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 岡山で暮らしていた12歳の朋子が、父を亡くし母と別れて、神戸の芦屋の伯父たちの一家と一緒に暮らす、一年あまりの日々のこと。
芦屋の家は17部屋もある洋館で、ドイツから日本に嫁いだ83歳のローザおばあさん、印刷物の誤植を探す伯母さん、ダンディな伯父(エーリッヒ健)さん、通いのお手伝いの小林さん、おばあさんと仲良しで56年住み込んで家をしきる米田さん、コビトカバのポチ子、朋子の一つ年下でマッチを集める従妹のミーナ(美奈子)が暮らしていた…。

◆ 多色刷りの挿し絵が美しい。新しい家は、昔、敷地内に動物園があったほど広い。初めて駅に迎えに来た伯父さんの車はベンツ。金持ち暮らしの夢がかなう物語という感想があるもしれない。
芦屋での暮らしから、30年を経た朋子が回想する過去を懐かしむ物語でもある。
暖かくほのぼのとした物語の空気の中に、老いのこと、病のこと、戦争がもたらす愚かしさと悲惨、伯父夫婦の影、いろいろなテーマがあって、物語の多彩な楽しみ方がある。
確かに、懐かしむ物語ではある。でもそれだけじゃない。
ポチ子のしぐさと、それに乗って通学するミーナにユーモアがある。でもそれだけでもない…。
喜びも哀しみも含んだ、ふくよかな作品。

◆ 一番印象的なのは、ミーナという少女のこと。
マッチ箱のラベルにまつわる豊かな物語を紡いで、箱に書き付ける想像のチカラの豊かさだ。病弱な自分の限界を越えようとする心の「遠出」はステキだ。

そして、見逃しがちな誰かの生の場面を、ミーナは見ている。
ミーナと朋子のバレーボール談義は楽しい。 
中で、ミュンヘン五輪の日本の男子バレーボールチームの猫田選手がミーナのお気に入りだ。
試合の華・スパイクで得点を決めるごとに注目し歓声をおくる観客。その影でトスをする場面は見落とされがちだ。たんたんとトスを上げる猫田選手。
ミーナは彼へのファンレターに書いた。
「その静けさの中には、次の瞬間に起こる爆発の準備が、もう整っています。」(P227)と。
そのミーナから猫田への手紙を、朋子は「一筋の光のようなパスだった」と表現した。

◆ そしてもう一つの感想。
誰にでも存在している「時間と日常」を個人がどんな風に受け止めて歩くのかということ。
病弱だったミーナが歳月を経て変化していく姿。
それが「ミーナの行進」でもある。
それは、世界を読みとって自分の世界を広げていく歩みなんだなぁと思いながら読んだ。

(小川洋子著「ミーナの行進」中央公論新社2006,4)


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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
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