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ヒロインの梨花という人間の中に、相反する二人の自分が住んでいる。
罪を否定し憎む自分と、物欲を万能の神のように感じ、身を委ねて自分の存在感を感じる自分。
わかば銀行支店に務める41歳の契約社員の梅澤梨花が約一億円を横領して、海外へ逃亡する。
彼女は、なぜ事件を起こしたのか?逃亡の行方は?

梨花の日々や内面を描きながら、かつての中学・高校のクラスメートの岡崎木綿子。梨花と男女の付き合いをしたことがある山田和貴。料理教室で知り合い、料理本の出版社で若い主婦をターゲットに刊行した雑誌の編集をしている中條亜紀。夫・正文との生活。営業で家を訪れる梨花に、ネックレスをくれて食事に行こうと頻繁に誘う70歳代半ばの顧客・平林孝三。その孫で、梨花が恋に落ちる相手・平林光太などの、梨花の周辺の人物たちとの関わりや、当人たちの生活を描いて金や物欲と人間の関わり、心の揺れを重層的でリアルに描きだしている。
梨花が一線を超えて、エスカレートしていく姿にドキドキする。

梨花の行動と共に様々な人物が描かれる。
中でも、中條亜紀が出てくる最後の場面は心に残る。
「銀行のお金を着服した梨花を亜紀は思う。事件のことを知ってから、まるで彼女が自分の内に棲み着いたかのように、亜紀は梨花のことをよく思い出す』 (P312)終章で、亜紀が離婚して別居中の夫と暮らす娘・沙織と時々会う。亜紀が、沙織との関係の変化に涙する場面は、この物語のテーマの一つと思われる金や物欲に翻弄され、形あるものだけに心を拘束される人の弱さや哀しみを描いていて印象深い。


自分の存在感を、物欲や紙幣だけに支配されてしまうのは哀しい。
それはパックリと口を開けて今の時代に大手を振っている、ひとつの価値観。
自分の中にも矛盾や弱さが棲んでいる。誰の身にも自然のきらめきを放つ本物の月ではなく、空虚な「紙の月」を見上げる可能性が潜んでいる。
そんな時代だから、チビチビと盃片手に、本物の月を見ながらゆったりするのがいいなぁ。

読み応えがあって、いろんなことを思わせてくれる角田さんの傑作


( 「紙の月」角田光代著   角川春樹事務所2012.3)

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この本を読んだのは、TV番組でマララという少女のことが紹介されていたから。
その少女が、国連演説で武力ではなく教育の大切さを堂々と説く姿に圧倒された。

今の日本では考えられないが、女性は学校に行ってはいけない。音楽も踊りも禁止と唱える大人達がいる国がある。マララたちが住んでいる、パキスタンのスワートはタリバンの拠点。そこで何が行われてきたか、そこに住むマララたちの日々と思いが綴られている。
わずか15歳の少女が、2012年10月9日通学途中タリバンの少年に銃撃された。タリバンの命令「女子は学校へ行ってはならない」という命令に、彼女は外国メディアなどで異論の声をあげ続けた。そのただ勉強がしたいと願う少女の思いを、命と共に抹殺しようとしたのだ。
彼女や女子校を経営する父親には、脅迫が以前から行われてきた。

彼女の抹殺は失敗した。イギリスの病院で治療したマララは手術により機能を回復し、逆に全世界の人々からの励ましの声が彼女に寄せられる。彼女は国連演説で述べる。
「わたしたちは平和と教育を目指す旅を続けてゆきます。(中略)本とペンを手に取り、全世界の無学、貧困、テロに立ち向かいましょう。」と述べ、タリバンやテロリストの子供達も含む、あらゆる子供が教育を受けられることが望みだと語る視野の大きさに驚かされる。

この本は、イタリアのジャーナリストである著者が、マララが匿名でイギリスBBC放送で自国の現状を知ってもらうために書いた日記。ニューヨークタイムズのドキュメンタリー、襲撃の事件前後に、マララや父親が応じたインタビューを元にまとめたものだという。難解な漢字を避けた、マララと同世代の人も読みやすいように書かれている。

音楽禁止、踊り禁止、女性の服装の指定や教育の禁止。命令に背いた人を公開処刑して広場に並べるタリバン(イスラム原理主義グループの民兵)の非情な手法。

一番強く思ったこと。それはマララや父親の勇気とそれを支える外国メディアのこと。マララという15歳の少女の自己教育の到達点のすごさが心に残る。

強権で脅し、武力で人を押さえつける考えで人は幸せになれないことを彼女は世界に向かって語りかけている。人が尊厳を持つこと。勇気を持って語りかけること。教育の力と人間を信じること。
いくつもの、人間の声が本の中から語りかけてくる。
オススメの一冊。


(「武器より一冊の本をください~少女マララ・ユスフザイの祈り~」ヴィヴィアナ・マッツァ著 横山千里訳 金の星社2013.11)

昨年暮れに初めて読んで、はまった椰月さんの作品。
「ゲイリーの夏」「まりあの王子さま」「本社西部倉庫隣発行部課サクラダミュー」「マッハの一歩」「希望のヒカリ」「ドンマイ麻衣子」「愛の愛」「キャメルのメランコリ」「亮太と神さま」の9篇を収録。

