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「こじつけ」で読書する、ここのページにピッタリの一冊。
「PK」「超人」「密使」の三話を収録。

(思った)

◆ 最初の「PK」に明快なメッセージがある。
「臆病は伝染する、そして、勇気も伝染する」
ってこと。

個人の場面で問われる、主義や信念を捨てる行動が、社会全体の暗さやイキイキとしない人の表情をつくる。それは個人の問題だけど、個人だけのことじゃない。

本文に出てくる「影に包まれていく」「疲労の陰りが見えていた。萎れた植物が行進している雰囲気」
「彼ら一人一人が、増殖していく黴のようでもあった」
という表現は、哀しい人の姿を象徴している。

一方で、勇気が伝染する場面も、描かれている。
貧困な母子家庭で育ち、体力的にも貧弱に見られ、いじめを受けた少年期の小津と宇野。
後に、二人は、サッカーの代表選手になり、伝説的なPKを演出する。
いじめられて、サッカーを辞めたいと思っていた失意の少年時代に、二人は、若き日の大臣が、乳児の危機を救う場面に遭遇し、励まされる。
その場面を見た他の人たちも「歓びの叫びが反響し、いく人かは抱き合った」と勇気の伝染の描写。

◆ それにしても、昨今の消費税をめぐる国会議員の行動。
負担だけじゃなくて、国民の元気も奪っているってわからない?
「おれおれ詐欺」にひっかけて「やるやらない詐欺」と呼ばれる人があるかも。(注・「やると言ってやらず、やらないと言って消費税を談合で決定した詐欺」の意味)。
脱線ゴメン。

さて、この本は、信念を貫く勇気の大切さを、問いかけている。


(ものがたり)

◆「PK」

サッカー選手・小津は「PKのチャンスが訪れたら、外す」ようにl監禁されて脅される。
就任したばかりの大臣は、幹事長から、嘘の証言を強要される。従わないと、破廉恥行為のレッテル貼りして、嘘を世間に信じさせるぞと脅される。
作家・三島。出版社から呼び出され未知な男から、小説の「改稿」を強要され、脅される。
信念の変更を強制的に迫られる三人。さて…。

◆「超人」

作家・三島宅に、営業で訪れた本田毬夫青年が悩みを告白「未来が分かります」と。その顛末は?

◆「密使」

僕(三上)と私(本田毬夫?)の話が交互に展開される。三島は他人と握手すると、一人当たり6秒を相手から奪える「時間スリ」。アトラクションの仕事中に、ある場所に一匹のゴキブリを届けることを依頼される。
「私」は、ある物流倉庫の地下室に呼び出され、世界の人を救うために、君は、ただ一人死んでもらう対象になったと告げられる。さてさて、どんな顛末に?

第一話に登場する男女の会話に、二、三話の内容につながる内容がある。


「信念を貫く勇気の大切さ」がテーマ。
イキイキとした、身体と心と表情で、生きたいぞっ!
っと思ったのでした。

(伊坂幸太郎 著「PK」2012.3 講談社)




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(ものがたり)

「君たちに明日はない」シリーズの第四弾。
「日本ヒューマンリアクト㈱」というリストラ専門の会社員8年目のリストラ請負人・村上真介が主人公。
リストラは、白か黒かを決めて、バッサリと人を切る非情な仕事。でも、彼は非情に徹しきれずに相手の将来を思い、自分のあり方に迷い続ける主人公。今回のリストラの対象はCA(キャビンアテンダント・客室乗務員、以前はスチュワーデスと呼んだ)・楽器メーカー社員・外食産業社員たち、社長の高橋が昔仕事に関わった元証券会社員たちも登場。

以下四話からなる。

「勝ち逃げの女王」

航空会社が舞台。浅野貴和子42歳のCAが登場人物。IT会社の重役の夫と二子の家庭。憧れて就いた仕事、その結論は?

「ノー・エクスキューズ」

真介が面接二課長に昇格。社長高橋に誘われ、年配の二人の男と飲む。二人はかつての山三証券の社員だった。
高橋の、会社設立の経緯が出てくる。

「永遠のディーバ」

楽器メーカー「ハヤマ」に務める46歳の飯塚正樹。元「ハヤマ」主催コンテスト準優勝の経歴をもつ会社員の彼が最後に下す決断は?

「リブ・フォー・トゥデイ」

外食産業「ハイラークグループ」に務める森山透。リストラだが特Aランクの彼を、会社は転籍誘導してグループの中の人材として残したい。さて、本人の真意と決断は?

(おもった)

◆ 様々な仕事が登場する。CAは合コン回数が多いとか。その内情がみえて面白い。個々の人間の逡巡や生きる道の選択。つまりは人間の生き方に、読後、新鮮な刺激がある。真介のアシスタントの川田美代子のホンワカとしたやさしさもいい。この巻では、社長の高橋が、なぜこの会社を興したかが第二話で語られ、会社創立の背景も出てきて物語に厚みを加えている。

◆ リストラを描きながら、美化していない。
会社や経済の非情に、真介やリストラの対象になる人たちが、人としてどう向き合って、どう本当の人生に歩きだすか。企業に操られるだけの人生じゃない、自分の生を求める姿にうるっとくる。リストラという重苦しいステージを扱いながら、読後感は爽快!

