2012 / 11
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◆(ものがたり)

出版社入社三年目の那波田空也は文芸部配属の希望に反して、存在も知らなかった「ザ・拳」というボクシング雑誌編集部に異動になる。不運をぼやきながらボクシングのイロハを学び取材をしていく。担当の四つのボクシングジムのうち「鉄槌ボクシングジム」の練習生にもなる。

そこで出会う様々な人間像。人懐こさと悪意を併せ持つトレーナーの有田。華がある悪役を演じるジムの花形ボクサータイガー立花。周囲に好かれ、空也と同期なのにマイペースで頭角を現してくるボクサー坂本。坂本の友人で小学生の頃から14年通っているが、敗戦続きで芽が出ずに悩む中神。後半タイガー立花と組む、ボクサー経験はないが一風変わった名トレーナー萬羽

金も名声もめったになく、故障や後遺症や死の危険すらあるボクシング。
彼らは、その「拳」で何をつかもうとしているのか?本職ボクサーではない空也は何を思い、何を感じ取るのか?

彼自身の「拳」は「ザ・拳」の日々で何をつかむのか?

アッチッチ な 試合場面。
くりだされる人間の苦悩、乗り越えようと、もがく人たち。
面白さに、釘付けになった あつ~い一冊。

◆(おもった)

「八日目の蝉」を読んだ時もそうだったけど、いくつもの思いが読むたびに交差する。湧いてくる。
そのいくつか。

★「試合場面の圧倒的な迫力」。会場で試合をリアルタイムで見ているような迫力と熱気が文字から立ち上ってくる。一人の部屋で本を読みながら、立花たちに声援をおくりたくなる。

★★一筋縄ではいかない人間の不可思議さが印象的。
人懐こさと悪意を体現している鉄槌ジムトレーナーの有田の行動。

★★★人間の「強さ」って何だ?
立花、坂本、中神の鉄槌ジム所属ボクサーたちの生き様、試合場面。
三人が試合にかける姿や、苦悩、心の育て方が興味深い。
「強いから勝つんじゃない、勝つから強いんだ」という言葉が出てくる。彼らを見ていると「強さ」は、勝利への強固な思いを持って、試合の怖さを知っている故の、反復練習の中で静かに磨かれていくのかもしれない。
「強さ」って固定されてそこにあるものじゃなく、育てるもの、つかみ取るものだなぁとも思った。

★★★★金も名声もめったになく、故障や後遺症や死の危険すらあるボクシング。
なんのために、何を求めて彼らはボクシングをするのか?
「熱狂する生、面白い生、を諦めない。未知のかなたにある世界を見たくて、拳で追い求める。」
登場するボクサーで最も深く描かれている立花の言動には、そんな思いが、眩しいように散りばめられていると思った。


◆雑誌記者としてボクサーたちに接しながら空也は思う。実は「闘いの種類や相手や方法が違うだけで。」(P463)
ボクサーに限らず、誰しもその人の「拳」を持って生きているんだと。

僕らはこの生身の「拳」で何を求め、何を掴むんだろう?

血湧き肉踊る人間ドラマ満載の、超オススメ本!


(「空の拳(そらのこぶし)」角田光代著 2012.10 日本経済新聞出版社)


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角田光代さんの新刊「空の拳」(日本経済新聞出版社刊)。何とボクシング小説なのだ。図書館で借りて二度目を読んでいるのに、手元に欲しくて買いに行ってしまった。本を置くスペースをつくりたくて、先にブックオフに10冊ほど家の本を持っていったけど、悲しいほど安い引きとり額。思わずため息。

気をとりなおして、行きつけ書店に行く。個人的には、今年一番の傑作。すんげぇぇ~面白かった~。窓口になった女の子に「この本すんげぇ~~面白いよ!」って勧めた。彼女からは、コミックの傑作「銀の匙」がいつも発売が待ち遠しいとプッシュがあった。同感♪というわけで、そのコミックの作者の農家コミックエッセイ「百姓貴族」も、同時購入。読むの、すんげぇぇワクワクするよぉ~♪。

◆(ものがたり)

30歳になろうとするロックバンドのメンバー・三田村信也が、中学1年生の頃同居していた、チキさんと家族の日々を回想した物語。

中学生の信也が、小学生の妹・亜由美に、見知らぬモヒカン頭の男が台所にいると起こされた。
それが、離婚してスナックで働いている母が、家に連れてきたチキさんとの出会いだった。

彼には不思議な超能力があり、秘密の組織から追われているという…。

◆(思った)

見かけはともかく、優しくて料理がうまいチキさんが作ってくれた料理の一つが「満月ケチャップライス」。
チキさんが二人に授けてくれた、触らずにスプーンを曲げる超能力よりも、おいしくて元気が出る食べ物だった。

すごい超能力よりも、一緒に過ごした日々や、一緒に作って食べたこと。相思の関わり合い。
そんな時間や空間の中に、心の深いところに力をくれて、その後の生き方をつくるヒントがあるのかも。

不思議な物語の上手い朱川さんが、チキさんという特異な男を配して、家族の意味を描き出した一冊。

(「満月ケチャップライス」朱川湊人著 2012.10 講談社)

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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