2013 / 09
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  前作「死神の精度」は6つの人生を描いた短編集。今回は長編で楽しめる。
主人公の千葉は死神の調査員。担当する人間を一週間調査して、その人物が、死ぬべき時期にあるかを報告する


「可」なら八日目に死ぬ。今回の相手は35歳の作家山野辺遼
妻は34歳の美樹

一度は逮捕された山野辺夫妻の一人娘・菜摘を殺した27歳の真犯人・本城崇(彼にも別の死神・香川がついている。)は、裁判で無罪になった。
去年の夏、小学校に通う菜摘が殺された。
裁判では無罪の本城だが、菜摘を殺す場面を写した動画をわざわざ夫妻に、送り付けてくる真犯人だった。
(夫妻が見たあと、動画は削除され証拠は残らなかった)
彼は良心を持たない、他人を苦しめて全く気にならない「サイコパス」と呼ばれる人間だった。

憤りと哀しみを持ちながら、夫妻は裁判には期待せず、娘の仇を討とうと計画するが、冷酷で知恵を持った本城から、逆に、菜摘殺しの冤罪をきせられそうになる。
千葉は、調査委員として、七日間、二人と行動を共にする。
さて顛末は…。


 菜摘の殺人。夫妻に繰り出される本城の手口。
でも「凄惨一辺倒の物語」にはならず、グイグイ引きつけて飽きさせない。

例えば、千年間も死神の調査委員で「参勤交代」をリアルに見ている千葉が、周りの人間と交わす会話が珍妙でずれていて大笑いした。そんな箇所がいっぱいある。
その一方で、夫婦が娘をなくした喪失感や心の痛みも伝わってくる。
思想家・カントや渡辺一夫の言葉も出てきて、面白い。
他者に「無力感や罪悪感を植え付け、人生を台無しにさせること」(P379)を目的に行動する本城が、これでもかと、次々に繰り出す手口に、ハラハラした。
娘の仇討ちを志すものの、人がよくて回転や決断に欠ける山野辺夫妻を、死神・千葉は成り行き上助ける。
奇妙な彼の言動が、二人を暗い気持ちから救ったりする。

「つらいことや怖いことの連続が、生きていることだからね。死ぬってことは、その最たるものでしょ」(P406)という言葉のあとで、母が遼に言う場面がある。父が命の最後に遼に教えたかったのは、死は決して怖いことじゃないことだ、と。

作品を読みながら「死」のことを考えた。
「良く生きるってどういうことだ?」って考えた。

編集者の箕輪が、作家の遼に言ったセリフを、回想する場面。 
「殺伐とした世の中に、殺伐とした話では、芸がないですよ」(P366)

笑った。心がしんとした。考えた。
まさに「芸のある一冊」だったよ。
サンキュ 伊坂さん!


( 「死神の浮力」 伊坂幸太郎 著 2013.7 文芸春秋)





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まってたよ!
加納さんの「ささら」シリーズ3弾。
命のかけがえのなさを描く、推理ファンタジー。
愛のものがたりでもある。
 「はるひのの、はる」
「はるひのの、なつ」
「はるひのの、あき」
「はるひのの、ふゆ」
「ふたたびはるひのの、はる前」
「ふたたびはるひのの、はる後」
の連作。

最後まで読むと、どの連作も密接に繋がっているとわかるけど、一作目だけ読むと、何がなんだかわからない。
後半で一気に、前の作品の意味がわかってくるので、二度読みをして確かめたくなる、一冊で二度おいしい。


◆ 幽霊が見えるユウスケが、赤みがかった長い髪の外国の人形みたいな「はるひ」という女の子から、最初は小学校に上がる前の春。次に小学三年生の夏休みと言う具合に、四季の時間を挟んで、様々な協力のお願いをされる。赤いワンピースの少女が殺されるのを救うためのお願いだったり、挫折した元漫画家を再生させるためのお願いだったり、ユウスケは他の幽霊の女性から、愛している男性を、取り殺したいと相談されたりもする。

四季の時を挟みながら物語は展開する。

外観は同級生、会話ははるか年上の印象の謎の女の子「はるひ」の正体とは?
はるひの願いの、本当の意味とは?


◆ 推理とファンタジーの謎解きや時間の移動を楽しみながら、物語から感じること。
それは、命を愛おしむ思い。今を生きていることの大切さ。
命の微細な気配を感じながら大事に生きたいと、とても思った。


サンキュ!加納さん。

( 「はるひのの、はる」 加納朋子著 2013.6 幻冬舎)



「小鳥の小父さん」と、周りの人から呼ばれていた、ある男の一生。
両親に先立たれ、信頼する兄もなくなる。
その後、近所の幼稚園の小鳥たちを20年近く世話する。
そして、鳥の本ばかり借りていたのが縁で、知りあった若い司書への憧れ…。
それは、人見知りな性格を変えるかに見えたが…。
司書に去られ、児童の誘拐犯との誤解を受けて、幼稚園に出入り禁止になる。
鈴虫の音色を聞く老人にあったり、庭にいた傷ついたメジロの幼鳥と出会って会話する。
彼が、人生の中で見たものとは…。


無常観が漂う哀しい話なのに、主人公の何とも言えない人柄に、親しみとある種の共感を覚える。
肉親などとの別れや悲しみに、死の影がついてまわる暗い話のはずなのに、読後感は優しく明るい。
それは作者が、リアルで澄んだ目で人を見つめるているから。

人生には、痛みや悲しみに落胆して落ち込んだり、ときめきや希望に満ちて、溌剌と過ごしたりする時間がある、
連綿と続く命の連鎖を思った。
誰も注目しない人生の舞台にも、誰もが遭遇する「微細な心の動きや、予期しない出来事」がある。
それを、ひとりの男の一生を通して、すくい取ってみせてくれた。


静かな。でも小説の企みが楽しい一冊。

(「ことり」小川洋子著 朝日新聞出飯 2012.11)

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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