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◆26歳になった神田早季子は、合コンで出会った男と刹那的にホテルに行き身体を重ねる日常だ。彼女は、左目だけ近視で乱視の「不同視」。その視力の不安定な状態が、この世界の脆さを感じさせ、さめた人生観を持たせる。11歳の時に出会った、吉住からも大きな影響を受ける。彼は成績、スポーツ、人柄など何もかも奇跡のような完璧な男に見えたが、同じ「不同視」からくる独特の人生観を早季子に語る。彼女は、日ごろは見えにくい彼の寂しさを抱えた魂に触れ、共感し好意を寄せる。
彼曰く…

身体があるかぎり、人は一人ぼっちで、寂しいのは当たり前。嫌なことがあったら右目を閉じて、乱視の左目で見るとぼやけて見えて、ほっとする。

大きな存在だった彼だが、中学生になってコンタクトレンズで視力を矯正してから、寂しさを捨てた彼になり、11歳の頃の吉住は居なくなったという喪失感を持つ。それ以後早季子は、大人になってからも、共感できた11歳の頃の吉住のことを考えたり、心の中で話したりする。

社会人になった彼女は、友だちに誘われ人数合わせに参加した合コンで、自分と同じような「不同視」の男の話を聞き、強引にその宮内正治と知り合う。アイドルの追っかけに忙しいという彼と話すために、宮内が参加するイベントに同行することになる。外見も、性格など、あらゆる面で吉住と異なることばかりの彼という人間。そして、自分との違いばかりが気になるが…。

◆◆表題の「左目に映る星」の左目は近視で乱視の目。世界に対して早季子が抱く「脆さ」「異なるもの」「直視したくないもの」の象徴のように登場する「目」に星が映るという表題の意味。
それはヒロインが、それまで抱いていた人生観を越え出て、文字どおり新しい目を開いていく姿を描いた物語なんだと思った。


人に宿る熱を感じて、受け止めていくこと。
自分以外の人の心の痛みと、自分の哀しみが無縁ではないと知っていくこと。
自分から相手を知ろうとすること、そして相手に知ってもらうこと。
その日々の姿は、早季子の心に痛みをもたらしながら、本当の何かがほしいという、一途で切実な彼女の思いが伝わってくる。
不自由さや脆さの中に美しい光があることも、示唆していると思った。

自分のことを知る困難、人の真実に思いを巡らせて、知っていくことの難しさ。
でも、早季子がたどり着いた次の言葉のように歩けたらと思う。


「伝わらなかったならば、また言えばいい。いつだってどこでだって、何度だって言えばいいのだ。」(P168)

最後の場面、いい映画のラストシーンを観ているようだった。

( 「左目に映る星」奥田亜希子著 集英社 2014.2)




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本命くじら

Author:本命くじら
 本が好きです。自然も好きです。
人間という生き物にキョウミシンシン!
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