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大好きな小川洋子さんの「博士の愛した数式」が生まれた背景や、作品を描く姿勢など興味深い話が出てきた。僕が一番面白かったのは
第一部「物語の役割」。
(二部「物語が生まれる現場」三部「物語とわたし」の三部構成)


作家が、作品を創ることだけが物語じゃない。
人が生きていくために、物語はうまれる。
そのことを、この本は伝えてくれる。

アウシュビッツで、密かに武器を集めていた囚人仲間たちが見つかって捕まり、公開処刑されるところを見学させられたユダヤ人作家、エリ・ヴィーゼルの体験を例に
「とうてい現実をそのまま受け入れることはできない。そのとき現実を、どうにかして受け入れられる形に転換していく。その働きが、わたしは物語であると思うのです。」 (P25)

生きていて、大きな絶望に直面して、これは現実の出来事なのかと思うような時にこそ「生きていくための物語」を育て上げることが大事。そのためには精神力や人間的直感、知恵が求められるのだろうと思った。
絶望のなかで希望の物語を紡ぐという矛盾の時、人は物語の大切な役割に直面する。


印象的だったことは、日航ジャンボ機の墜落事故で、生まれて初めての一人旅だった坊やを亡くした母の姿。
9歳の坊やが野球観戦で、大阪のおじさんの家に行くのを見送って、坊やは事故に遭う。

お母さんは、自分を責め、自分が子供を殺したという罪悪感に苦しむ。そんな哀しい出来事にあう。
事故から20年後、テレビニュースに映し出されたのは、そのお母さんが、遺族の集まりのリーダー的存在として空の安全のために活動する姿。その姿から物語の貴さを教えられたと、お母さんの姿を、小川さんは次のように書いている。

「現実を棘で覆い、より苦しみに満ちた物語に変え、その棘で流した血の中から、新たな生き方を見出す。」 (P36)

物語を紡ぐのは作家だけじゃない。「生きる活力を生み出す」物語を描けるような人生の歩き方をしたい。
だいそれた読者はいないけど、自分という読者に、面白い人生の物語を紡ぎながら歩きたいと思った。


(「物語の役割」小川洋子著 ちくまプリマー新書 2007.2)


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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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