17歳のキャメル、マッハ、ゲイリー(高校生活でついたニックネーム)の男子高校生の三人。キャメルが、いち早く童貞を卒業することになった他校の恋人ヨネちゃん(米川まりあ)。彼女を介して更にふた組のカップルができる。ゲイリーとやがて結婚することになる麻衣子。マッハの恋人になる愛。彼や彼女たち六人とその周辺の人たちの日々を、高校時代から47歳までの時間の展開で描きだした、文庫オリジナルの連作集。一瞬の、どうということのない出来事なのにしみじみと嬉しかったり。失意の登場人物に新しい生き方を予感させたり。アホなことも含めて、人ってカワイイやっちゃと思ったり。心に潤いをくれる一冊。


◆ 高校時代からの友人のゲイリーと麻衣子の披露宴で、6年付き合った人妻に手痛く振られたマッハと、キャメルの二人が氣志團の『マブダチ』を珍妙な衣装で歌い踊る、アホ満載の大爆笑篇「マッハの一歩」 。

◆ キャメルの妹・ヒカリが語学留学先のニュージーランドでロバートと「桃色の蒸気」が吹き上げるような激しい恋に落ちたが(椰月さんの、この「恋」の表現いいなぁ。)彼の裏切りによって破局をむかえて帰国。一年留年したハンデもあり、36社の就活に落ち続ける深い失意のヒカリが、まだ見たことのない新しい人生の時間に歩き出すことを予感させるラストの描き方があたたかい「希望のヒカリ」 

この二作が、特に好き。シンドイ人生の場面もあるけど「どんまいっ!」で行こうぜっ!ていう思いが伝わってくる。


( 「どんまいっ!」椰月美智子著 2013.4 幻冬舎文庫)

久々に読んだ森絵都さん。文章が弾んでいた。
豊かで、面白くて、これぞ小説って感じ。

言葉のイメージに、騙されない目を持たなきゃねって思いましたね。
「老人とアイロン」という一編の主人公は、自分で言葉を獲得しようとする中学二年生の君。
君は、学校の進路希望調査に「クリーニング屋」ではなくて「アイロン師」になりたいと答えて、世間の常識に反すると、父親に説教される。
自分の感性で、自分の進むべき道を探り当てようとする、君の本当の姿が父親には見えない。
物語には、彼が「アイロン師」と書いた理由が描かれる。そして世間で生き方が「洗練されていく」と表現されるものの内実が「去勢されていく」と同じ意味も持つことも見抜く。自分のあるべき場所を求めて、嘘に束ねられず、誇り高く生きようとする君の姿がカッコイイ。プリンがきっかけの次の三篇は笑いを誘うけど、生きる宝物のような話も出てくる「少年とプリン」 「老人とアイロン」 「ア・ラ・モード」

そして東北の震災以降大きく人生の歩み方や選択肢が変わっていく、東京に住む藤子と、被災地のボランティアに行った恋人高峰が、人生と向き合っていく今を描いた「あの日以降」

そして「漁師の愛人」という物語に出てくるヒロイン紗江と同居人・長尾の物語。
読み進んで、本当のことを知るほどに、言葉のイメージだけで物事を見ちゃダメだと思った。

この物語は、結婚は破綻しているが、先妻・円香は長尾との離婚を認めない。だから今同居する紗江は、長尾の「愛人」と周囲から見られている。音楽プロデューサーだった長尾が失職し、故郷で漁師になるという彼と漁村に転居してくるが「愛人」という立場に、敵意ある周囲の態度や言葉が浴びせられる…。だが、円香は長尾不在の時、紗江に電話で胸のうちを打ち明けるような関係にある…。

「愛人」という紗江の表面的な立場と同居人・長尾との深い愛情で結ばれている真の姿は読みごたえがある。

以上、全五篇の作品集。



◆◆この本を読んで、言葉の大事さを思った。
例えば「集団的自衛権」って言葉。
今までの全世界の歴史の中で、大国が戦を仕掛ける口実に使われただけの言葉。
自衛と言いながら実態は全く違うって最近まで知らなかった。

他に「積極的平和主義」の意味。
政府の行動が、本音を語っている。

武器の輸出はしないという、これまでの日本の平和原則を曲げて「緊急の提供」だったと弾丸を韓国に提供したら、緊急じゃなかったけど、くれるというので予備で持つことにすると韓国が本当のこと言っちゃった。

国民の大半が慎重審議や反対なのに、議論も中断して強行採決した、秘密だらけの「秘密保護法案」
同じく反対の多い原発の推進

国が暴走しないように、国民が国に守らせることを定めた今の憲法を変えて、上から目線で、国が決めたことを国民に守れと書いている「自民党改憲草案」

安倍さんの お友達人事で、失言で陳謝するような人を、公共放送の会長に送り込んだり…。

「積極的平和主義」って言葉の、本当の意味を自分の頭で考えなきゃね。
誰もが当たり前の日々を続けるために「見抜いたり読み込んだりする」力が試されているのが今。小説の物語とは直接関係ない、脱線の一席でした。


この物語には、真っ当な怒りを持った主人公たちが、理不尽なことに抱く思いが出てくる、それがこの作品をイキイキと躍動させ、ピリッとした深い物語にしている。今年最初に読んだ傑作。

「漁師の愛人」森絵都著 2013.12 文藝春秋)

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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