2012 / 07
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図書館書架でみつけて、初めて読んだ辻村さんの一冊。
結果はビンゴ! 近頃、当たりまくりの読書生活です。

誰もが死ぬことを、知っている。
死んで一番つらいことの一つは、当事者も、残される者も死によって、二度と言葉をかわせないことだろう。
現実では、二度とツナガラナイ別れが「死」。

◆(ものがたり)

この物語は、使者(ツナグ)が、生者と死者を、一生に一度だけ仲介する。両者を「ツナグ」(高校生・渋谷歩美が使者)物語。生者が、会いたいという希望を使者から再会したい相手に伝えてもらい、相手が了解してはじめて再会できる.

「アイドルの心得」

突然死したアイドル・水城サヲリ。それは以前、酒席に同席して友人に見捨てられて、路上で過呼吸で苦んでいた時、地味で人間関係が苦手だった平瀬愛美を介抱してくれた人だった。そして再会を依頼する。

「長男の心得」

そつなく疑り深い畠田康彦。長男として頑張らなきゃと、家業を継いで生きてきた彼が、二年前、病名を告げぬまま亡くなった母に再会する。

「親友の心得」

容姿も、演劇部における演技力にも自信があり、親友・御園奈津の褒め言葉を肯定してきた嵐美砂。彼女が、憧れていた演劇部の上演作品のヒロインに奈津が立候補、嵐は、思いがけなく落選する。嫉妬した嵐は、奈津が出られなくなれば、役が巡ってくると、ある行為に及ぶ。奈津は翌朝、交通事故で亡くなる。自分の企みが原因で死んだのか?であれば、自分の企みを隠したいと彼女に会うが…。

「待ち人の心得」

土谷功一。9年前に出会い、7年前に結婚するはずだった日向キラリが、プロポーズした後、友人と旅に出ると、嘘をついて出かけて、そのまま失踪する。
彼は騙されたのか?それとも、彼女の身に生死にかかわる事故が起こったのか?逡巡しながら使者(ツナグ)に再会を依頼すると、彼女は亡くなっていたことが分かる。彼女から使者を通じて、会いたいと伝言されるが土谷は、当日になって、彼女と再会するかどうか悩み続ける…。使者である「ツナグ」が土谷の翻意を必死で促す場面を始め、くぎ付けにさせる場面の連続の傑作。

「使者の心得」

歩美が使者になった経緯。仲が良かったはずの彼の両親が、なぜ悲劇的な形で亡くなってのかその真相がわかる。様々な謎が明らかにされてくる一話。

◆(思った)

「親友の心得」の心に残る痛さ。「待ち人の心得」の深い感動。この二作は特に印象的。


◆ 親友に嫉妬して、やってはいけないことをした嵐美砂。深くて痛い心の傷を背負うことになる「親友の心得」は、痛々しくて哀しい。

◆「待ち人の心得」は、群を抜いて感動的だった。
改めて、生きている時を、大事にしなけりゃなぁ~と思った。
印象に残った場面がとても多い。
心から彼を愛して、出会えたことに無上の幸せを感じて、新しい明日をつくるため喧嘩していた実家に向かう途中、不慮の事故で亡くなる「待ち人の心得」のヒロイン・日向キラリが、再会して、彼に思いのたけを伝える場面。そして、迷った末に彼女の話を聞いて、決意をあらたにする土谷の思い。
読みながら、何度も涙があふれてきた。
本って、こんな時間が欲しくて読むんだよな。

偶然ですが、最近続けざまに言っちゃうよ。
強くつよく、おススメの一冊です!



(「ツナグ」辻村 深月著 新潮社2010.10)

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貫井さんに続いて、嬉しい本に出会った。
初めて読んだ山本さん、サイコー!

(ものがたり)

第一話「それ自身は変化することなく」

漫画家の卵・飯塚陽生が鬱屈する思いを抱えて訪れた児童公園で、子供たちのアニメカードの交換会を仕切っている詩羽に会う。初対面の彼女から「これからデートしない?」と誘われる。男女も年齢も問わずデートに誘うのが彼女の流儀だという。「人に親切にするの。それが仕事。」といい、金を持たず、家もない、タダで飲食できる飲食店をいっぱい持っている、詩羽の生き方とは?

第二話「ジーン・ケリーのように」

中学生の沙世こと「しいちゃん」は大好きなコミック「戦場の魔法使い」の最終回を読み終えて、自殺を図ろうとしていた山の中で、詩羽に会う。自殺を止めようともせず、かっこ悪い首つり自殺より、明日、私が入手する薬で自殺するほうがいいと詩羽は言う。ついては、今夜流星群の観望会をするので、参加しないかと誘われる…。
なぜ、沙世は自殺を図ろうとするのか?詩羽の真意とは?

第三話「恐ろしい「ありがとう」」

長船紘一郎、46歳、バツイチ、大学の科学部の教授。温和そうな人当たり、ちゃんとした外見。だが、その楽しみは「この街に不協和音が広がること。」それは人間同士が憎しみや罵り合いを広げること。ネット上の真面目な意見を揶揄し、意図的に攪乱させる書き込みでネット炎上させ、こっそり図書館のミステリー本の最後のページを切り取ったりする。詩羽は彼の行いを友人たちの力を借りて暴く。そして「悪い人を罰する代わりに生まれ変わらせる」と詩羽たちが彼にとった行為とは?

