2012 / 12
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◆(ものがたり)


いじめを受けたことで、引きこもりになり、離婚した母に頼りきって生きていた24歳の麻生人生。
突然母が手紙を残していなくなる。途方にくれたすえ、母の手紙をヒントに、長野県蓼科に住む
(母と別れた父親の母の)祖母マーサばあちゃんを訪ねていくが、認知症で人生のことがわからない。
おまけに、ばあちゃんの孫と称する21歳のつぼみという女性が同居していた。

人生は、そこで何を感じ、どんな生き方を探していくのか…。


◆(思った)


痛みも悲しみも含めて、読後の心を揺さぶるような小説が読みたい。
「生きるぼくら」という直球の、ある意味純朴すぎるこの作品は、心を温めてくれる、いい作品だと思う。
でも、原田さんには、もっともっと、と期待大なのです。

地域の介護士・田端さんの助言に、人生は、小さくても具体的で現実的な願いを実現していくことの大事さを、思う。そして、ばあちゃんの農法で米を作って、おにぎりを食べたいと願う。
そして、人生、つぼみ、就職に悩む純平たちは、地域の人たちの力を借りながら、ばあちゃん流の手作りの稲作に、初挑戦する。
そこで見えてくる。自然、いのちの豊かさや大きさ。
育っていく稲の生命力に、自分の命を重ねていく…。

些細で小さく見える入口を出発点にして、未知の世界や新しい価値を感じること、知ることの大事さを思った。

「生きるぼくら」には、大変なこともいっぱいある人生だけど、あなたの知らない世界があるよ。
生きて探していこう、感じていこう。
そんな思いが、込められているんだと思った。


(「生きるぼくら」 原田マハ著 徳間書店 2012.9)


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梨木さんの本は、必ず読む。
でも、今回は体調最悪の時で、眠りこけながら文字を追ったという感じだ。

副題「森の苔・庭の木漏れ日・海の葦」とあるように、エストニアを訪ねて見聞しながら、自然と人間のあり方に話が及ぶ紀行文。

ヨレヨレの頭に残ったのは二点。

◆一つ。

人間も自然の一部なのに、いつの間にか思い上がり、どんどん自然を壊し他の種を絶滅に追いやってきた。生まれて、ひと時生きて死んでいく、という自然の流れの中に自らの命があり、育まれていることを忘れそうになる。次のような一文を、心にとどめておきたい。

「自然をコントロールするのでは、もちろん、なく、自然と付き合う、のですらなく、生かされている、そして積極的に生きようとする、その受身の意識と能動の意志のバランスこそが『自然』と、今は見当をつけている。」(P147)

◆二つ。

意思を持ち続けるとは、どういうことかを思った。

梨木さんは、エストニアの歴史を書く。
長年、周囲の国に支配されてきたエストニアの歴史を経て、1988年9月11日の集会で、全国民の三分の一の30万人が「歌の原」と呼ばれる広場に集まる。そして支配国から、当初は禁止されていた「我が祖国は我が愛」というエストニアの歌を演説の合間に歌う。その後、機運が高まって、1991年の独立回復につながったという。

このことを、巻末で次のように書いている。

「深く営々と営まれてきた被支配の日常のなかで途切れることなく培われてきた、熱情といってもいい祖国への思いそのものだ。一時の『激情』ではなく、着実な、途切れることのない、ひたすらな思い。自らの裡で、静かに燃やし続ける『熱』。それ以外に、この煉獄の世の、どこに、光などありえようか。」(P190)

エストニアの人々の歴史と熱。ひるがえって自分という個人を思う時にも、持続する意思を持つことの困難と大切さを自覚しながら、静かに燃やし続ける『熱』を持つことの大切さを思う。
淡々と過ぎていく日常。人を支えてくれるのは「静かだけど持続する熱」かもしれない。


(「エストニア紀行」梨木香歩著 新潮社2012.9)

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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