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◆「放浪記」などの作品を残した作家・林芙美子の戦中戦後を描いた評伝劇。
「戦争は儲かる」という世情にのせられて、人気作家という立場から「軍国主義の宣伝ガール」として"太鼓たたいて笛を吹く"ように、文章や講演会で戦意を煽りまくった。しかし昭和20年3月シンガポールなどの戦場を見て帰国後の講演で「キレイに敗けるしかないでしょう」と発言、小説も随筆も書かず、国策のラジオ放送にも出なくなる。

儲かるはずの戦争が、ひもじい子供たちをうみ、餓死者山積みの兵隊を、空襲による一晩十万人の死という現実を生みだした。それを、目の当たりにした芙美子は、戦争は「儲け」ではなく、悲惨と涙を強要するものだと気がつく。
戦後は、自分が誤った戦争を煽ったことを反省とお詫びを込めて、戦争の悲惨、苦しさを、弱い心臓をいたわりながら、徹夜で書き続けて持病が悪化して、亡くなる…。

◆◆重く哀しい物語が、歌と踊りのミュージカル仕立てで、随所に笑いがおこり、観劇の楽しさに溢れていた。
こんな劇中歌が出てくる。観客席の前列中央で、ピアノを弾く朴勝哲の演奏も素晴らしく演者と絡んだりしてライブ感満点。
 ♫ ひとりじゃない 心の声に耳をかたむけるなら
ひとりじゃない
真昼の木蔭 
真冬のストーヴ
春なく小鳥
秋の果物
みんなきみのため
雨が降っていても 雲の向こうではお日さまがやさしく輝いてる
それもきみのため ♫


歌に人間への愛しさが溢れていて、ストーリーの哀しさにもかかわらず、人間っていいなぁと思う。本で読んだ戯曲も充分面白いけど、そこに、俳優たちが、人間の息吹をリアルに吹き込む。初めて観た「こまつ座」の舞台はサイコーだった。
大竹しのぶ は芙美子役を、状況によって、可愛い高音の声から、ドスの聞いた低音まで演じわけて歌もセリフも七色の輝きがあった、年齢不詳の天才役者って感じ。
母キク役の梅沢昌代は、ちゃっかり逞しい役が楽しい。
木場勝己
は、レコードプロデューサーから内閣情報局に変わり、戦後はアメリカの音楽民主化主任とコロコロと無批判に時代に合わせる三木孝役を好演。
神野三鈴は、行き場のない子供たちを守ろうと活動する、島崎こま子役を真面目に演じ抜き。
山崎一
は行商人から特高課刑事、戦後は新宿署勤務と時代に合わせる加賀四郎を演じた。
阿南健治
は、土沢時男を好演。彼は、行商人から遠野で婿養子になり農業をしていたが、出征し実家に戦死公報の通知があったが、実は生きていて、復員してみれば、再婚して子供もできたという妻と別れる。芙美子たちと再会し、その哀しみと芙美子の物語に助けられたことを語る場面に真情が滲んでいた。

「戦争は儲かる」という考え方は、過去のことじゃなく、この時代にも、世界のあちこちにある。
そして、戦争の始まりは美しい言葉から始まる。武力増強の理由。なんで戦争が必要なのか。「平和の為に戦争が必要なのだ」と…???
戦争ゲームのような安全地帯もなく、リセットのきかない。一つだけの、一度だけの生命が、狙い狙われ、奪い奪われる戦争。個人の人生を、無茶苦茶にする。


戦後、林芙美子が悔やんだようなことのない国であって欲しい。
人気作家が、国家統制に力を貸したり、「軍国主義の宣伝」ボーイにもガールにもなって欲しくない。
ある人気作家が、先の都知事選の応援で異なる信条の人に対して「人間のクズ」などと叫んだこと。
哀しく情けなかった。
面白い本を、いつまでも自由に読める国であって欲しい。

井上さんのこの戯曲、こまつ座の演劇。深くて大きな物語が、わかりやすくて楽しい会話と、歌や踊りの中にギュッと詰まっている傑作。


( 「太鼓たたいて笛ふいて」 井上ひさし著 全芝居その六所収 新潮社)



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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
本は快楽。本はエネルギー。…ってことで。
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