2008/03/23 09:34:13
◆ 表紙のヒロミチイトさんの装画がいい。
買い物袋を抱えて階段を上っていく、ヒロインらしい女性の後姿が、この作品に似合う。
弟の「ゲイ宣言」。
恋人と信じて尊敬もしていた英一の「極める」はずだったボクシングからの、簡単な撤退と水商売の女性への心変わり。
家族も仕事も捨てて、別の女性に走って暮らしている父。彼への執着と狭量な母親。
コメディー調の物語の出だしの奥に、登場人物たちの生き方が描かれる。
表題の「風」は人生の逆風の象徴。
ヒロイン・風実が戸惑いや迷いを抱え、落ち込みながら歩く。
三十代を前にして、自分に自信がもてない「三十怖い病」。
一番印象深いのは、風実の大切な人たちとの出会いのこと。
◆ ジーンズ店のバイト先の裾上げ係の三益さん(55歳)。
二分間で手際よく作業をこなし、魔法使いのようにみえる。
言葉を交わし、昼を一緒にすごし、風実の分まで用意してくれた手作り弁当をいただきながら、三益さんのさばさばした物言いが、好きになる。
新鮮な「おばさん」像が憧れの対象になって、世代を超えて気が合った。
離婚して娘を育てるために働いた手仕事の経験が、今を堂々と歩く力になっている。
オフには、タップを練習し娘夫婦の居酒屋で飲むという。
◆ 幹が尊敬して、生き方を相談する「ゲイバー・みるく」のマスターの藤本。
大きな保険会社で、20年のサラリーマン経験があり、行きつけだった「みるく」の、前のオーナーが死病にかかって鞍替えしたが、現実は厳しく経営は綱渡りだ。
「ゲイ」だから「ゲイバー」という、幹の発想ではなく、世間の広さを知るように助言をする。
彼は言う。
「ゲイとして誇り高く生きるためには、ゲイを看板にも言い訳にもしてほしくない。人間として、個人として、顔をあげて生きるんだ。そうやって、ちょっとずつ、世界を変えていってほしいんだよ」(P177)と。
腰をすえて本格的に世界を変えようと思う程、深く相手の根っこも見て、広い視野を鍛えながら堂々と生きることが大事だと、藤本は言っている。
彼が幹に出した課題は、同時に風実の心にも響く。
◆ そして「本当に一緒に生きていける人っていうのに、出会った気がする」(225)と思う二人にも。
三益さんが入院して、その娘さんの代役でスタッフになる、ライトバンの総菜屋台「クイック・ビオ」の二人だ。42歳の料理人・林さんと35歳の栄養士のアッコさんのカップルが経営者だ。
林さんは料理学校をでて、フレンチ、日本料理、エスニック料理と渡り歩いた末「毎日食べても飽きない総菜つくりに情熱を感じるようになった」という。
前妻と経営していたレストランを潰し、バツイチともなった。
その時の失敗から、夢を実現するには、自分の願いを持つだけじゃなく
「人がしてもらいたいと思っていることをやらないと」(187)と。
つまり、夢を実現する相手を知り、道筋を知って実行することが、必要だといっている。
彼がローフード研究会で、出会った相手が、35歳のアッコさんでレシピを担当している。
彼女は、病院の厨房で働いていた経験から、健康に気を配る。
商売として成り立たせながら、高カロリーや油ものはなるべく除くのをテーマにしている。
この二人は、風実を評価し、アイディアを取り入れてくれる。
彼女は、大好きな三益さんのことを思う。
アッコさんは今のランチ屋台を
「食事を作れなくなった一人暮らしの高齢者や在宅患者に食事を届ける事業を始めたい」(226)
と将来を描いている。
風実の未来と仕事が重なる。
そして思う「誰かに何かをしてあげたいという思いはエネルギーだ」(226)
この思いが、自分を救うと。
◆ この本を読みながら思った。
本当の意味で、時を塗り重ねること、大人になるってことは…
【世界に向かって自分を広げていく力、自分と周りを変えていく力、能動的な自分を大きく強くしていく力】なんだと。
そして「人生に寄り添ってくれる人たちに出会」(225)う、ことなんだと。