◆ リストラは重くて人生を左右する出来事、だから大きな痛みがある。でも、心のしなやかさや、開き直った勇気が大切。登場人物たちの歩みが教えてくれる。
悩みや逡巡の末に、本当に大事だと思うものに向かってリストラを受けた人たちが歩きだす、そして真介も、そんな人生に共感し励まされる。
これは、面白さ抜群の、人の自立を考える物語でもある。


(垣根諒介著「勝ち逃げの女王」2012.5新潮社)

古書店「東京バンドワゴン」を舞台にしたシリーズ第7弾。
この大家族の空気にひたりたくて、つい読んでしまうこのシリーズ。
あまりの大家族に、巻頭の登場人物相関図を時々見なおしながら
以前のストーリィを思い出したりしつつ読む。また会えたという感じ。

若干、説教くさくなったなぁとか。
ええっ!そんな都合よくいくのかよ?などという場面もある…
でも、まっ、いいかっ!と読んでしまうのが、このシリーズ。

子どもたちの成長がすごい。三歳になったかんなちゃん、鈴花ちゃんが、朝ごはんの席順を仕切っている。
我南人の性格を受け継ぎそうな中学生の研人は、ギターを弾きまくり、医師を目指す花陽は高校の勉強を頑張っている。
みんな、どんなふうに変わっていくのか、楽しみ。


物語は次の四話。

「冬・ゆきやこんこあなたに逢えた」

書店バンドワゴンの本棚の一角の本をまとめ買いする不思議な客。一冊ずつ希少本を売りに来る別の客。
その行動の真意とは?

「春・鳶がくるりと鷹産んだ」

我南人の音楽仲間・中川の相談とは?

「夏・思い出は風に吹かれて」

すずみの友だち・美登里が三年ぶりに訪ねてくるが…。

「秋・レディ・マドンナ」

我南人の亡妻・秋実と同じ施設で育ち、今はその児童養護施設を経営している智子から
施設閉鎖の知らせが届く…。

このシリーズ、だれかと一緒に過ごす楽しさを感じさせる。心が通うっていいな!

(小路幸也著「レディ・マドンナ~東京バンドワゴン」2012.4集英社)

(ものがたり)

六つの、物語からなる。
別れた元彼の納骨式に出席する話。(かたちないもの
駆け出し新聞記者・山崎里和が、港で出会った60歳の失業死亡男の足跡を追う話。(海鳥の行方
国選弁護しかしない弁護士の話。(起終点駅
失業した男が見た、廃品回収をする人々。(スクラップ・ロード
山崎里和が再登場。特別養護老人ホームで亡くなった歌人の話。(たたかいにやぶれて咲けよ
宅配弁当の配達をしている久保田千鶴子が、30年ぶりに、北海道の小さな町に、強盗殺人の末自殺した弟の永代供養に訪れて、再会した死んだ母の友人・85歳のたみ子の話。(潮風の家

(おもった)

荒廃した場面と人生の空しさと哀しみで、ド~ンと心が重くなる作品群だ。
思ったのは、誰もが生まれる家や所を選べないということ。
親も、自分の身体も、外見の美醜も決められない。
生まれた場所で、懸命に生きるしかない。
暗くて重いけれど、人の真実の姿でもある。
そんな運命を背負って生きる人たちの物語。

「潮風の家」では、政治と老人福祉のお寒い今の状況を、たみ子に皮肉たっぷりに語らせる。
「国会中継」を「酔っぱらった漁師のほうが、なんぼかましな言い分あるわ」と…。
近所の人が「孤独死」した様子を「流行最先端の死人」と語らせたりする。
辛辣な皮肉を宿した作家でもある。

暗い物語の中に、人や命への哀惜があり、生きることへの愛しさがほんのり残る。

(桜木紫乃 著「起終点駅(ターミナル)」2012.4小学館)

この爽快!一気読みの一冊!

(ものがたり)

電子部品メーカー・青島製作所を舞台に、ライバルのミツワ電気との存続をかけた企業競争、手に汗握る社会人野球の対戦場面。この二つの軸をからみあわせ、つばぜり合いを繰り広げていくサバイバルドラマ。
そして、人間ドラマ。

有力選手2名を連れて、青島製作所から、ライバル会社ミツワ電気の野球部監督に転任する村野。
後任として、青島製作所の新任監督になった大道。
マネジャーの古賀。総務部長で野球部部長の三上。
青島製作所の派遣社員・沖原、彼は高校時代で天才投手と言われながら、ある事件をきっかけに野球の舞台から
遠ざかったていた。その苦悩と去就は…。
カリスマの会長・青島の存在感。
青島から抜擢されて、青島製作所の企業経営を託された社長・細川の苦悩。
鋭い観察眼を持つ、青島製作所の大株主の城戸志眞。
企業の利益のためには、おきて破りの手法も使うミツワ電気の社長・坂東の権謀術策。

