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文楽が舞台の小説「仏果を得ず」の後に、読んだ不思議。

◆ 副題に「脳卒中・闘病・リハビリ・復帰の記録」とあり表紙をめくると
「蓑助は、足遣いでもいいから舞台に戻りたいと願った。
山川は、再びことばを取り戻したいと願った。」
とあるように、文楽の人形遣いで人間国宝の吉田蓑助と、アナウンサーの山川静夫が
それぞれ脳出血(吉田蓑助・平成10年11月発症)と脳梗塞(山川静夫・平成12年1月発症。
その後、心不全・腸閉塞と半年の間に三つの病気。)を前後して発症した。
「一章・ふたりの闘い」「二章・リハビリ交信」「三章・わが師わが友」の三章からなる。

 副題に「足遣いでもいいから」とあるのは、
文楽が語りの義太夫、三味線、人形遣いの三者で演じ、
人形遣いは首と右手を操る主遣い、左手遣い、足遣いの三人で操作する。
足と左手遣いの修行をへて「主遣い」として活動していた蓑助の思いだ。
山川は、紅白の司会者も経験し、NHKからフリーになり、アナウンサーを続け、語りを専門にしてきた。
本書を読んで思ったのは「人の縁」「病気と生きる意志のこと」
「大学時代から山川は芸の世界が好きだったんだ」ということ。

 29歳で出会った同年の二人が、65歳で病気をして、闘病の末に現場に還った。
この本は発病とリハビリ。リハビリもかねて交わされた往復書簡。
二人それぞれの、忘れがたい出会いのことが書かれている。
リハビリの結果、二人が還れたことは、一つの結果だ。
二人とも、病気への早い対応で搬送され、山川は、tPAという特効薬の
投与ができたことなどの幸運もあった結果だ。
それでも、二人のリハビリは、静かに強く持続する意思が込められ、反復する
日々を過ごした結果であったことは、間違いない。

 以前にここに載せた、学者の多田富雄さんは、脳梗塞で今も食事すること自体が、闘いの日々だそうだが、闘病の意思を表明し続ける姿が、人を励ます。
どちらの著者たちも、結果だけではなく、病気になったことで
「命とどのように向き合うか」という明快な意思をみせる。

山川と蓑助は、励ましあい病気に抗する気力を持ち続けた。その縁のステキさを思った。

◆ あとがきで山川が書いている。
「失われた機能は再生されなくても、目標をもって努力すれば、
残る細胞が活性化されて、補ってくれたり、新しい能力を引き出してくれることもあります。
ですから、夢や希望や目標を常に失わぬことが大事だと痛感しています。」
病気という、健康な状態と反対の出来事が、明快に命を意識させる。
病気だけでなく、哀しいことや辛いことに出会ったときこそ、楽しいことや嬉しいことを
意識できるような「落語頭」(先回「こっちへお入り」の感想参照)を持てたらと思う。
人の縁の不思議も、感じながら。

 
(吉田蓑助・山川静夫著「花舞台へ帰ってきた。」淡交社2007,2)





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本命くじら

Author:本命くじら
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