まだ見えない、知らない世界のオモシロさは、人としてのエネルギーを感じながら、
冷たい風と向き合って意志を鍛えながら歩いていく、その先に見えてくるものなんだ。
作品のラストの言葉が元気をくれる。
面白かった〜。
(平 安寿子著 「風に顔をあげて」角川書店 2007.12 )
◆(一晩過ぎて、も一つ感想です。根気のある方は、前日分と併せてどうぞ。)
買い物袋を抱えて階段を上っていく、ヒロインらしい女性の後姿が、この作品に似合う。
弟の「ゲイ宣言」。
恋人と信じて尊敬もしていた英一の「極める」はずだったボクシングからの、簡単な撤退と水商売の女性への心変わり。
家族も仕事も捨てて、別の女性に走って暮らしている父。彼への執着と狭量な母親。
コメディー調の物語の出だしの奥に、登場人物たちの生き方が描かれる。
表題の「風」は人生の逆風の象徴。
ヒロイン・風実が戸惑いや迷いを抱え、落ち込みながら歩く。
三十代を前にして、自分に自信がもてない「三十怖い病」。
一番印象深いのは、風実の大切な人たちとの出会いのこと。
◆ ジーンズ店のバイト先の裾上げ係の三益さん(55歳)。
二分間で手際よく作業をこなし、魔法使いのようにみえる。
言葉を交わし、昼を一緒にすごし、風実の分まで用意してくれた手作り弁当をいただきながら、三益さんのさばさばした物言いが、好きになる。
新鮮な「おばさん」像が憧れの対象になって、世代を超えて気が合った。
離婚して娘を育てるために働いた手仕事の経験が、今を堂々と歩く力になっている。
オフには、タップを練習し娘夫婦の居酒屋で飲むという。
◆ 幹が尊敬して、生き方を相談する「ゲイバー・みるく」のマスターの藤本。
大きな保険会社で、20年のサラリーマン経験があり、行きつけだった「みるく」の、前のオーナーが死病にかかって鞍替えしたが、現実は厳しく経営は綱渡りだ。
「ゲイ」だから「ゲイバー」という、幹の発想ではなく、世間の広さを知るように助言をする。
彼は言う。
「ゲイとして誇り高く生きるためには、ゲイを看板にも言い訳にもしてほしくない。人間として、個人として、顔をあげて生きるんだ。そうやって、ちょっとずつ、世界を変えていってほしいんだよ」(P177)と。
腰をすえて本格的に世界を変えようと思う程、深く相手の根っこも見て、広い視野を鍛えながら堂々と生きることが大事だと、藤本は言っている。
彼が幹に出した課題は、同時に風実の心にも響く。
◆ そして「本当に一緒に生きていける人っていうのに、出会った気がする」(225)と思う二人にも。
三益さんが入院して、その娘さんの代役でスタッフになる、ライトバンの総菜屋台「クイック・ビオ」の二人だ。42歳の料理人・林さんと35歳の栄養士のアッコさんのカップルが経営者だ。
林さんは料理学校をでて、フレンチ、日本料理、エスニック料理と渡り歩いた末「毎日食べても飽きない総菜つくりに情熱を感じるようになった」という。
前妻と経営していたレストランを潰し、バツイチともなった。
その時の失敗から、夢を実現するには、自分の願いを持つだけじゃなく
「人がしてもらいたいと思っていることをやらないと」(187)と。
つまり、夢を実現する相手を知り、道筋を知って実行することが、必要だといっている。
彼がローフード研究会で、出会った相手が、35歳のアッコさんでレシピを担当している。
彼女は、病院の厨房で働いていた経験から、健康に気を配る。
商売として成り立たせながら、高カロリーや油ものはなるべく除くのをテーマにしている。
この二人は、風実を評価し、アイディアを取り入れてくれる。
彼女は、大好きな三益さんのことを思う。
アッコさんは今のランチ屋台を
「食事を作れなくなった一人暮らしの高齢者や在宅患者に食事を届ける事業を始めたい」(226)
と将来を描いている。
風実の未来と仕事が重なる。
そして思う「誰かに何かをしてあげたいという思いはエネルギーだ」(226)
