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菖蒲2

◆ ゼネコンではなく、一戸建ての家を建てる小さな「鍵山工務店」で働く二人の女性を描く。
その二人とは、成り行き上、父が起こした工務店の社長になる47歳の郷子。
求人情報誌の副編集長を辞め恋人とも別れて、この工務店で働き始める30歳の梨央。
面白いのは二人とも男との縁が、この道で働くことにつながる。
(梨央は、トビの親方・徹男に助けられた出会いから、彼にあこがれてこの仕事に近づく。)
二人とも、外から眺めていた頃と大違い。
建設業界の中で、働いてみると、施主からのクレームや職人の手配に四苦八苦する梨央。
会社の責任者になったものの、働けど一向に経営は楽にならず、他会社との合併を専門家から勧められる程で、会社経営にジタバタする郷子。
さてさて、どうなる…。

◆ 本の題名は、落語「寿限無」の中に出てくる一節。
そして、家を象徴する言葉。
彼女の描くヒロインは、しんどいことがあっても、シャンと背筋を伸ばして生きている。
既成の生き方に飽き足らない。かっこつけるのも似合わない。
どこか抜けているているけど、憎めない。

この作品のヒロインたちも。
熱情的な梨央と、醒めた経営者の視点を持つ郷子で交わされる二人の会話も楽しい。
読んでいて、気持ちがいい。

◆二人が交わす「家」談義も楽しい。
梨央は、雨風をしのぐだけでなく、家族の思い出が宿り、「心の入れ物」が家で、
そんな家を作る「やり甲斐」や「喜び」が、生きるエンジンになると言う。
梨央を見ていると、人生を悲観一色に塗りつぶすのは、つまらないと思う。
こんなセリフもある。
「現実はシビアに決まってますよ。でも、そのシビアさに踏みにじられてばっかじゃ生きてけないでしょう。九八パーセントはシビアでも、二パーセントは夢が叶ったとか、やり甲斐を感じる瞬間があるはずですよ。そうじゃなかったら、誰もこんなくそったれな人生を生きてませんて。」(226~227)

◆ 家を作る作業の中で使われる「養生する」という言葉や、トビの親方・徹男や設計者のセーノさんたちに共通する、職人気質の中に「家を生き物扱いする」精神を見る。

◆ カラカラになりそうな気分の時、彼女の作品を読むと元気がでる。
「必死で過ごした大混乱の日々が腐葉土になって、そこから何かが芽生えかけている」(254)
「大混乱の日々」も良い土をつくっていて、「芽」を育んでいる時だと考えようっ~と。
気分、ゆったりで、いこう!


読んでよかった「寿限無」な一冊。(笑)

(平 安寿子著 「くうねるところにすむところ」文庫2008.5文藝春秋)


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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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