2017 / 08
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遅ればせながら、出あえてよかった!
井上ひさしの、渾身の戯作者魂が、胸にズンときた。

◆(おはなし)

与七(後の十返舎一九)。
清右衛門(後の曲亭馬琴)。
太助(後の式亭三馬)。

まだ無名の戯作を志す三人に、材木問屋伊勢屋の若主人・栄次郎から、
洒落で影武者になってほしいと依頼がある。
絵草紙の作者になりたい。人を笑わせたい、少し奉られたいが、自分には才能がない。
そこで自分の作品を、三人に影武者で書いて欲しいという依頼だ。
酔いに任せて、三人は「百々謎(ももなぞ)化物名鑑」をでっち上げた。
その戯作を、栄次郎は、辰巳山人というペンネームで売り出そうと、様々な奇行で世間の耳目を引こうとするが、さっぱりだった。
本人に伏せて、三人が仕組んだ、金に物を言わせたサクラを使って、本を売る作戦もばれてしまう。

栄次郎は、本気で戯作者になるため、先人の作者たちの行動をまねて「奇行」で笑わせようとする。
「親に勘当される、婿養子に入る、女に狂う、養子先を追い出される」
自らのそれらの行動を記事として、かわら版に売り込んだりも…。
すべては、彼本人のはかりごと。

更に「吝嗇吝嗇山(けちけちやま)後日哀譯」を書く。
幕府を、茶化し風刺した作品として、手鎖(手錠をかけられる刑罰)や所払いなどの、お咎め(刑罰)を覚悟していると、三人に打ち明けるが、またもや世間から注目されない。
そこで、栄次郎は、以前に町奉行勤め経験のある、与七に金を渡して、
「ご政道を茶化し、あげつらう、けしからぬ絵草紙」と、密告してくれるように頼みこむ。
結果は、幕府は洒落で、版元咎めなしで栄次郎には、三日間の手鎖を科す。
やがて、世間は、彼のことを「豪儀な馬鹿」な男と評判がたち、本が売れ始める。
更に彼は、趣向で世間の注目を浴び、江戸中あっと言わせようと、洒落で、優雅な心中をくわだてるが…。

◆(思ったことなど)

「笑わせる」作家を志した作者の覚悟が、登場人物たちの姿に、オーバーラップした。
井上ひさしの、気合がグイグイと胸に迫ってくる。
最後のどんでんがえしの、仕掛けの面白さ、見事さにもうなった。


そして、栄次郎の歩みを見てきた三人が、腰を据えて、作家として歩き出す、その思いや姿に、人が「本気」の熱意をもって何かにむかうことや、生きることの意味を思った。

もう一作、収録されている「江戸の夕立ち」も、たいこの桃八と、大店の薬種問屋鰯屋の若旦那が繰り広げる波乱万丈の道楽伝。ワクワクと笑わせてくれる。巻末の勘三郎の解説に前進座が「たいこどんどん」という外題で、上演しているとか。とっても観てみたい。

読んでよかった。
熱があって、笑えて、哀感も残る。
読み物の面白さが、いっぱいだ。

(井上ひさし 著「手鎖心中」 2009.5 新装版文春文庫)


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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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