第四話「今、燃えている炎」

賀来野市を市をモデルにしたアニメ「ガールズ・テリトリー」が大ヒット。その作者・凍野蒼と梶原早紀(こと坂城しじま)が「賀来野ガルテリ祭」にくる。早紀は祭のイベントの「ガルテリ・オリエンテーリング」に参加する。

(おもった)

本当に面白い。何より元気をくれる。
「詩羽」という名前、存在の仕方。とても豊かな物語だ。
ヒロインの命の燃やし方が魅力的だ。
現実世界にある「悪意」と向き合いながら、人は、どんなふうに生きると楽しくて豊かに生きられるのか。
読んで嬉しくなる一冊。超おすすめ!


(「詩羽のいる街」山本弘著 角川文庫 2011.11)

小説「新月譚」の感想の続編。


◆おもった①

「存在するのに見えない」


題名の「新月」は、そこに存在しているのに、見えない人の真実を象徴していると思う。

ヒロイン・咲良怜花がこんな事を言う。

「そうか、今日は新月なのか。…確かにそこにあるはずなのに、見えない月。まるでわたしのようだと思った」(P470)僕らは、「見えない月」そのもの。
そして「見えない月」を見落としがちな存在。

◆おもった②

「木之内徹という男」


とても、いい加減で女性にだらしがない男・木之内徹。
はたから見れば、いい加減。でも、怜花には、一番いい男なんだ。
それは、「新月」のように、誰も見えなかったコンプレックスの塊のような怜花を、見つけてくれた、ただ一人の男だったから。

◆おもった③

「大好きです!」


他の人たちの、本書の感想を読んだ。
好みが分かれている。それがいい。
僕は、大好きです!

ページを繰る手が止まらない。
スリリングに変わっていくヒロインの背後に何が?

ジンジンとする、読後の余韻に言葉が出なくなる。
読書の面白さが、これでもかと迫ってくる傑作。

(ものがたり)

八年前、突然絶筆し、現在、57歳になった作家・咲良怜花を、26歳の若い編集者・渡部敏明が訪ね、熱心に復活をすすめる。彼女は、半生を語り始める。
なぜ、小説の作風が変わったのか。
なぜ、突然、絶筆したのか。
そこには、木之内徹との出会いと恋愛の顛末があった。


(おもった)

いろんなことを、いっぱい考えさせられた。

まず、人の出会いのこと。
この世界に一人だけでも、ここにいる自分を見つけてくれたらと思うことがある。
一生の間に、僕らは、どれだけの人と出会えるんだろう。
信頼する人にだけ見せる心の芯。その芯に触れられる出会いが欲しい。

咲良怜花と木之内徹の出会いは、お互いの欠点まで含めて、その芯に触れた希有なケースだと思った。徹に認められたくて、大きく変貌していく怜花の喜びや痛い心。
深く慕い合いながら、見えない部分を最後までかかえた二人の顛末…。切なかった。

自分も含めて、人は外見に惑わされる。その人だけが持っている面白さを見落とす。
ヒロインは、整形して外見を変えて行くが、その空しさに気がつく。

人の内面が、実は、こんなに起伏に富んで、広がりや豊かさを持っていることを、グイグイとつきつけてくる。
代えがたい愛する人が居ながら、時に他の人の魅力にゆれるヒロインの心情がリアルに描かれている。
合理と不合理、理性と非理性が同居する人間。どくどくと血が流れている人間の鼓動や呼吸の音が聞えてくるみたいだった。

560ページ、すべて面白い。
再読したい、希有な一冊。


(貫井徳郎 著「新月譚」2012.4 文藝春秋)

何とも優しい表題だ。
「だめな遺伝子を背負っているから、何をやってもダメなんだ」
とか「いくら努力しても、遺伝子で、あんたの運命は決まっているから」
という遺伝子・運命決定論じゃない視点。それが題名にあらわれている。

福岡さんは、生物学者。でも、文章は柔らかくて、文化の香りがいっぱいある。
免疫学者だった多田富雄さんが、能の新作を書いたり、美術の本を残されたのに似ている。
福岡さんも「フェルメール・光の王国」という楽しい本を最近発表された。
生前の画家・フェルメールが描く力を、画家以外の活動にも発揮していたのではないかと
楽しい推理をされている。

さて、この本は、生活の場面の疑問や悩みに、福岡先生がこたえる形のコラム。
興味深いいろいろな問いかけが49。
例えば
「彼は筋金入りの草食系。栄養学的に問題ないでしょうか?」
「彼氏も飼い猫もメタボです。太るタイプかどうか、遺伝子検査でわかると聞いたのですが?」
「スッポンを食べたらお肌がつやつやになった気がします。コラーゲンって、やっぱり美容にいいんですよね。」
「最近心が渇き気味。手軽に未体験の「感動」を味わいたいです。」など。


気軽に読みながら、目に見えないけど、生きている多くの命が世界にあること。
自分が当然と思っていたことが、ただの先入観や固定観念だったことがわかったりする。
(先のコラーゲンの外部接種が、ほとんど無意味ということ、とか。)
DNAとメタボの設問には、DNAでわかることもある。でも、過信はダメ、「情報の倉庫」くらいに考えて、人の生命現象を、名前より育つ環境こそが大事と言う。
この設問には、彼氏や飼い猫には「控えめなお食事の習慣をおすすめいたします」と結んでいる。

あとがきで言っている。
命や遺伝子を決定論でとらえるのでなく「もっと個体の自由度を尊重すべき」
「遺伝子は産めよ増やせよといっているのではなく、むしろ自由であれ、といっているのだと私は思う」

生命現象の不思議。儚さ。美しさを感じる。
そんでもって…。
ダメなことがあって落ちこんでも、それも含めて命の時なんだと、おおらかに生きればいいんだと思った。
優しく命を包んでくれるような一冊。


(福岡伸一著「遺伝子はダメなあなたを愛してる」2012.3朝日新聞出版)

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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