この思いが、自分を救うと。
◆ この本を読みながら思った。
本当の意味で、時を塗り重ねること、大人になるってことは…
【世界に向かって自分を広げていく力、自分と周りを変えていく力、能動的な自分を大きく強くしていく力】なんだと。
そして「人生に寄り添ってくれる人たちに出会」(225)う、ことなんだと。
まだ見えない、知らない世界のオモシロさは、人としてのエネルギーを感じながら、
冷たい風と向き合って意志を鍛えながら歩いていく、その先に見えてくるものなんだ。
作品のラストの言葉が元気をくれる。
面白かった〜。
(平 安寿子著 「風に顔をあげて」角川書店 2007.12 )
◆(一晩過ぎて、も一つ感想です。根気のある方は、前日分と併せてどうぞ。)
こんには、くじらさん。
コメントどうもでした。
TBさせていただきましたよ。
本がお好きなんですね。
私も読書中毒者です(笑
仲良くしてくださいね。
ではでは。
コメントどうもでした。
TBさせていただきましたよ。
本がお好きなんですね。
私も読書中毒者です(笑
仲良くしてくださいね。
ではでは。
風実が出会った人たちが
みんなそれぞれ宝物のようですね。
ほんとうに面白かったです。
みんなそれぞれ宝物のようですね。
ほんとうに面白かったです。
こんばんは。
TB、コメントありがとうございました。
いろんな人たちとの出会いが素晴らしかったですね。
評価される風実の姿、自分のことのように喜びを感じました。
また合う記事がありましたら、TB、コメントお気軽にどうぞ。
TB、コメントありがとうございました。
いろんな人たちとの出会いが素晴らしかったですね。
評価される風実の姿、自分のことのように喜びを感じました。
また合う記事がありましたら、TB、コメントお気軽にどうぞ。
こんにちは。
TB&コメント、ありがとうございます。
2日間にまたがる感想、すごいですね。
「誰かに何かをしてあげたいという思いはエネルギーだ」という文章、私もいいなぁと思いました。
誰かに出会うということは素敵なことだと思える本でした。
TB&コメント、ありがとうございます。
2日間にまたがる感想、すごいですね。
「誰かに何かをしてあげたいという思いはエネルギーだ」という文章、私もいいなぁと思いました。
誰かに出会うということは素敵なことだと思える本でした。
◆ 晴薫さん こんばんは。
遊びに来てくれてサンキュです。
「本」本当に面白いですね。
いい本に出会えると、時を忘れそうになります。(笑)
こちらこそ、よろしく!
◆ ふらっとさん こんばんは。
風実の出会い。
エネルギーになる出会いですね。
面白くて、初めて 二つも感想をかいてしまいました。(笑)
◆ 藍色さん こんばんは。
人にほめられたり評価されたりって
嬉しくなりますね〜。
ボクもわが事のような、いい気持ちで読みました。
◆ mintさん こんばんは。
「誰かに何かをしてあげたいという思いはエネルギーだ」いいですね。
言葉の宝庫のようでした。
出会いのことも、ラストの生きることのオモシロさのことも、心に響く言葉でした。
遊びに来てくれてサンキュです。
「本」本当に面白いですね。
いい本に出会えると、時を忘れそうになります。(笑)
こちらこそ、よろしく!
◆ ふらっとさん こんばんは。
風実の出会い。
エネルギーになる出会いですね。
面白くて、初めて 二つも感想をかいてしまいました。(笑)
◆ 藍色さん こんばんは。
人にほめられたり評価されたりって
嬉しくなりますね〜。
ボクもわが事のような、いい気持ちで読みました。
◆ mintさん こんばんは。
「誰かに何かをしてあげたいという思いはエネルギーだ」いいですね。
言葉の宝庫のようでした。
出会いのことも、ラストの生きることのオモシロさのことも、心に響く言葉でした。
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