2017 / 05
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◆(ものがたり)

19歳のヒロイン佐古は、未熟児として生まれて、身体的な劣等感を持っている。
小学生の時に家を出たままで、娘が19歳になる今まで帰ってこなかった父親。ある日家に帰ると、見知らぬ男性を連れ込んでいる母親。そんな自分勝手に見える両親。それらを理由に、喜怒哀楽の感情や、思ったことも口に出さず、周囲のことなんてどうでもいいやと思いながら生きてきた。
ヘルパーとして、79歳の要介護1の横江先生の家に派遣される。
介護の仕事をしながら、横江宅の息子(「犯人」後に「あの人」と呼称)から「額装」の仕事を手伝って欲しいと依頼され、手ほどきをうけることになる…。

◆(おもったことなど)

「サマータイム」の詩が、何度も出てくる。
この詩の作者がジョージ・ガーシュウィン

♪ 夏が来て、暮らしは楽、
魚が跳ね、綿花は高く背を伸ばす、
あんたのお父さんはお金持ち、お母さんは美人、
だからさ、よしよし、泣くんじゃないよ ♪


印象的な詩。この歌はオペラ「ポーギーとベス」の劇中歌で、過酷な環境の下に生まれた赤ん坊に反語的に歌いかける子守唄だったとのこと。佐古が「犯人」(後に「あの人」)と密かにニックネームをつけた横江先生の息子が額装する歌手エラ・フィッツジェラルドのアルバム「エラ・イン・ベルリン」には、この歌が収録されている。
小説を読みながら、アルバムのジャケットを、ネットで検索して歌声にも聴き入ってしまった。
やわらかで、子供を慈しむように、命に歌いかけるやさしい声だった。

さてさて、「犯人」(後に「あの人」と呼ぶ)のつくった、この額装をみて、心動かされた佐古は、写真や絵画を飾る額装に、のめり込んでいく。
そして、これまでの生い立ちや家族状況を、言い訳にして閉じこもっていた自分の世界を越えて、「しなくていい」から「いざというとき立たたなきゃ出発できない」という能動的な生きる構えや、新しい言葉や意志に目覚めていく。そして、今ここにある自分自身の風景と向きあっていく。

泣くんじゃないよ、世界は広くてもっと彩りに満ちているんだと。そんな作者の思いが伝わってくる。

夏の終わり。
窓から部屋を吹き抜けていく風みたいな気分のいい一冊。


(「窓の向こうのガーシュウィン」宮下奈都 著 2012.5 集英社)



【】
とてもビジュアルな傑作に仕上がっていた感じがします。
思わぬ形で引き出される、新しい彼女の生き方が新鮮でした。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
【Re: タイトルなし】
返事、遅れてすみません。

君が、あまだ見てない素敵な世界がある。
だから泣かないで!まだ知らない世界に、会いに行こう。
そんな作者の思いを感じた話でした。

藍色さん、いつも遊んでいただいてありがとうございます。感謝です。
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あの人の額装からは、音楽が聞こえてきた―。 十九年間、黙ってきた。十九年間、どうでもよかった。「私にはちょうどいい出生だった」未熟児で生まれ、両親はばらばら。「あなたの目と耳を貸してほしいんだ」混線していた私の世界がゆっくり静かにほどけだす。はじまりは、訪問介護先での横江先生との出会い。そして、あの人から頼まれた額装の手伝い…。「ひとつひとつ揺り起こして、こじあけて、今まで見たこともなかっ... ...

本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
 よろしく!

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