題名は、ルーズヴェルト元大統領が、野球は8対7の試合が一番面白いと言った逸話からのもの。
様々な登場人物が織りなす、まさに「ルーズヴェルト・ゲーム」。

(おもった)

観戦していて、つばぜりあいの試合ほど、面白い野球のゲームはない。
つばぜり合いのゲームとしての、企業経営と野球の試合の様々な場面が出てきて、ワクワクする。
二つの軸が、みごとに絡み合う緊迫した場面が連続する。

でも、勝負以外の、大事なテーマも描かれる。

それは、企業経営って何だ。本来どうあるべきなんだという問題。
野球も、勝てばいいというだけの描き方じゃない。

そこには、苦悩や夢や歓喜や心の交流が…つまりは、人が描かれている。
生きる妙味って何だろうとも思った。


一気読み。爽快な読後感の一冊。


(池井戸 潤著「ルーズヴェルト・ゲーム」2012.2講談社)

(ものがたり)

小さな奥秩父の山小屋「梓小屋」を舞台に、そこの三人のスタッフや、
山を訪れる人たちの人間模様と自然を描いた山岳小説。

小屋のスタッフは、交通事故で亡くなった父に代わって、脱サラして小屋を継いだ長嶺亨。かつて経営していた会社が倒産して以来、ホームレスで暮らしながら小屋の営業時期だけ助っ人にくるゴロさん。若年性痴呆症でなくなった父への心労から、鬱病になり
失意の中、かつて、父が写したシャクナゲの群生地を求めて、山を彷徨って遭難し、亨たちに助けられた縁で、小屋のスタッフになった美由紀

…そして、山を訪れる人々。

「春を背負って」「花泥棒」「野晒し」「小屋仕舞い」
「疑似好転」「荷揚日和」の6話。

(おもった)

3話目の「野晒し」が印象的だった。中で、ゴロさんと亨が交わす会話。
楽して手に入れようとするのが「欲」で、手に入れる苦労そのものが人生の喜びであるような何かが
「夢」だという「欲と夢の違い談義」。
「自分で歩いた距離だけが本物の宝になる」(P118)という自然と人生を結びつけた指摘。

更に、美由紀が山小屋で、スタッフとして日々を過ごしたのちに言う。
「気持ちが沈んでいるとき、誰かのためになにかをしてあげると、心のなかに光が射し込むの。(中略)それは私にとって、生きるために必要な空気のようなものなの」(P128)


生きている今を考えさせてくれる、登場人物たちの生きざまや言葉。
自然の風が、行間から吹いてくるような一冊。

(笹本稜平著「春を背負って」2011.5文藝春秋)



◆ シンガー・吉田拓郎のことを描いた自伝的小説。彼のオリジナル曲を表題にした全11章からなる。
内4章の「土地に柵する馬鹿がいる」は聴いたことがない。
病弱な小学生時代、友人に自転車の荷台に乗せてもらって通学したこと。

初めて手にしたのがウクレレで、ビートルズにあこがれた。
バンドではドラムを担当。そこではロックから歌謡曲まで演奏していた。
やがて当時は珍しいオリジナル曲をとりいれていく。
バンドのコンテストに出て、プロを目指して、仲間と上京する姿も出てくる。

彼が知人たちと「広島フォーク村」をつくるところまでが描かれた小説。


◆ 広島時代の、知らなかった拓郎が描かれていて面白かった。

初めて彼の音楽を聴いたのは、ライブのレコードだった。
やんちゃで、やたら話が面白い、勢いのある太い声だった。

思いだすのは、無名だった彼が、中津川の野外コンサートで、高田渡という
フォークシンガーのステージに、愛着のある歓声をあげる観客だった姿。
騒がしい奴がいると思った。

ボクの中の彼は、ライブの人。
今を生きる彼のライブが観たい。


(田家秀樹著「いつも見ていた広島」2007.9小学館)

(ものがたりは…)

21歳のシングルマザーの珊瑚と生まれたばかりの娘・雪。
高校を中退して雪を生んだ珊瑚。
彼女は、幼子を抱えて生きるすべを模索する
母子と、二人を取り巻く人たちの物語。

(思った)

派手な事件も爆笑もない。

ゆったりした会話。
静謐な自然の描写。
生き方に迷いながら、行きつ戻りつする登場人物たちの心の揺れ。
あぁ、これが梨木節の小説のテンポ。

このテンポにひたりきった、ゆったり読書がとても嬉しかった。

珊瑚が、食の世界の奥行きを知り、本気でとりくむことを人生の目標に歩き出す姿と
雪が成長する姿をかさねあわせながら、人が生きることをあれこれ考えさせてくれた。

静かな波紋のような励ましが、ジワジワ沁みてくる一冊。


(梨木香歩著「雪と珊瑚と」2012.4角川書店)



本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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