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「光待つ場所へ」というイメージが鮮烈だ。
三つの物語は、このイメージを集約した言葉のようだ。

◆(おはなし)
しあわせのこみち」大学二年生の清水あやめは、応募の多い一般教養「造形表現」の「自由に世界を表現する」という受講課題に「幸せの小道」という絵画を自信満々で提出する。しかし、優秀作品として初回に紹介された作品は彼女のものではなく田辺という学生のフィルムが上映され、その美しさに打ちのめされる…。

チハラトーコの物語」モデル業界に籍を置きながら、子供のころから他人に迷惑をかけない嘘をつき続けて「嘘の世界の住人」を自負している、29歳の千原冬子の話。

樹氷の街」江布北中学・三年生二組の合唱コンクールを巡る物語。
伴奏の倉田梢、指揮の天木、天木の友人・秀人、秀人の彼女で隣のクラスの椿、威圧感のあるクラス委員長の筒井美貴、目立たないが天才ピアニストの松永。倉田の伴奏力量に不安を抱えた状態でクラスの練習が始まる…。

◆(おもったこと)
しあわせのこみち」では、劣等感、優越感、優しさやひがみ、求める絵をより深く表現し尽くそうして、もがく画家の卵が、孵化に向けて新たに歩き出す姿が印象的。
「努力もしないで、何もしないでただ地位だけ欲しがったり、いつか自分が何者かになれると確信したり、その逆で始めてもいないのに諦めてる人たちが世の中にはたくさんいる」(P97)というフレーズが心に残った。


チハラトーコの物語」には「現実を生きるって、何だろう」という問いかけがある。
生きることに対する、ストレートなフレーズがあり、その姿が描かれるのが、この作品の面白さだと思う。
虚構と現実が交錯する。周りの人たちにうまく嘘を言い続けながら虚構の世界で生きているチハラトーコ。
現実の世界で、自分の書いた物語を認めてくれた教師・重森を好きになる千原冬子。
この交錯の世界を抜けて、千原冬子として自分を歩き出そうとするラストが印象的。

樹氷の街」人間の多面性が面白く描かれている。特に伴奏の倉田梢の描写。
泣き虫なのに負けず嫌いで、恋への強い積極性がある。
それぞれの中学生たちが、コンクールに向けた付き合いの中で、お互いに見えてくる清冽な光のようなものたち。

ストーリー展開に引き付けられて一気に読んだ。
また、楽しみな作家にあえて嬉しい。

(辻村深月著 「光待つ場所へ」2010.6 講談社)
※作者名の「辻」は入力できない文字だったため、簡易な文字で表記していることを、お断りします。

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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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