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◆ 安心して楽しめる。
リストラ請負会社「ヒューマンリアクト(株)」に勤める村上真介の仕事と恋を描いた、前作「君たちに明日はない」に続く連作シリーズとの繋がりを思い起こして読むと面白い。
こんな仕事をする真介という男。
冷血漢で、金と出世に凝り固まった奴かと思えば、全くちがう。
なんせ、彼自身、この会社の被面接者として前の会社のリストラ対象者だったし、今の恋人の陽子は、真介が今の仕事で面接した、リストラの対象者だった。
そんな訳で、真介は、面接相手の心の痛みにも気を配り、丁寧に処遇しようとする。
又、彼より8歳上の陽子(43歳)は「人のクビを切る仕事を、ビジネスにする」と、真介の仕事に批判的だ。恋人同士でも、思ったことを言い合う二人の会話は漫才のように笑える。
真介の会社の社長・高橋は、尊大さの無い、人間をよく観察する魅力的な人物として登場し、真介の面接補助者・川田美代子も一見「白痴美人」のようだが、その存在には魅力がある。

◆ 全5作品の内、「借金取りの王子」と「人にやさしく」が特に印象的だった。

真介は依頼されて、様々な業種の面接をする。
「二億円の女」(百貨店外商部)「女難の相」(大手生命保険会社総合職)
「山里の娘」(温泉旅館)など、仕事の内情や場面が描かれていて面白い。

 「借金取りの王子」の舞台は「消費者金融」だ。TVでは、ソフトなCMを放映しているが、仕事内容も新人研修も軍隊式だ。
ノルマを達成出来ない店長を、呼び出して人間性を貶めるような、激烈な脅しを含む「店長研修」の様子も描かれている。

「借金取りの王子」は、大学を出て、消費者金融「フレンド(株)」に採用された三浦宏明と、最初に赴任した小岩1号店の店長・池口美佐子との仕事と恋の物語だ。
 慶応卒でイケメンの三浦に、池口は「王子」の呼び名をつける。
当時彼女は四つ年上の26歳、中学時代から筋金入りのヤンキーで、単車の免許を取るとレディースを結成し、地元暴走族との乱闘で保護観察処分、夜間高校を中退する。故郷を出て、仕事さえ出来れば、学歴も男女差もないと考えて、今の仕事に就いたという経歴の持ち主だ。
 「王子」こと三浦は風貌などから、顧客に安心感をあたえ、貸付実績はトップだが、回収は苦手だった。優しすぎると池口から注意される。
池口は、一時間おきに上部から店長にかかってくる罵倒の電話にもめげず、部下への、口の悪さはあるが、プレッシャーは一身に受け、部下に一度も八つ当たりしない公平な上司だ。

三浦は、二年半後、昇進を断り続けた店長になるが、本部が求める実績は上がらず「店長研修」に呼び出される。
この場では「相互の意識改革」と称し店長同士が罵倒しあう。
ある時、珍しく池口が呼び出され、罵声を浴びせられる。
しかし、彼は罵声をかけることが出来ず、沈黙する。
なぜ声をかけない?と本部長から追求されるが「ぼくには、言えません」と言い切る。

部下の信頼が厚く、実績もある三浦への面接に、気分の重い真介の姿に、その会社の非情が透けて見える…。

三浦と池口は、その後結婚することになる。
そこに至る二人の姿と「本気」の愛情が心を揺さぶる。
これは彼女の口調を真似て言えば「安くない心の繋がりの物語」だ。
何が人生に大事なのかを描いていて絶品だ。


◆ 「人にやさしく」はブルーハーツの歌の題名。
この物語の最後に車の中で流れる歌だ。
リストラの仕事をしながら、真介が何を考えているかが、とても出ている。
「企業の一方的な都合だけでリストラされた社員も多くいる」と感じている
真介の行動とは? 興味深く読んだ。

◆ 真介のような仕事の主人公を描くのは難しい。
この物語は、リストラを美化する作品ではない。
恋の軽さではなく、思いの深さを描いている。
これからも、続編を描いて欲しいシリーズだ。

(「借金取りの王子」垣根涼介著2007,9)




【】
こんにちは〜 たしかに、この主人公は上手いですね 主題が難しだけに主人公の善悪では語らせない設定が面白い
借金取りの王子には泣きました
【こんばんは!】
この本のなかでは、ボクも「借金取りの王子」に胸が熱くなりました。池口美佐子の本気が感じられてグッとくるものがありました。
【こんにちは。】
続編が出ているのは知っていましたが、予約する作品が多すぎて、まだまだ先になりそうです。
この記事を読んで、ますます期待は大きくなってしまいました(笑。
【】
こんばんは。
やはり『借金取りの王子』が一番かな。
ぐっときます。
垣根さんは実在の人物から、物語を考えて
いるそうですよ〜。
続編は是非読みたいですね♪
【ようこそ!】
◆らぶほんさん
⇒読みたい本は続々、でも身体は一つ(笑)読みたい本だらけですね。
ボクの勝手な感想、読んでいただきサンキュです。
中で「借金取りの王子」が特に読み応えありです。お楽しみください。

◆naruさん
⇒「借金取りの王子」読み応えありましたね。
そちらの感想で、この小説の中の、男たちがかっこいいと書かれていました。
ボクは、ここに出てくる女性・池口美佐子のキップのよさと、彼への思いの深さがかっこいいなぁと感じました。
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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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