とても素敵に聞こえてくる。

こんな言葉がでてくる…

◆水嶋に想いをよせる部の女子マネージャー・櫻井が水嶋たちの部活動に共感して言う。
好きって、それだけで楽しいことなんだよね。…バドが大好きで、楽しい、それだけだもの。…」

◆水嶋の試合を観た父親は、試合で結果が出なくても「立派で正しいことはある」といい、必死で試合に臨む選手も応援する仲間も「正しい青春を送っている」という。

◆高校の監督の海老原は、部員たちに言う「体と心で懸命に刻んだ記憶は、生涯消えることはない。どんな時も、それは君たちを支える」と。


バドミントンじゃなくても、好きなことを追い続ける日常を持ちたい。
そんな歩みをしたい。熱い想いを忘れたくない。

読んで、嬉しくなる傑作。


(小瀬木麻美著「ラブオールプレー」2011.5ポプラ文庫ピュアフル)


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生前放送された、NHKBSのロングインタビューの書籍化。
三十代で早逝した作家を目指した父親のこと。
地主の子だったが、農地解放運動を目指した父。
みんなが戦争遂行一色の思想を強要された戦時中、井上家の空気は国の方針と違っていた。
「お前はアカの子だから」と赤いキャンデーしか買えなかったそうだが、彼はこんなふうに振り返る。

「ほかの子と違うふうに言われて、傷つくようなことはありませんでした
根が楽天的なんでしょう 何でもいい方へ、いい方へ 考えて暮らしていたように思います」
P14と。

そんな父親のこと、親分肌で、逞しく、他人を疑うことを知らなかった母親のこと。
母親と離れて暮らした「児童養護施設の青春」のこと。将来の道を作家と決めて映画を観まくった
高校時代。方言コンプレックスと大学時代。国立料所勤務時代のこと。
落ち込んでいた自分を元気づけてくれた文学との出会い。大学に通いながら、親掛かりをやめたいと、浅草フランス座の文芸部員なったこと。そこでの、渥美清たちとの出会い。フランス座のコントを書きつつラジオドラマを投稿していて、ライバルが藤本義一だったこと。NHKラジオからの誘いで専属ライターになったこと。「ぼくの創作術」「創作の喜び」では、劇作の魅力を語っている。芝居は「一番厳しく、しかも面白い。贅沢な芸術です。」P86 そんなふうに芝居の魅力を語っている。

◆ボクが最も印象深く心に残ったのは「笑いとはなにか」のところ。
「ロマンス」などの井上作品の中でも、しばしば語られるセリフがインタビューの場で
彼の哲学として語られている。

生きていくこと。人間という存在の中に悲しみや苦しみは備わっていて、どんなふうに生きても「恐ろしさやかなしさ、わびしさや寂しさ」は必ずやってくる。「でも、笑いは人の内側にないものなので、人が外と関わって作らないと生まれないもの」P90 人を悲しませるのは簡単だけど、笑いは作らないとできない共同作業だと。
これは「一番人間らしい仕事だと思う」と。これは井上さんの作家活動のエッセンスだなと思った。
そして、人生って作家じゃなくても笑いのセンスが大事だと思った。


◆もう一つ。「本とのつき合い方」にでてくる「知恵の育て方」のこと。ここは個人的な深読み。
体にどんどん入れる情報がいくつか集まって、知識になります。その知識を集めて、今度は知恵を作っていくのです」P30さらっと言っている知恵を生み出す作業のこと。
当たり前の知識を自分の中に蓄積することは、地味な日々の営みから生まれてくる。
知恵を育てていく積み重ね。やんなきゃなぁと強く思った。

この本を読みながら「哲学と日々の歩み方」のことを考えた。

(井上ひさし著「創作の原点 ふかいことをおもしろく」2011.4 PHP)



本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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